変化
水坂が恋人になったことは、縁に対して想像以上の影響を与えた。水坂は縁が素の自分を出した上で好きだと言ってくれていた。そのおかげで縁は「自分は今の自分でいいんだ」と思えるようになっていた。
縁は水坂との交際が始まったあとも、夜な夜な怪物に変身して仕事をこなしていた。仕事は市内だけではなく隣の市に行くこともあり、3~4日に1回は冬霞と共に施設を破壊したり、法の目を逃れている悪人を始末していた。ターゲットは信者の財産をすべて巻き上げていた宗教団体の教祖や、飲酒運転で人を轢き殺しておきながら、金にものを言わせて罪をもみ消した地元の有力者など、様々だった。
そのような毎日を送るうちに、縁の中で徐々に攻撃的な人格が芽生えつつあった。以前の縁であればそれを悪いことだと思い、抑えることができていただろう。しかし今の縁は、そのままの自分を出すことはむしろ良いことだと考えるようになっていた。そしてその攻撃的なもう1つの人格は、仕事中のみならず、普段でも顔を出すようになり始めていた。
その日縁は席の近くの男子生徒数人と雑談をしていた。
話題は些細な一言をきっかけに変わり続け、
「……そういえば、高木くんっていつから水坂さんと付き合ってるの?」
縁の向かいに立っていた男子生徒の発言をきっかけに、今度は縁と水坂の話に変わった。
「ええっと、いつごろだろう? ……ま、まあ、大体3週間くらいかな?」
水坂との話をされるのは照れくさかったが、同時に話題が自分の事になるのは気持ちよかった。縁は自分と水坂が付き合い始めた記念すべき日をバッチリ覚えていたが、わざらしい口調でわざと曖昧に答えた。
「それにしても、どうやって水坂さんと付き合うことができたんだ? 水坂さんって、何人からも告白されてたのに全部断ってたって話だぜ」
元矢吹の子分の1人、東がよほど気になっているのか縁に身を乗り出しながら言った。
「それはね……」
縁は若干脚色を加えて絡まれていた水坂を助けた話をした。当然水坂の兄が昔自分をいじめていたことは伏せた。
「すげえ……」
話を聞いていた全員がため息をつき、崇拝に近い眼差しで縁を見ていた。
「高木クンかっけえ……きっとそれで水坂さん一目惚れしちゃったんだよ!」
そう言った東の声は熱が入っていた。
「ま、やっぱ強い男ってモテるんだよね」
縁は満足げに顎をわずかにそらしながら言った。気持ちよくてたまらならなかった。
「……でもさ、そもそも高木くんって塔さんと付き合ってたんじゃないの?」
しかしこの一言をきっかけに風向きが変わり始めた。
「あ、そうだよな。いつの間に別れたんだ? まさか2人公認で二股かけてるとか?」
「うっわ、高木くん鬼畜だわ」
「いやいや、俺と冬霞はいとこだから、元々付き合ってないって」
気持ちよくなっていたところに水を差された縁は、内心「余計なことを」と思いながらも作り笑いを浮かべ否定した。
「ってことはあれか、もしかして……塔さんって今フリーなのか!? どっ、どうなんだ高木クン!」
東が鼻息を荒くしながら縁に詰め寄った。
「え、ああ、た、多分……」
縁は東のあまりの勢いにたじろぎながら答えた。
毎日のように冬霞と顔を合わせているが、冬霞に男の気配を感じたことはなかった。
それを聞いて東は「うおお!」と拳を握りしめながら天井に向かって叫んだ。しかしもう1人の元矢吹の子分、赤山が「東、お前じゃ無理だよ」と悲しそうな表情で東の肩を叩き、東はがっくりと肩を落とした。
「まあ、それはそれとして、塔さんって美人なだけじゃなくて、スタイルもホントいいよな……」
縁の隣にいた男子生徒が下品な笑みを浮かべながら言った。
「分かる! 体育の時間に体操服姿の塔さん見かけたとき、『反則だ!』って思ったよ」
「おい、ちょっとその話詳しく聞かせろ!」
それに別の男子生徒が反応し、さらに東が食いつき、気がつけば話題は冬霞の事に変わっていた。下品な方向で。
高校生という性欲盛んなお年頃、そして縁も男なので、彼らが盛り上がる気持ちも分かっていた。しかし冬霞がその手の話題に取り上げられることに、縁は不快感を抱いていた。
「なあ、その話やめないか……?」
縁は周りの男子生徒を見渡しながら言ったものの、彼らはまるでやめる気配はなかった。
「ああいうクールな感じの女の子に限って、ベッドの上だと乱れまくったりするんだよな……ぐへへ」
「うわー、俺なんか興奮してきた。俺塔さん見るたびに変なこと考えちゃいそう」
「っ……やめろつってんだろ!」
縁は力任せに机を殴りつけた。教室内にいた全員が一瞬凍りつくほどの大きな音が鳴り響いた。
教室内の全員が驚いた表情で縁の方を振り向いていた。少し前まで教室内は生徒たちの話し声で充満していたが、今は全員静まり返っていた。
「ごめん」
下品な方向に舵を切った男子生徒が縁に向かって小さく言うと、縁たちの輪から離れていった。そしてそれが呼び水になったかのように、他の男子生徒たちも縁から離れていった。
「高木くん」
それから数日後。縁が休憩時間に教室を出ようとしたところ、冬霞に呼び止められた。
「何?」
「ちょっと話したいことがあるんだけど」
「いいよ」
縁に特に断る理由はなかった。
「じゃあ、ついてきて」
冬霞は縁に背を向けてどこかへ向けて歩き始め、縁はそれに続いた。
冬霞が向かったのは、普段人通りがほとんどない廊下だった。縁の通う高校にはいくつか空き教室があり、その廊下は空き教室と空き教室の間にあるため、教師も生徒もあまり通ることがなかった。
冬霞は廊下の途中で立ち止まると、縁の方を振り向いた。そしてしばらく迷っているような表情を見せていたが、話し始めた。
「最近みんな、高木くんを怖いって言ってる」
「そう」
なんとなくそのような話をされると思っていた縁は、特に驚くこともなく短く答えた。
「でもさ、それって悪いことなのかな? 確かに前より思ったことがすぐ口に出てしまうようになったけど、変に思っていることを押し殺しているより、今のほうがよっぽどいいと思うんだけど?」
「……本当にそう思ってる?」
縁が思わず一瞬体が固まってしまうほど冷たい目で、冬霞は縁を睨みつけた。
「それって、結局自分をいじめてた人たちと同じようになってるだけだって分かってる?」
「違う!」
縁は反射的に大声で否定したものの、100%違っているとは言い切れなかった。奴らは自分が思った事をストレートに言い、やりたいことをやる。そして今の縁もそうなりつつあった。
冬霞はしばらく縁を何の感情も感じられない目で縁を見続けていたが、
「まあ、いいけど。それより、今晩は仕事があるからよろしくね」
縁に背を向け、去っていった。
残された縁は、呆然とただ立ち尽くすことしかできなかった。
その日の夜。
三島の運転する車から縁と冬霞が降り、現場に向かおうとしたところ、その先に人影があることに気がついた。
「高木くん、誰かがいる」
冬霞が縁にしか聞こえないくらいの小さい声で言った。時刻は深夜1時。そして縁達がいるのは縁達の住む町からしばらく車を走らせたところにある、山中にある採石場跡だ。許可を取らずに汚染された廃棄物を投棄している輩が今回のターゲットだ。
何者かは縁達がいるのが分かっているのか、縁達の方へ向かって歩いてきた。
冬霞は何者かへ向かって手に持っていたライトを向けた。
何者かは、縁が知っていた人物だった。
「おっ、高木クンじゃん。久しぶりだな」
矢吹は町中で偶然出会ったかのようなノリで縁に向かって言った。以前縁に絡んできた時と比べて、どことなくとらえどころのない雰囲気を漂わせていた。
「矢吹……くん? 何でここに? というか今まで何していたんだよ」
縁は冬霞から、今回の件に矢吹が関わっているという話は当然聞いていなかった。そして冬霞も知らなかったようで、表情から矢吹が現れたことに驚いているのが見て取れた。
「そりゃこっちのセリフだよ高木クン……。まあ、俺はここに来たやつを殺せって言われてここに来たんだが、どうやらそれは高木クンと……あと塔さんのことだったようだな」
矢吹が芝居がかったような言い方で、大げさに体を動かした。明らかに、以前の矢吹とは人が違う。
矢吹は両拳を握りしめて前に突き出すと、肘を曲げ、顔の前で両腕をクロスさせた。次の瞬間、矢吹の全身から衝撃波と共に白い煙が吹き出した。
煙が散り、矢吹の姿が再び現れた瞬間、縁は「嘘だろ……」と思わず声を漏らしていた。
矢吹の姿は、以前縁が水の里で遭遇した、あの化け物の姿に変わっていた。
ただし一点だけ違うところがあった。化け物の顔は矢吹のままだった。矢吹が変身した化け物はどこかから白いマスクを取り出すと、岩の塊のような手で器用にマスクを掴み、顔に取り付けた。そのマスクは以前と同じ、デスマスクのような不気味な白いマスクだった。
「矢吹くんが、あのときの化け物だったなんて……」
縁がショックを受ける間もなく、矢吹は地面を蹴り、縁に向かって突っ込んできた。縁はすんでのところで攻撃をかわし、地面を転がった。
縁は立ち上がると同時に目の前で両腕をクロスさせ、変身した。
「へえ、高木クンがあのときの化け物だったのか……」
矢吹は動きを止め、わずかに驚きが混じった声で言った。
「面白くなってきたぜ」
矢吹は地面を蹴り、再び縁へ向かって突っ込んできた。そして縁上段から、縁に向かって岩のような右手を振り下ろした。
縁はその攻撃を右に移動してかわし、以前と同じように、背中に向かって回し蹴りを放とうとした。
「その手は二度と食わないぜ」
矢吹はその見た目からは想像のつかないほどの体の柔らかさで背中をひねり、左腕で縁に向かって裏拳を放った。
(嘘だろ!)
まさかそこから攻撃を食らうと思っていなかった縁は、もろに矢吹の裏拳を食らった。縁はその一撃で意識を失いそうだった。もしかしたら、一瞬気絶をしていたかもしれない。
縁は数メートル吹き飛ばされ、崖に体を強く打ち付けた。
「ぐぁ……」
「高木クンさあ、俺が二度も同じ手を食うと思ったら大違いだぜ?」
矢吹は吹き飛ばされた縁の元へゆっくりと歩みを進めながら言った。そのまま一気に叩き潰すこともできたのだろうが、あえてそれをしなかった。矢吹は縁との戦いを楽しんでいるようだった。
「おいおいおい、まさかもう終わりじゃないよな? 俺のプライドを粉々に粉砕してくれた高木クンがそんなザマじゃつまらないぜ?」
「くっ……」
縁はフラつきながら立ち上がった。体がバラバラになってしまったかのように、全身が痛くてたまらなかった。視界に入るものを脳が正常に処理してくれていないのか、未知の言語が目の前に並んでいるように見えた。
それでもなんとか構えを取る。
「おー、さすが高木クン。そうこなくっちゃな」
矢吹は満足げに首を何度か上下に動かすと、一気に縁との距離を詰め、右腕を振り下ろした。
縁は今度は左側に移動し、攻撃をかわした。
「高木クンさぁ、いくら何でもワンパターンすぎない?」
矢吹は呆れたような口調で言うと、今度は右手で裏拳を放った。それと同時に裏拳を放った右腕が伸び、縁の右肩に腕が直撃した。
虚を衝かれた縁は再び吹き飛ばされ、地面に転がった。
「う……ぐ……」
「高木くん、戦って!」
普段声を荒げることのない冬霞の大声が聞こえた。しかし立ち上がろうにも、縁の体は全く動かなかった。
「ほら、高木クンさあ、塔さんがこう言ってるんだから、立ちなよ? つまんないぜ」
縁がうずくまっている間にも矢吹が近づいてくる。一歩ごとに巨大な象が歩いているかのような地響きがする。
「うっ、くっ……うおおおおお!」
縁雄叫びと共に立ち上がり、構えを取った。足が笑っている。それでも全身の力を振り絞り、加速をつけて矢吹に向かって攻めかかる。
矢吹も地面を蹴飛ばし、縁に向かって突っ込んでいった。
縁と矢吹が激突する瞬間、再び矢吹は右腕を縁に受かって振り下ろした。縁はギリギリのところで矢吹の攻撃をかわし、矢吹の胸に向かってカウンターパンチを放った。
矢吹の巨体は数メートル先まで吹き飛び、その巨体が着地した瞬間地鳴りが響いた。
「いってぇ……。高木クン、やるじゃん」
矢吹は地面に横たわった姿勢で両腕を振り上げると、両腕を地面に叩きつけた。縁がよろめくほどの地震が起こり、その勢いで矢吹は高く飛び上がった。そして両足で着地し、「やっと面白くなってきたぜ」と言いながら何度か胸の前で両拳を打ち付けた。
「……矢吹くん、どこでこの力を?」
この異常な状態で、縁は気づくのが遅れてしまっていた。どこで矢吹はこの力を手に入れたのだろう?
「それは、塔さんがよく知ってるんじゃないかなぁ? なあ、塔?」
矢吹は首だけを動かし、冬霞の方を見た。
「……おそらく矢吹くんは、私達の『組織』と対立する勢力に改造されている」
冬霞は矢吹に睨まれ一瞬怯んだ様子を見せたものの、すぐに持ち直したようだった。
「さすが塔さん。正解だ。それじゃあ、続きと行きますか」
矢吹は構えを取ると、縁に向かって飛びかかってきた。今度は右腕で縁に向かってストレートを放った。
縁はやや大きめのバックステップで攻撃をかわすと、右腕に向かって回し蹴りを放ち、岩にヒビが入るような鈍い音が鳴った。しかし縁の反撃はそこまでだった。
矢吹は空いている左腕で縁にフックを放った。
「くっ……」
縁は姿勢を落として矢吹の左フックをかわし、ボディにストレートを放った。
矢吹は大きく吹き飛んだものの、再び何事も無かったかのように立ち上がった。
「やるじゃん、高木クン。……でもさあ?」
矢吹はこの場に似つかわしくない軽いノリで言うと、
「手ェ抜いてんじゃねえぞォ!」
空気が震えるような大声で怒鳴った。
その大声に、縁は一瞬怯んだものの構え直し、
「矢吹くんと戦う理由が無い!」と矢吹に向かって声をぶつけた。
「は?」
それを聞いた矢吹は一段と低い声で言うと、
「俺にはあるんだよ。……お前に負けたせいで、俺が今までに積み上げてきたものが全てムダになってしまった。ここぞというときにお前に負けたときのことがフラッシュバックして、またお前に負けたときのようになっちまうんじゃないかって思うと、前のように自分に自信を持てなくなっちまった。だから……」
顔を縁の方に向けた。マスクをしていて表情は分からなかったが、強い憎悪を縁は感じた。
「お前を殺してもう一度自信を取り戻すんだよ!」
殴りかかってきた矢吹の巨体が縁の前に迫る。
「くっ」
縁は構えを取ると、矢吹に向かって飛び込んでいった。もはや腹をくくって矢吹を倒しにかかるしかなかった。
矢吹は地面スレスレのところから左アッパーを放った。
縁は再びバックステップで左アッパーをかわした。そしてその場で飛び上がり、矢吹の顔面に向かってローリングソバットを放った。しかし縁の蹴りが矢吹の顔面に当る直前、矢吹の腕がそれを阻止した。
矢吹の腕から鈍い音が鳴り、わずかに矢吹の体が後ろに仰け反った。
縁は後ろに吹き飛び、その場に着地し構えを取った。
「ムダだよムダ! そんな蹴りじゃ俺を倒せないぜ?」
矢吹は何事も無いことをアピールするかのように、ヒビの入った腕で胸を叩いた。
「……」
縁は先程の矢吹の行動に違和感を抱いていた。今まで矢吹はノーガードで攻撃を受けていたのに、顔面だけは腕を使って防御行動を取った。縁は頭の中で矢吹が変身したときの記憶を辿った。
(そういえば、顔は俺とは違って、人間のままだったな。……あ!)
縁の中で一つの仮定が生まれた。
(きっと頭が弱点なんだ)
しかしどのようにして頭を狙えばいいのか。縁には今の所思いつかなかった。顔面を狙おうにも、あの岩のような腕でガードされてしまう。
縁がそんなことを考えているうちに、再び矢吹が縁に向かって突っ込んできていた。馬鹿の一つ覚えのように同じ行動を繰り返しているが、あの腕で殴られればただでは済まないし、生半可な攻撃は頑丈な体が防ぐ上に、弱点と思われる顔を狙おうと思っても、その腕で受け止められてしまう。シンプルだが、スキのない行動だった。
縁の目の前に突っ込んできた矢吹が、右腕を縁に向かって振り下ろした。縁は何度か矢吹には行動を読まれ、強烈な一撃を食らっていた。反射的にバックステップでかわそうとするも、すでに何度か矢吹の前でバックステップを見せている。一瞬迷った末、縁は右に飛び退いた。しかし、その行動は矢吹に読まれていたようで、縁の右側から矢吹の左フックが放たれようとしていた。
(やられる!)
ガードが間に合いそうになく、縁は死を覚悟した。
次の瞬間、矢吹の体が一瞬震えたかと思うと、矢吹のフックが止まった。矢吹の顔面にライトが照らされていた。対光反射で矢吹は動きを止めてしまっていた。
縁はその瞬間を見逃さなかった。縁は矢吹の顔面に向かって手刀を放った。手刀はマスクを砕き、その下にある矢吹の顔面を貫いた。ぐしゃりと頭が潰れる音と共に、血しぶきが飛び散った。
矢吹の体は動きを止め、地面に倒れ込んだ。潰れた頭からは勢いよく血が流れ続けていた。
縁は動かなくなった矢吹を肩で息をしながら見下ろしていた。一時的な興奮状態で麻痺していたのか、体中のあちこちに耐え難い痛みが走り、そして息苦しくてたまらなかった。縁は変身を解き、その場に座り込んだ。
「高木くん!」
冬霞が縁のもとに駆けより、かがみ込んだ。
「高木くん、大丈夫?」
あまり表情に感情を出すことのない冬霞だったが、その表情は明らかに縁の身を案じているのが分かった。
「たぶん、大丈夫だと思うけど……」
無意識のうちに虚勢を張ろうとした縁だったが、
「そういえばさっきのライト、冬霞だよね? ありがとう、助かったよ」
ライトの事を思い出し、吐息混じりの声で感謝の気持ちを伝えた。
あれがなければ、どうなっていたか分からない。昼間に冬霞との間に不穏な空気が流れたものの、絶体絶命の場面でこれ以上ないサポートをしてくれたことに感謝せずにはいられなかった。
「日頃高木くんには身を張ってもらってるから、別にこれくらい……。だけど、役に立ててよかった」
冬霞は穏やかな笑みを浮かべた。その笑顔に、縁は胸の奥に暖かなものを感じた。
「この状態だと、朝学校に行くのは厳しいかな。お母さんには私が連絡しておくから、今日は学校は休もう?」
普段は3~4時間睡眠でも学校に行かせようとする冬霞にしては、珍しい提案だった。縁はその提案に素直に従った。このような状態では、数時間寝ただけで学校に行けるとは到底思えなかった。
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