第13話 チヴィーチの場合

 必要とされる存在。それがクエイクのなりたかったもの。

 逆を言えば、必要が無くなったら捨てられてしまう。

 必要となくなるような存在になりたくない。

 求められることには自分の全てをかけて成し遂げようと、クエイクは誓った。


「のう、旦那様よ。儂の体をウヌの舌でマッサージしてくれぬか?」

「え、ぜ、全身を?」

「うむ、全身なのだ?」


 専用の天幕。チヴィーチ用のベッドの上で、チヴィーチは両足をガバっと開いてクエイクを誘う。

 年齢とは乖離しすぎた禁忌の体。

 股間と胸元だけを覆っているビキニ―アーマーは、金具の固定部分が外れ、今すぐにでも全て取り外しが容易にできる。

 そんな姿で「全身マッサージ」を要求されれば、クエイクも自身のこれまでの経験や知識でどんなことになるかは容易に想像できた。



「指じゃなくて? 舌よりも指の方がマッサージになると思うけど」

「ダメなのだ。その柔らかい舌でプルプル震えながらあっちこっち儂の体を舐めてくれるのに意味があるのだ」

「で、では……」


―――ブルルルルルルルルル♡♡♡


「お、おぉお♡ んごぉおおおお♡♡♡」



 魔王軍に新たに加入することになったクエイク。

 立場としては、三姉妹姫の側近のような立場だ。

 これが人類の帝国側に居たときであれば、その立場を妬んだ者たちにイジメを受けていた。

 しかし、この魔王軍では違った。

 それは、優しいとか優しくないとかそういうことではなく、単純な力の証明。


 魔王軍の天敵である巨神兵を五体も仕留めた。


 それほどの力を持ったものを引き入れられたなら、たとえそれがポッとでの新入りでも異議を唱える者はいなかった。



「わ、あああ、き、キスなのだ……キスが欲しいのだ、ちゅっ♡ ッッ!!???」


―――ブルッ、ブチュルルルルルルルルルルル♡♡♡

 

 

 一方で自己評価が低かったクエイクも「いつ捨てられるか分からない」という不安は過去の経験から常に持っていた。

 今は重宝してもらえているかもしれない。

 でも、自分が使えないと判断されたらどうなるか分からない。

 だからこそ、求められていることは懸命にやろうという想いだった。



「は、ぅ、ぜんし、ん、隙間なくふにゃふにゃになるまでブルブルペロペロ……こ、これは、たまらんのだぁ♡」


「他にもこういうのできます」


「ん? おお、ギュッとハグ? ハグして、キスして、ちゅ♡ オオオオオオオオッッ!!??」


 

 振動で敵を破壊する。

 振動で味方の疲れた体などをほぐす。

 そして、求められるのなら振動で姫たちの体に快楽を与える。

 

「も、もう、無理なのだ……旦那様よ……すーぱーびんびんまうんてんまっさーじ……を」

「うん」


 特にチヴィーチに関しては恥も外聞もなく、クエイクに真っ先にハマった。

 己の欲望を満たすため、暇さえあればクエイクを天幕に連れ込んで自分に奉仕させた。

 クエイクはその全てを懸命に忠実に、さらには求められている以上の力を注ぎ込んで応えてきた。


 それこそ、チヴィーチは既にクエイクを巨神兵対策云々を抜きにしても手放せぬぐらいに、堕ちていた。


 一方で……



「クエイク~、ゴハンの準備でき……むぅ~~、お姉様! またクエイクをそんな使い方して……そんなのダメです!」


「おひ?」


「クエイクは道具ではないのです。ちゃんと一人の人として向き合わないといけないのです」



 チヴィーチの天幕に入ってきて、ムッとした表情で奉仕中のクエイクを引き剥がそうするクロース。

 彼女もまた、チヴィーチとは少し違った意味で、クエイクを欲していた。





――あとがき――

マッサージで悦んでいるだけだから、セーフだよね?

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