境内の紅葉

「あと…少し。」

最後の階段を上り、額の汗を拭う。

晩秋の、冬の気配を色濃く感じさせる風が、熱い肺に刺さるようで少し苦しい。

しかし紫色の朝焼けの境内には紅が満ち満ちていた。

息を整え、歩き出し、鳥居を潜る。

見ごろを少し過ぎた紅葉の葉が、石畳の上に描いている抽象画。

その上に自分だけの痕跡を残す。

そんな感触を足の裏で感じながら、賽銭箱の前に行き、小銭入れを開く。

「何かをしに来たわけじゃない。」

独り言ち、1円を取り出し、やはりやめにして、5円を出し、箱に投げ入れる。

気配を感じて振り返ると、紅葉がその葉を優しく散らしていた。

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