祖母の見ていた景色

ウッドデッキの上のロッキングチェアに腰を掛け、ぼうっと目の前の景色を眺めてみる。森の入り口まで繋がるだだっ広い草原は、今は枯草で一面黄金色だ。

本棚から持ち出してきた、古びた背表紙の重たい本を開く。湿気たような黴臭い香りが物珍しく、手触りを楽しむ。


夏の終わりに祖母が亡くなった。

僕は末の孫ということもあり、良く可愛がってもらっていた。

本が好きで、若い頃から神保町に足繁く通っていたらしい。

いつも重たそうな本を足元に重ね、ゆったりと本を読んでいた。そういう人だった。


冷え込んだ風に、目を上げると空が薄紫色になっていた。

木の影が大きな巨人のように並び立ち、白い月が顔を出していた。

本を置き、そのまま夕闇が迫るのを待つことにした。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る