第11話 妹は見た
――ブルンブルン♡ ブルルルルルル♡♡♡ ブリュルルルルルルルルル♡♡♡
常軌を逸した振動は天幕を揺らし、そして大地にまで響いていた。
「な、なにごとだ?」
「システィア様!? 分かりません、し、しかし、クロース姫の天幕から……」
「な、なに?」
システィアは目を疑った。
聞こえてくる何かが激しく振るえる音。
そして……
―――♡♡♡♡♡
「「「「「ッッッ!!!???」」」」」
聞くだけで思わず赤面してしまうほどの、淫らに悦び叫ぶ女の声。
「い、いいい、いったい、あ、あの中で、な、何が?」
「わ、分かりませんが……し、しかし……ど、どうされます?」
「ど、どうする、も……」
今まで聞いたことのないような声。しかし、その声の主をシスティアは心当たりがあった。
「あ、あの声……まさか、いや、しかし……そんな馬鹿な! あ、あんな……あの、あの姉上が……こんな、淫獣のような叫びを……」
敬愛する姉の声。しかし、今まで聞いたこともないような姉の声に、百戦錬磨の戦士であるシスティアですら思わず震えるほどだった。
「っ……お、お前たちはこの周囲から離れろ! 距離を取れ! よいか? わらわが出てくるまで、決してあの天幕に近づくな! 近づいた者がいたら、その首を刎ね飛ばす!」
「「「「「しょ、承知しました!?」」」」」
あり得るはずがない。あの姉に限ってそんなこと……と思う反面、万が一を考えて、魔界全土の魔族たちの憧れでもある姉の痴態を決して見せてはならないと、システィアは兵たちを急いで天幕より遠ざけた。
「ふぅ……落ち着け……そんなはずはない……そんなはずがないに決まっている……あ、姉上は絶対不可侵の聖なる高嶺の花……いかに彗星の如く現れた英雄とはいえ……そ、そんなこと……そんなこと……」
気を落ち着かせて、システィアはクロースの天幕の前へ。
頭の中で嫌でも想像してしまう「まさか」を必死に否定しながら、意を決して天幕に手を伸ばす。
そして……
「ほら、おかわりは、まだまだた~んとありますよ~♡」
―――――ッ!!??
「んごぉ♡ お、おぉぉ、お、おお、すごいですぅ♡♡♡」
システィアの全身が震えあがった。
「あ、姉上……っ、あ、熱い……」
天幕を僅かに捲っただけで、中と外で明らかに違う熱気。
中から湯気があふれ出し、思わず一歩引いてしまう。
そして、目を見開いて中を覗き見て、システィアは信じられない光景を目の当たりにした。
「ちゅぅ~♡ うふふふ♡」
可憐で、少しおっとりしたところもあるが、純粋で優しい尊敬する自慢の姉が、裸で男に馬乗りで覆いかぶさってキスをしているのだ。
「あ、う、が、あぁ!」
「暴れてはだめですよぉ? うふふふ、まだ火照りが収まらないようなので、もっと食べてもらいますよ~♡」
覆いかぶさり、馬乗りになり、「雌」の顔をして微笑んでいる。
そんな表情をシスティアは初めて見た。
しかも、クロースは自分から求めてせがんでいる。
「お、驚いたのだ……うぬは……そんなおっとりしていて……メチャクチャ強かったのだ……な……」
―――ッッ!!??
そして、雌の肉食獣と化していたクロースばかりに気を取られて、もう一つのとんでもないものをシスティアは見落としていたことに気づいた。
クロースの天幕の床に、もう一人の姉が這い蹲っていたのだ。
「あら? お姉様、意識を取り戻されたのですね?」
「う、う、むぅ……ぐひっ、ま、まだ、起き上がれぬがぁ……ふぐぅ……こ、腰が抜けて、んひ♡ が、ガバガバになってしまうのじゃ……」
全裸で痙攣して、まるで潰れたカエルのような姿で床に這い蹲っているもう一人の姉であるチヴィーチ。
息も絶え絶えで、そのあまりにも悍ましい姿は、もはや呼吸をするだけの肉の塊。
だが、そんなチヴィーチとは違い、クロースはイキイキとしている。
「お姉様はお体が弱いのではないですか? 私も最初は怖かったですが、どんどん慣れてきて、むしろとっても幸せに感じてきましたよ?」
「そ、そうか……なのだ……」
「はい。彼になら食べられてもいい……そんな人に思う存分食べて戴いたら……こんなに幸せなのだと私は知りました♡ さっ、もう一回おかわりのキスです♡」
そう言って、未だに正気が定まっていない男にキスの雨を降らせるクロース。
「はい♡ ん、舌をもっと、ん♡ んんん♡ ぶりゅるるるるる♡」
舌を絡め合いながらあらゆる液が飛び散る。
それはシスティアにとっては、今まで知らなかった姉の姿であり、色々なものが変わってしまったのではないかと戦慄し、同時に……
「クー姉上……なんと……美しい……」
思わず見惚れてしまうような妖艶さと美しさに目を奪われるほどであった。
結局しばらく呆然と見ることしかできなかったシスティア。
「ふぇ? ちょ、待つのじゃ! 儂はもう休憩で、ちょ、まて、しびれ、んひぃぃいいいいいいい♡♡♡♡♡」
彼女が天幕に入って声を出すことが出来たのは、副作用が完全に収まってクエイクの意識が戻った時だった。
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