炊事

ゴホッゴホッ

朝起きると、風邪を引いていた。気怠く、力が思うように入らない。

かと言って横になろうとすると、呼吸が苦しくなる。

一人暮らしのマンションの一室。

のどの痛みと渇きを覚え冷蔵庫に覚束ない足取りで向かう。

偶々目についたウィーダーを喉に無理やり押し込み、倒れるように再び寝床にもぐりこむ。

(水…持ってくればよかったな)

(今日の予定断らなきゃ…)

兎にも角にも眠い頭を気合で起こし、スマートフォンを手に取る。

ブルーライトの液晶が目に痛い。

「もしもし、姉ちゃん?母さん居る?」

「うん、そのつもりだったんだけど、風邪ひいちゃった。」

「うん、うん、大丈夫だよ、寝とけば治るって。」

「様子見て、元気になったら帰るよ。うん、有難う。じゃあちょっと寝るから。」

電話を切り、適当に投げる。

もう少し寝よう…。


額に何か冷たい感触がして目を覚ました。

「アンタ、結構熱あるね。計ったの?」

「姉ちゃん、来ないで良かったんに。移るよ。」

「なんか食べた?」

「ウィーダー。」

「お粥でいい?」

「有難う。寝ます。」


ネギを刻む音。ふつふつと鍋が沸く音を子守唄にもう一度眠ることにした。

幼い頃から両親は共働きで10歳上の姉は、良く自分の面倒を見てくれた。

昔同じように卵粥を作ってくれたなあ、と微睡む意識にふと思い出しながら、もう一度眠った。

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