第5話 守護霊なるなる詐欺2
「えー、それでは抜き打ちテストを始める!!」
教室にどよめきが走る。5時間目の英語で、抜き打ちテストが宣告されたからだ。僕もあんまり勉強してないので、正直ヤバイ。
そんな緊張をよそに、テスト用紙は否応なく配られ、あっという間に試験が始まった。
テストの内容は、英語の長文を読んで、単語の意味や文章の意味を記号で答える問題だった。
教科書に載っている文章ならわかるが、この教師は教科書にのってない問題をテストに出すことが多い。そのせいで、この教師は学校中の生徒に恐れられている。
僕は駄目元で問題を見たが、さっぱりわからずに困ってしまった。そんな僕の心境が漏れたのか、後ろから囁きが聞こえた。
「こ・た・え、教えてあげようかしら」
そう言うと、彼女は僕の机の横に現れ、顔を机に乗せる格好でしゃがんだ。そのままニヤニヤした顔で僕を覗き込んでくる。思わずペンで刺したくなるようなムカつく顔だ。人の不幸がそんなに嬉しいのか?
「大人しくしててくれ」
「教えたら、私を雇ってちょうだいね」
いや僕の話も聞けよ、とツッコもうとしてやめた。こいつと話をするなら、話に乗っからないと駄目なんだろう。
「雇わないよ。まだお試し期間だし」
「私はドモホルンリンクルじゃないわ」
「いや、お試しってのは君が言い出したんでしょ」
「そうよ。けど、雇ってくれるのがお試しの条件だったはずだわ」
どんな条件だよそれ。非常時の屁理屈が、僕の神経を逆撫でる。いつもやられっぱなしじゃ腹立たしいな。何かやり返したい。
……あ、そうだ。いいことを閃いたぞ。
「やっぱりさ、答え教えて貰おうから」
「よし、ようやくわかってきたわね。で、そのかわりに何してくれるの?」
「助けてくれたら、そばにいても文句言わないから」
「えっ、ホント?!」
よし、僕の提案に乗ってきた。これはいける。
どうせ文句言おうが言わまいが結局付いてくるんだから、この約束には全く意味はないのだけど、彼女は気づいていない。
「だからさ、お願いだよ」
そして最後のひと押し。心理学的にはこれでお願いを聞いてもらいやすくなる。
「それならOKよ! 任せて! 100点どころか120点取らせてあげるわ! 幽霊だけに、幽霊船に乗ったつもりでいてね」
「いや、このテスト10点満点だからさ」
結果、幽霊船に乗る作戦は成功した。彼女は答えを全て教えてくれた。とは言っても、他の人の答えをカンニングしてくれただけだが。
とはいえ、これはすごい。彼女さえいれば、勉強の面で苦労することはなくなるかもしれない。これが厄災を取り除くってことなのかな?
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