第383話 宿題は終わるまで付き纏う呪い
「えへへ、また師匠に勝った〜♪」
「べ、別に最近やってなかったから腕が落ちただけだし!」
「もう32連敗だよ? その言い訳も13回目だし」
「ぐぬぬ……
「ぐすっ、
「え、あ、そういう意味じゃないよ?!」
ゲーム内でもボコボコにされ、現実でも嘘泣きをしている弟子に本気で焦っている夕奈。
テスト期間は天音に構ってあげられなかったこともあり、寂しい思いをしているのではないかと心配していたのだ。
「天音ちゃんは可愛いよ!」
「……ほんと?」
「夕奈ちゃんが嘘ついたことある?」
「1分前についた……」
「そ、それは忘れようね?」
「まだ100回以上残ってるよ?」
「なら全部忘れよう!」
「……師匠の記憶、全部消えちゃう」
夕奈は天音の言葉に「嘘しか……ないだと……」と落ち込むが、結局のところそれも弟子の冗談だとすぐに種明かしされた。
少なくとも、天音だって師匠が自分を好いてくれていることや大切に思ってくれてる気持ちは本物だと分かっているだろう。
彼女が嘘をつくのは、悔しい時か恥ずかしい時くらいだ。まあ、ゲームに負けた時はその両方なのだろうが。
「そう言えば、天音ちゃんってもう冬休み?」
「今日終業式だった!」
「じゃあ、もうたっぷり遊べるね!」
「宿題はしないとだよ」
「……遊べるね!」
どうしても宿題を記憶から消したいらしい夕奈に、天音がこちらへ助けを求めるような視線を送ってくるので、とりあえず『宿題』と書いた紙を額に貼り付けておいた。
「わたしゃキョンシーか!」
「宿題しないと呪われちゃう」
「いや、もう呪われてるよね? というか、私が呪う側だよね?」
「夕奈、そんな醜い姿に……」
「唯斗君がやったんだけど?!」
「宿題をやらないのが悪い」
「やるつもりですぅ、まだやる気が産声を上げてないだけですぅ!」
「じゃあ、産ませに行こうか」
「え、子供を?」
「……は?」
「すみませんやる気ですよね分かってます」
唯斗が「天音の前でそういうこと言わないでね」と耳元で囁くと、ハッと気が付いたようにペコペコと頭を下げてくる。
うっかりしていたとは言え、小学生妹の前で下ネタまがいなことを言われると、兄としては心配なのだ。
賢い天音ならないとは信じているが、夕奈のように平気で男友達に下ネタを言う女の子にはなって欲しくないからね。
「で、でも、あと一戦だけさせて!」
「絶対負けるのに?」
「勝つから!」
「じゃあ、負けたら罰ゲームを受けるならいいよ」
「洗濯バサミだけはご勘弁を……」
「ええ、どうしようかなぁ?」
「ぐぬぬ……からかいおって……」
悔しそうに下唇を噛み締めた彼女は改めてテレビの前に座ると、天音を隣に座らせてコントローラーを握る。
その目は離れていても本気が伝わってくるほどで、今の彼女が先程までの数倍の戦闘力を発揮出来るであろうことが分かった。
「もし勝ったら、唯斗君が洗濯バサミだかんね!」
「いいよ、その方が平等だし」
「天音ちゃん、最後の聖戦と行こうやないの!」
「ふっ、いくら数倍になろうと、戦闘力たったの5ではドドリアさんにも勝てないよ!」
「推しキャラを捨てる。夕奈ちゃんは……強キャラを使ってでも勝ちに行く……!」
「……そう、その言葉を待ってたよ」
ゴクリと生唾を飲み込んだ天音もコントローラーを握り、それぞれがキャラクターを選んでバトルを開始する。
それと同時に動き出した二体はステージ中央で互いにため技同士を衝突させると――――――――。
「そ、そんなっ?!」
「今の夕奈ちゃん舐めとったら……いてこますで?」
天音の操作するギャノンドルフが後方に大きく吹き飛び、初手から大ダメージを受けたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます