第8話王都
王都に着くまでにいくつかの村を見かけた。そう、村だけを見つけたのだ。
他の大都市とはいかなくても、それなりに栄えた国などはないものかと思ったのだが、そんなものは一切ない。
この世界の文明は儂がいた世界よりもだいぶ遅れているようだ。魔法なんて便利なものがあるのに……いや、魔法なんて便利なものがあるから、科学技術が発展していないのか?
まあよいか。防衛施設が整っていない方が好都合。簡単に前線をあげることができる。ここまで発展していないとなると、王都とやらも大したことないのではないか?
敵の本拠地は案外簡単に陥落できるかもしれん。そんな淡い期待をするが、そんなことは数十キロ先にあるものをみると消し飛んだ。
「な……なんだこれは?」
思わず絶句しそうになるほど巨大であり、攻め落とすなんて不可能と思わされるような大きな壁が
儂はその雲まで届きそうなほど巨大な壁を間近で見上げ、直に触る。触っただけでわかるこの硬さ。
儂が全力で突いたとしても壊せるかどうかの強度。ダイヤモンドなんかとは比較にならない硬さを誇る鉱石が使われておるのか?
全く異世界には驚かされることばかりだ。まあ最終目標はこの人間側の最終拠点を攻め落とすことか……。
とりあえず中に入ろう。こんなものすごい壁が立っているのだから、中はもっと凄いに違いない。儂は門のような場所から堂々と中に入ろうとするが、門の前に立っている門番に止められる。
「貴様、何者だ? ここは貴族様しか入れない王都であるぞ? 貴様のような魔力なしの落ちこぼれが入れるような場所じゃない」
ふむ……ムカつく。だがここで手を出すのは避けるべきだ。さっきの村人とは訳が違う。儂はグッと感情を押し殺す。
「ではどうすれば中に入れるのだ?」
「どうすればも何も、貴様はこの国に入ることはできない。ここは国王様がお認めになった実力者と権力者以外立ち入ることは禁じられている。
そしてその実力者の選別は私が行っている。貴様は不合格だ。魔力の少ない奴は多くいるが、魔力がからっきしの奴など初めてみる。
わかったらさっさと帰れ」
「なるほどな……」
ここぜ素直に門前払いに従うわけにはいかない。魔女のこともそうだが、他にも後々のことを考えて転生者なるものをこの目で見ておきたい。それにこんな長距離を何の成果もなしに戻るのは心が折れる。
儂は大きなため息を吐くと。
「なぁ、お主は目に見えるものが全てだと思っておるのか? 魔力量と実力は比例すると? 何と悲しい人生を歩んできたのだろうか……。そんな視野の狭いお主に
筋肉質の門番を煽り口調で挑発する。さて……乗ってくるか。儂に挑発された門番は、持っていた剣を鞘から抜くと。
「ふ……いいだろう。貴様のその安い挑発に乗ってやる。死なない程度に殺してやるから覚悟しろ」
「ふむ……。話が早くて助かる。安心しろ、手加減してやる」
グッと拳を前に突き出す。儂の手加減発言でさらにムカついたのか、門番は剣を振りかぶり儂のほうへと走ってきた。
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