隣の席の美少女が何故か憐れむような目でこちらを見ているけど、僕には関係がないのでとりあえず寝る ―――ひとりが好きなぼっちだっているんですよ?―――
第324話 弱点を認めることは、弱点を無くすことへの第一歩
第324話 弱点を認めることは、弱点を無くすことへの第一歩
結局、
女子部屋から出るところを見られたら変な噂でも立てられそうだと思ったが、
「ありがとう、瑞希の背中」
「私は何もしてないんだけどな」
「そこに居てくれるだけで助かってる」
「まあ、役に立ててるなら何よりだ」
「頼もしい背中だよ」
そう言いながら何気なく撫でると、彼女はビクッと背筋を伸ばしてこちらを振り返る。
それからほんのりと赤くした頬を隠すように左手の甲を口元に当てながら、「や、やめろよ……」とぎこちなく呟いた。
「あれ、瑞希って背中弱いの?」
「べ、別にそういうわけじゃない」
「もう一回確かめてみる」
「ひゃっ?! だからやめろってば!」
「やっぱり弱い?」
「弱くなんか……」
「もう一度検証が必要みたいだね」
「わかったわかった、認めるって!」
反応が良いので少しやりすぎてしまったらしい。周りからの少し冷たい視線に気付いた唯斗は、「ごめん、瑞希」と素直に謝っておく。
彼女も怒っているだとか不機嫌になったわけではないようで、「言いふらしたらデコピンするからな?」という言葉だけで許してくれた。
さすがはミズエル、慈愛の女神様の心は広いね。
「ねえねえ。そう言えば今日って、夕食が終わったら修学旅行イベントだよね」
「修学旅行イベント?」
「唯斗君、知らないの? しおりにも載ってたのに」
「イベント事に興味無いから」
「夕奈ちゃんも出るのに?」
「……大丈夫なの?」
「どういう意味やおら」
夕奈のことだ、調子に乗って何かをやらかして惨事が起こる可能性は十分にあるだろう。
それによって彼女が怪我をしないかと心配したつもりだったのだが、どうやら良くない方の意味で捉えられたらしい。
弁解するのも面倒なので、とりあえずペシペシ叩いてくる手を止めさせて、さっさと話を進めるように促した。
「夕奈ちゃんはマジックを披露しちゃうかんね。この日のために費やした20年は無駄にしない!」
「そんな生きてないでしょ」
「気持ちは永遠の20歳だし」
「精神年齢女子中学生のままなのに」
「この立派なレディが目に入らぬか!」
「うん、立派な部分がひとつも見つからないね」
「ぐぬぬ……今に見ておれ、驚くほどのたわわになって窒息させてやっかんな……」
「楽しみにしてる」
彼が親指を立てて見せると、夕奈は悔しそうに下唇を噛み締めながら自分の胸元に手を添える。
それから「大きくなぁれ、大きくなぁれ……」と唱え始めたが、人目が気になるからと瑞希に止められていた。
「瑞希みたいなボイン族には、私みたいなペタンコ族の気持ちなんて分からないんだー!」
「私だって昔は小さかったんだ。お前だってこれから大きくなるかもしれないだろ?」
「昔っていつのことなのさ」
「小5でDになったから……小4までだな」
「……ちっ。所詮夕奈ちゃんは万年Bですよーだ!」
嘘をつけない瑞希の性格が裏目に出たのか、夕奈は完全に不貞腐れて顔を背けてしまう。
彼女の言うところのボイン族である瑞希と
ただ、そんなことは気にせずに寄り添ってあげられる人物がまだ一人残っていることを忘れてはいけない。
こまるは夕奈の背中をポンポンと叩くと、自分の胸に手を添えながらボソッと呟くように言った。
「私、まだA」
その後、何かが吹っ切れたように明るくなった夕奈が、胸の話題を一切出さなくなったことは言うまでもない。
もちろんそれは仲間がいることに安心したからではなく、自分よりもアルファベットが下の人がいると理解したことで、何も言えなくなってしまっただけなのだけれど。
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