ツリーの前で

「寒い寒い」

「早く入って。暖まりなさい。」

「初冠雪だってさ。もしかしたら積もるかもしれないね。」

「今の時期にねぇ。」

雪で湿ったコートを脱ぎ、薪ストーブの前に干す。

子供の頃から使っていた低めの椅子を動かし、指先を温める。

「スープあるけど飲むかい?」

「食べる!有難う!」

「おなかが減ってるようならパンも温めるけど。」

「それは大丈夫。」

ソファーに移動し、側に置かれているクリスマスツリーが目に入る。

「今年もこの季節かぁ。」

「いい人いないのかい?」

「仕事が忙しくて…」

「またこの子は。」

母はそう言うと、温まったスープとバケットの乗った皿を側のテーブルに置く。

「有難う。頂きます。」

パンを千切り、スープに付けて一気に頬張る。

そんな様子を目を細めて眺めている母は、少しだけ白髪が増えたように思う。


ツリーの飾り。昔はガラスだったのにな。

「ご馳走様でした。美味しかったです。」

「足りたかい?」

「大丈夫、洗うから気にしないで、座っていて。」

下げようと立ち上がる母をそう言って留める。


昔より、少しツリーが低くなったように思う。

食器を棚に戻し、暖を取りに戻ると、母は眠っていた。

毛布を掛ける。

「おやすみなさい。」

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