第8話 バイブマンの回想

 俺は一体、何のために生まれて来たんだ?


――見事デース! 人体と科学が融合した最新の改造人間! 全身が超振動兵器。その防御はあらゆる物理攻撃を全て弾き返し、その攻撃は分子の結合に干渉してあらゆる物体を破壊する超兵器!


 俺を作ってくれた方は、興奮して喜んでくれた。

 

――どこかの世界に放り込んで試してみたいものデース。ドラゴン? 魔王? 勇者? データが取れる未開の星ならどこでもいいデース♪


 そうだ。俺は喜ばれた。望まれて生まれて来たんだ。

 人に喜んでもらい、役に立つ、必要とされる存在としてこの世に生まれ――――


――ふぅ……所長も妙なものを作られたものですね……副作用? 仕方ありません。私がデータ取りも兼ねて試してみましょう


 でも、俺の初実戦で、予想もしない副作用が……そのとき、俺のトラブル処理をしようと、研究所の一人の女史が手を挙げた。

 若く美しく、だけど常にクールで鉄仮面のように無表情な人。

 研究にしか興味がなく、己にも他人にも厳しく、それでいて誰よりも優秀だった孤高の天才女史だった。



――いいのデースか? 『軍事研究所に君臨する氷の女帝』とまで呼ばれたあなたデースが……女の子としては経験不足。あなたには耐えられマセーン♡


――くだらないですね。所詮、雄と雌の接触行為。毅然とした精神力があれば、どうということありません


――病みつきになっても……責任取れマセーンよ?


――病みつきに? この私を誰だと思っているのです? この私の誇りにかけて、心乱れることなどありえません。



 俺の副作用の処理も、その人はデータ取りの一環ということでクールに対応しようと……



――初めまして、バイブくん。私の名前はアヘーナ。一応処女だけど……って聞いてないわね。


 副作用で熱く滾って今すぐにでも何もかもをメチャクチャに犯して放出したくなる衝動にかられていた俺の目の前に、美しい女性。

 白衣姿がよく似合い、眼鏡と口元のホクロがとても色気を醸し出し、清楚な長い黒髪は美しかった。

 俺の目の前で、白衣を脱ぎ、シュルシュルとっとスカートまで脱ぐ。黒いタイツで引き締まっ細い足と、その下に見える大人の下着。シャツのボタンもゆっくりと……


 何もかもが煩わしかった。


――っ、つ、待ちなさい、まだ脱いでいないでしょう? ガッツかなくても逃げないわ。これだから、こういう意志の弱さも不完全な――むぐぅ!?


 唇をとりあえず塞いだ。口の中を舌で舐りまわして唾液を吸っては、俺の唾液を送り込んでベトベトにしてた。


――ぷはっ、き、きたないわね……まぁ、所詮はただの唾液でなにも、ひゃぅ!?


 クールな鉄仮面が一瞬でか弱い女の声を上げた。

 口元のホクロを俺が嘗め回し、そのくすぐったさに声を出してしまったんだ。

 でも、その程度で終わらない。

 シャツのボタンをはぎ取って、その下に見える白いブラを破り取り、タイツも破いて白い下着の部分だけあらわにして、それも剝ぎ取った。


――っ、な、なんて……乱暴な……こういうところにも改良の余地が……


 一瞬乱れかけるも、すぐにキリっとした顔でクールに振舞う女史。

 だけど、その時の彼女の姿は敗れたYシャツと、破れたタイツを穿いているだけ。

 その姿がより興奮し、またキスをした。


――むぐっぅ!? ん、つ、また唇を重ねる唾液交換……ふっ、所詮この程度では……ぶぎゅるるる!?


 しかも、二度目のキスはただのディープキスじゃない。

 舌を振動させるキス。

 ディープバイブレーションキス


――ボリュルルルルルルルル!?


 そして、俺は彼女の唇を塞いだ状態のまま


―――んぼぉ♡♡♡


 彼女の胸やその他の箇所をまさぐりながら、弱い箇所を探し出し、その個所を延々とバイブ愛撫し続け……



 それを何時間も繰り返して……





――またまたキマした、ブルブルブルブルどっぴゅんこぉ♡♡♡♡♡♡♡



 女史の鉄仮面は完全崩壊。

 数時間後には人格が崩壊して、彼女はバカになって歌まで歌ってしまった。



――これは、ちょっとダメデースね……。超最先端最新鋭の力もこれでは……リミッターつけてマッサージ機にでもシマース。メモリーにもロックをして……うん、この子の振動治療もなかなかの効力ありマースし、戦争世界でどのぐらいの効果があるかのデータ取りで、適当な所に送りこみマース



 俺は使い物にならなかった。ガッカリさせた。役に立たなかった。妥協されてしまった。

 それが、俺のルーツ。

 そのルーツのメモリもリミッターと共に封じられ、俺が送り込まれたのは、魔族が生息する魔界と熾烈な争いをしている、地上世界のガヴェージ帝国。



――へぇ、女神さまが下さった神兵器の中に、かわいらしい、でもちょっと生意気な武器くんもいるのね♪ ふふふ、よろしくね。私はこの帝国の姫、『ジェラシ』よ



 そんな俺に手を差し出してくれたのは、帝国のお姫様。

 美しく輝く金色の長い髪を靡かせ、姫としての凛々しく毅然とした振る舞いや、戦場では剣を掲げて自ら先陣を切る姫騎士としての勇猛果敢な姿は、帝国の花、全人類の至宝とまで呼ばれた。



――え? 使えないってバカにされた? 落ち込まないの。あのねぇ、君はこの帝国の姫をいつだって癒す力が備わっているのよ? もっと自分を誇りなさい



 そして、その優しさは俺の心を……



――あのね、これは皆には内緒よ? その……あなたの振動するその手で……体で……いつものマッサージ以上に……私の体に触れてくれないかしら? やさしく、ね? ほらココとか入念に♡


 

 そして、いつ日か姫は俺のことをもっと必要としてくれるようになった。



――おひょぉ♡♡♡ しゅ、しゅごいわ、あ、あなたのマッサージ♡♡♡ 私の弱いところ、求めている個所、全て的確にぶるぶるぶるぶる♡♡♡ もっどぉ! もっどぉ! うひィ、ストライーーーク♡♡♡



 俺はこれからずっと、この姫のためにと……でも……だけど、その日々はいつまでも続かなかった。

  


――調子に乗るなよな? ガラクタが!



 俺は、必要とされなくなった。

 あの国は俺を役立たずだと、ゴミだと、ガラクタだと、それどころか姫を惑わす害悪扱いされた。



 俺は結局、リミッターがあってもなくてもこうなのか?



 それなら、もう……

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