隣の席の美少女が何故か憐れむような目でこちらを見ているけど、僕には関係がないのでとりあえず寝る ―――ひとりが好きなぼっちだっているんですよ?―――
第332話 何となくお土産は手渡しの方がいい気がする
第332話 何となくお土産は手渡しの方がいい気がする
そして、次に目覚めた時にはもう着陸し終えたというところで、ぞろぞろとみんなが飛行機から降りていく様子が見える。
「唯斗君、着いたよ」
「ん? あ、うん」
「いつまで寝ぼけてるの。早く降りないと置いてかれちゃうよ?」
「分かってるよ。はぁ、せっかく夕奈が賢くなった夢を見てたのに……」
「何か私の悪口言った?」
「ううん、何でもない」
やはり夢はどこまで行っても夢だなと心の中で呟きつつ、彼は上の棚から自分と夕奈の鞄を取り出して彼女に渡してあげた。
彼女は「気が利くじゃん?」なんてニヤニヤしているけれど、そんなことは無視してさっさと出口へと向かう。
「ていうか、もう終わっちゃったかー」
「修学旅行のこと?」
「そうそう。もっと続けばよかったのに」
「勉強しなくて済むからでしょ」
「バレちった? まあ、唯斗君と一緒に居られる時間が沢山あるってのも理由だけどね?」
「別に修学旅行じゃなくても、一緒に居ようと思えば居られるでしょ」
「それはつまり、夕奈ちゃんとずっと一緒に居たいということかな?」
「可能かどうかの話をしてるだけ。ずっと横に居られたら、僕が発狂するよ」
「私をなんやと思っとるんや!」
「歩く騒音機」
「えー、歩く計算機がいいのに」
不満そうにそう呟いた夕奈に「無機物で満足なんて幸せな頭してるね」と言うと、彼女は「ハッピーガールだかんね!」とウィンクしてきた。
唯斗からすればハッピーガールというよりも、脳内オッパッピーガールだろうとは思うが、変に話を広げても疲れるのでそれは言わないでおく。
「あ、そうだ。
「そんな、お姉ちゃんにまで? 大学が午前までだから、夕方には大抵いると思うけど」
「それなら明日か明後日に渡しに行くって伝えといてよ」
「へぇ、私の家に来てくれるんだ?」
「嫌なら学校で夕奈に渡してもいいけど」
「いやいや、お姉ちゃんも唯斗君が顔見せてくれたらすごく喜ぶと思うなー!」
「そう言われたら行かない訳にはいかないね」
どうせ行くなら、ついでに夕奈に勉強でもさせよう。唯斗がそんなことを考えているとは知らず、彼女は小さくガッツポーズをしている。
修学旅行が終わったということで一段落したい気持ちの人も多いだろうが、期末テストはすぐに襲いかかってくる。
ここで気を抜けば冬休みは補習三昧。唯斗にとって夕奈の成績がどうなろうと知ったこっちゃないが、彼女のことだからきっとクリスマスやお正月なんかにも集まろうとするだろう。
ただでさえ夏休みより短い冬休みが、補習で潰れて楽しめないというのも
あくまで彼女たちのことを気遣って、仕方なく夕奈の面倒を見てあげるだけなのだ。
「唯斗君、今なにか良からぬことを企んでない?」
「……いいや?」
「ほんとにぃ? 夕奈ちゃんの危険センサーがビュンビュン反応してるんだけど」
「随分と速そうな反応だね」
「1秒で地球7周半……って誤魔化されないよ! 悪いことをしようとしてるなら吐きなさい!」
「別に誤魔化してはないけど」
「この、吐けー!」
「どこぞの議員みたいに言わないでよ」
やたらしつこく問い詰めてくる夕奈が鬱陶しいので、仕方なく本当のことを教えてあげることにする。
すると、以外にも彼女は悩んだ末に「まあ、仕方ないから勉強してやんよ」と了承してくれた。この素直さ、明日は台風が来るかもしれない。
「来るとわかっていれば、いくらでも勉強しない理由を用意しておけるもんね!」
「……まあ、そうなるか」
前言撤回、きっと明日は快晴だ。夕奈の開き直り様に見合って、空には雲ひとつもないだろう。
唯斗は深いため息をつきながら「勉強させる理由、用意しとくね」と呟いて、先に待ってくれていたみんなの元へ合流したのだった。
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