第9話 図書館(までの道程)
あれから、君島と会っていない。
踊り場に行っても君島の姿はどこにもなく、学校を彷徨っても彼女の影すら見つからない。気配も感じられなかった。
どうしたのだろうか、という疑問が最初の頃は当然浮かんではいたが、けれど一緒に授業をサボるのはそもそも約束事とかではなかったし、君島が絶対に居なければいけないと、そんな関係性でもなかった。
ただ偶然、彼女とは踊り場で会って、遊んでいるだけ。
独りだからと言って何か問題がある訳ではない。
でも――。
どこか胸のあたりが蚊に刺された程度だけれど、少し違和感を感じる。
今日は学校にすら行く気力が無かった。
こういう日は珍しくない。学校には行って授業だけサボる方が異常なのだ。そもそも授業をサボるなら学校に行く意味はないのだから。
けれどここ最近は学校に行く日が続いていたのでどうにも変な感じだ。
俺は私服に着替えて午前十時くらいに家を出た。この時間は学校では一限の授業中。皆が授業をしている最中に一人、伸び伸びと学校の外で堂々と歩く開放感は得難い快感とともに心地よさすら覚える。
午前中ということもあり人通りはまだまだまばらで、通り過ぎても大半がおじいちゃん、おばあちゃんばかり。そういう時間帯なのだ。
スーツ姿の人も見かけはするが、本当に数人である。通勤ラッシュはとうに過ぎているので遅刻か、もしくは出勤時間が自由な会社に勤めているのだろうか、と毎度不思議ではあるが実際はどうなのだろう。ああ、営業という可能性もあるのか。こんな事をよく学校をサボって街中を歩いていると疑問に思う。
と、そんなことを考えていると――。
さて、目的地に到着した。
そこにはガラス張りの大きな建造物が建っている。
周りには木々が等間隔に植えられており、桜の花は咲いていないが、薄い桜色の蕾が枝の先についている。
――図書館。
学校をサボったら決まってこの図書館で一日を潰す。
本を読めば時間は過ぎるし、読んだ後は充足感を味わえる。客観的に見れば無意味なその時間も何だか生産的な時間のように思えるから読書家は困ったものだ。自分も含めて。
ということで、俺は図書館に入った。
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