第11話 精霊弟子

学園では水色髮の少年が剣を腰に掛けて外へ出掛けようとしていた。まだ若いが全体から溢れ出る色気に通りすがりの御令嬢が振り向き様に熱い視線を送るが少年が気付くことはない。


「おっ、今から出掛けるんかメイビス」


良く聞き覚えのある声が聞こえて少年は立ち止まるとゆっくりと振り返った。


そこには赤毛の長髪の男性が立っていてメイビスと言う少年に手をひらひらと振りながら近付いてく。


「アルベルト…。うん、隣街に盗賊が出たんだって」

「ふーん。そうかい」


にやにやと笑ってる赤毛の男性、アルベルトを不思議に思いながらもメイビスはこれ以上問いただすことはなかった。アルベルトの性格は自分達が一番良く知っている。アルベルトと話すだけ無駄なのも。だからメイビスはアルベルトを暫し無言で見つめた後街へと出掛けて行ったのだった。


♢♢♢


「妹さん、こちら終わりました。」

「うん、ありがとうリアティルド」


「妹君、こちらも大丈夫そうです」

「う、うんメルティもありがとね」


「「妹さん/妹君」」

「あ、あのねぇ〜!!」


あぁ、もう限界!!さっきから一体何なわけ!?


突如大声を出した私に二人は驚いてる様だけど今回ばかりは私悪くないよね!?


「ど、どうしたんですか?妹さん」

「それよ、それ!」


オドオドしだすリアティルドに距離を詰めて鼻先を小突くとリアティルドは眉を八の字に下げ、口をへの字にして困ってる様子だった。私の言ってる意味が分からないのだろう。


いいわ、だったら教えてあげる!


「その妹って何!?私は妹じゃないって何度も言ってるわよね!?」


そう言えば二人は目を点にして固まってしまった。


「で、ですが他になんとお呼びすれば良いのか」

「でしたらお姉様はどうでしょう」


ガチで困ってるリアティルドに反してメルティはにこりと微笑みながら手をあげて言った。彼女の周りにはお花が散りばめられている。


「お姉様か・・・いいかも」


腕を組んでマジメに考える私にリアティルドは慌てて異議を申し立てた。


「ダメです!却下です!!」

「え〜?だったらリアティルドは何が良いの?」

「え、あっ、その…・・・さ、ま」

「え、なんて?」


頬を真っ赤に染めてごもごもと口籠るリアティルドにメルティと一緒に近付いて耳をそばだてる。するとリアティルドは今にも破裂してしまいそうなくらいこれ以上にないくらい真っ赤に染めて息を吸う姿をぼっーと見つめていると。


「ご主人様はどうでしょうか!!!!」

「っ!?」


いきなり耳元で叫ばれた私は耳を押さえそのまま後ろへと倒れてしまう。


「ご、ご主人様って、え?リアティルドは本当にそれが良いの?」


そう聞けばリアティルドは顔を真っ赤に染めたまま俯いてしまう。


「リアティルド、それはどうなのかしら。私、奴隷は嫌よ?」


頬に手を添えて抗議するメルティにリアティルドは真っ赤な顔を隠しもせずに睨みつける。


「だったらどうしろと言うのですか!大体、こういうものを付けられた時点で奴隷と一緒でしょ!?」


リアティルドは手首にある赤色の紋章を見せ付ける。そこには一輪の花が手首に咲いていた。


「あら、いいじゃない。私はお洒落だと思うわよ?」


そう言うメルティの手首には水色のクローバーが。


「わざわざ逃げられない様にするなんてどこまでも魔王に相応しい方ですね」

「や、やだなー。私はただ二人が魔王を倒したいって言ってたから手伝ってあげようと思っただけだよ?」


ジト目で睨み付けてくるリアティルドにいたたまれない気持ちになった私はサッと視線を逸す。


私だって思わなかったのだ。レイエスさんが私に使った闇魔法、『共存スキル』。しかしまさかこんな簡単に自由自在に形を変えれるなんて思わなかった。レイエスさんの場合は私だけをこの場に留ませとくものだけど私の場合は私の傍らから離れられないもの。つまり、その呪いを解くまでは私から逃げることは出来ない。


「あぁ・・・。もう一生此処で暮らさなければならないんですね。私はこのまま嫁ぐ事なく一人で野垂れ死んでしまうんだわ」

「・・・いいんじゃない?一生此処で暮せば。私がずっと側に居てあげるよ?」

「えっ!?」

「あらら、駄目よ〜。リアティルドは惚れやすいんだから」


膝をついて項垂れるリアティルドにそう提案すればリアティルドの表情から絶望の文字が消えた。


リアティルドもメルティも強いから安心出来る。二人が居てくれれば私は戦いから遠ざけれるしスローライフを楽しめるわよね!そんな私の思惑を知らないリアティルドは、


「あっ、そう言えばこの付近で最近盗賊とやらが出回ってるみたいですよ」

「ふ〜ん…それは怖い・・・ん、何?」


二人からの視線を感じ取り嫌な予感がしたが一応聞いてみることに。


「勿論、行きますよね!」

「そりゃあ、魔王の妹君・・・ミシェルちゃんだもん。当たり前よね?」


テーブルに手をつき前のめりになるリアティルド、手を重ね合わせ満面の笑みで当たり前と疑いもしないメルティ。双方からの視線を受けいよいよ堪えきれなくなった私は勢いのまま叫ぶ。


「分かったわよ!その盗賊やらを始末しに行くわよ!!」

「流石はミシェル様!」

「それじゃあ、レッツゴー」


叫んで後悔する。私のスローライフはまだ先になりそうだ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

モブ令嬢は物語に関わるのは御免です!〜スローライフ所望のはずが世界でトップクラスの強さになっていました〜 白夜黒兎 @yuka822

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ