隣の席の美少女が何故か憐れむような目でこちらを見ているけど、僕には関係がないのでとりあえず寝る ―――ひとりが好きなぼっちだっているんですよ?―――
第305話 背中を任せられないやつを相棒とは呼べない
第305話 背中を任せられないやつを相棒とは呼べない
「いいものを見せてもらいましたし、指導はここまでにしてあげます」
先生はそう言うと、
なんだかんだ人の心はまだ残っているのかと心の中で呟きつつ、彼も同じようにして見せる。
「もう集合時間も過ぎていますし」
「……あ、ほんとだ」
「でも、怒られる心配はありません。私の買い物に少し付き合ってもらっていると連絡を入れたので」
「指導する時は用意周到なんですね」
「隙があるようで隙がない。いい女の特徴ですよ?」
先生はそう言ってクスクスと笑うと、最後に「私はバスには乗らないので」と手を振りながらどこかへ行ってしまった。
「あれ。そう言えば、先生だけここまでレンタカーで来たんだっけ?」
「出発の時も点呼だけしてバスから降りてたな」
「バスが嫌いなんでしょうか」
「ちがう。隠し事」
「妹ちゃんを連れてきてるんだろうね〜♪」
「ふむふむ、なるほど……」
そして何を思ったのか、「みんなで突撃して妹ちゃんの顔を見ちゃおう!」なんて言い始めた。ついに頭がおかしくなったのかな。
「夕奈、そんなことしてる時間ないよ」
「先生の車に乗って変えればええやん?」
「何人乗りかも分からないのに」
「いざと言う時は私が唯斗君の膝の上に座るし!」
「何か起こったらどうするの」
「何か起こるって……変なこと言わないでよー♪」
「変なことなんて言ってないけど」
「え、何も起こらないはずはなくってことっしょ?」
「いや、事故が起きたらってことだよ」
「…………こほん。とにかく突撃しよっか」
「今誤魔化したよね?」
「突撃、しよっか!」
「……」
振り返った時にチラッと顔を出した赤い耳と、余程勘違いが恥ずかしいのか視線を合わせようとしてくれない目に気が付いてしまったら、もうそれ以上の追求はできなかった。
「夕奈がそこまで言うなら行ってみるか」
「多分何とかなるよね〜♪」
「それな」
「お、怒られちゃいますよぉ……」
唯一不安そうな
「じゃ、ボクはバスで帰るから」
「唯斗君も来るんだよ」
「どうして?」
「今一人で戻られたら、私たちが迷子になったと思われちゃうじゃん!」
「いや、僕がはぐれたんだと思われるでしょ」
「どの道、同じ班なんだから別行動は許さん!」
「そんな娘はお前にやらんみたいに言われても」
「
「もともと僕のだから」
「ヒューヒュー! 俺の女発言頂きましたー♪」
「……もう怒ったから。絶対に許さないから」
この流れで大激怒感を出して帰ろうかと思ったが、「ちょいちょい、冗談じゃん!」とあっさり引き止められてしまった。
どうやら『怒ったかんな、許さないかんな作戦』は通用しないらしい。ちゃんと「橋〇環奈♪」までやらなかったのが悪かったのだろう。
唯斗は次の機会があればちゃんと呪文を最後まで唱えようと心に誓いつつ、引きずられるようにして先生のところまで連れていかれるのだった。
「それで、どこに先生の車があるか分かってるの?」
「この辺りの駐車場ではあるだろうな」
「かと言って隠し事があるから、一番近くのには停めないだろうね〜」
「わかる」
「それに向こうに歩いていきましたけど、反対方向にも駐車場はあります!」
「幸いにもあっち側は駐車場が2つしかない」
「もう絞られたようなものだよね〜♪」
「それな」
みんなの心理的な面からの考察になるほどと頷きかけた時、夕奈が「早とちりされちゃ困るぜ」なんて言いながら短く笑う。
彼女はどこから取り出したのか、人差し指と中指に挟んだココアシガレットの先に唇を触れさせては、たばこの煙を吐くような真似をしていた。
ベテランの刑事の真似事に見える。控えめに言ってすごくかっこ悪いが、花音が「すごいです
「
「相棒がワトソンなら探偵じゃん」
「イ〇シとノシ〇?」
「それだと有名なキツネになるけど」
「……あ、唯斗君にとっての夕奈ちゃんか!」
「敵役じゃん」
「誰がドンキ〇コングじゃ」
「どちらかと言うとフリ〇ザかな」
「可愛さ53万ってか!」
「……」
「ザ〇ボンさん、無視は酷くない?」
「花音、言われてるよ」
「わ、私ですか?! ワトソンだったのでは……」
「カノちゃんはド〇リアに改名ね」
そんなことを言って「ザー〇ンさん!ドド〇アさん!行きますよ」と小走りになる夕奈。
彼女を仕方なく追いかける唯斗と花音を眺めながら、後ろを歩いていた瑞希たち3人が呆れ顔を見せたことは言うまでもない。
「まあ、楽しそうでなによりだけどな」
「私、あのやり取り眺めてるの好きなんだよね〜♪」
「わかる」
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