ヒーローになるためには4
前年度の全知全能への受験者は1946人。そして今年は前年度を上回る2021人である。
面接の会場は6つに分かれており、僕が向かう先の会場の番号はアルファベットのB。
会場Bの扉に辿り着いた僕は、ふと扉に目が行く。
扉には、悪鬼を踏みつける神の様子を描かれた彫刻が施されていた。
僕は疑問を感じながらも木製扉を開く。
扉の先では広い空間に300名以上の多種多様な格好の受験者が面接官を待っており、中にはアニメのコスプレのような格好をした受験者もいた。
会場の奥には壇上があり、面接官はそこで話すのだろう。
会場の中に入ると、他の受験生の視線が僕に集中した。やっぱり目立ってる。恥ずかしくてこの場からすぐにでも逃げ出したい気分だ。
面接官が来るまで、時間が20数分ある。心臓がどきどきして落ち着かない。
時間もあるし、面接を有利にするために頭の中で面接の受け答えを練習することにした。
はい。私の志望動機は、幼い頃からヒーローに憧れて…駄目だ。こんな受け答えだと、在り来たりすぎる。
あれこれ考えているうちに20分が経過していた。
そして関係者専用の扉が開く、いよいよ面接官の登場か!
扉から現れたのは、ヒーロー界1、2を争う美少女と名高いヒーローであった。
「
声に覇気がなく、棒読み、やる気がない、飴棒を舐めている。
元気系少女えるは、14歳でありながら飛び級で国に認められた天才ヒーローである。
周りの受験生から歓声が上がる。ヒーローの実力も確かだが、衣装やルックスから男性人気が高い。
ホントにチアガールの衣装なんだ…
「私がこの会場の面接官よ。…ハァー…めんどくさっ」
えるは、唇の前に人差し指を立てて静かにするように合図する。
あれだけ騒がしかった会場は、えるの行動一つで、シーンと静寂が支配した。
「今から面接についての説明と面接をクリアした受験生の次の試験を説明するけど、質問は一切受け付けない」
えるは軽やかな足取りで、会場の奥の壇上に上がる。
「わかってると思うけど、スカートの中を覗こうとした奴は殺すからね」
ならどうしてそんな短いスカートを穿いているのか?意識せずとも、目線がスカートに向いてしまう。
そして壇上に上がったえるは、咳払いをして試験の内容の説明を始めた。
「面接試験は、これから10のアナウンスが流れる。YESなら両手を万歳、NOなら座って。喋った奴は即退場、わかった?」
「はい」
返事を返したのは数十人程度だった。
「わかった?」
面接官えるは、言葉と同時に殺気を放ち受験生はゾクリとして足が震えた。
「はい」
受験生は全員が、先ほどとは比べ物にならないくらいの大きな返事を返した。
「よろしい」
面接官えるは概ね満足した様子で、話を再開した。
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