隣の席の美少女が何故か憐れむような目でこちらを見ているけど、僕には関係がないのでとりあえず寝る ―――ひとりが好きなぼっちだっているんですよ?―――
第166話 イベント事の前はソワソワすると言うけれど……
第166話 イベント事の前はソワソワすると言うけれど……
文化祭がついに明日まで迫り、ショートホームルームの時間には
しかし、
「…………」
文化祭委員長なのに席に突っ伏したままピクリとも動かない
彼女が最近やけに静かなのが、居心地いい反面薄気味悪くて仕方がないのである。
何かを企んでいるのではと探ってみたりもしたものの、まともな返事が返ってこないどころか目も合わせてくれない始末。
(……やっぱり誘ったのが悪かったのかな)
きっかけになるとすれば、『文化祭、一緒に回って』という言葉しか考えられなかった。
よくよく考えてみれば、夕奈だって瑞希や
そこで自分が誘ってしまったばかりに、直前に励ましたばかりな手前断れなかったと言ったところだろう。
(うん、そうに違いないね)
唯斗は心の中で頷きつつ、瑞希が「解散!」と宣言するのを待ってから夕奈の肩をトントンと叩いた。
「ねえ、話があるんだけど」
「な、何?!」
「……どうしてそんなに怯えてるの?」
顔を上げて上目遣いでこちらを見てくる様子にそう聞くと、彼女は「そ、そんなことないし……」とまた目を背けてしまう。
「あのさ、この前のやつナシにしてくれないかな」
「この前のやつって?」
「一緒に文化祭回るっていうのだよ」
「えっ、なんで?!」
「迷惑だったかなって」
「そんなことないない!」
夕奈はブンブンと首を横に振って見せるが、唯斗はそんな彼女の肩に手を添えながら「僕も正直になるんだから、夕奈もそうしてよ」と言った。
嫌でもそれなりの時間近くにいた彼には分かるのだ、夕奈が言いたくても言えないでいる何かを抱えていることくらい。
「気を遣う必要ないからね」
「いや唯斗君、何か勘違いしてない?」
「……勘違い?」
首を傾げる彼に深いため息をついた彼女は、「本当は言いたくなかったけど、こうなったら仕方ないか」と呟いて事情を話してくれた。
その話によると、昨晩
「惚れてるって、僕が夕奈に?」
「な、無いとは分かってるんだけどね。夕奈ちゃんってば思春期なのかな、あはは……」
「夕奈のことは嫌いではなくなったけどね」
「やめて! 今の私に優しい言葉は毒だから!」
両耳を塞ぎながら「わーわー!」と叫び始めた夕奈は、そのままカバンを持って教室を飛び出して行ってしまった。
どうやら誘ったことが原因ではあるものの、嫌がられているという訳では無いらしい。でも、あの様子だと一日中一緒にいるのは厳しいかもなぁ。
唯斗がそんなことを思いながら帰りの準備を始めようと振り返ると、こちらに歩いてきた瑞希と目が合った。
「
「あれ、どうして知ってるの?」
「今の会話はクラス全員に聞こえてたと思うぞ」
「……ああ、そっか」
まあ、特に聞かれて困るものでもないので構わないが、何か秘密を話す時には声のボリュームに気をつけるようにしよう。
「明日は私も花音の世話だけで手一杯だからな。お前が夕奈と一緒なら安心出来る」
「暴走したら止められないけどね」
「今のあいつなら大丈夫だろ。いざと言う時は手でも繋いでやればいいさ」
「そんな簡単に言わないでよ」
唯斗だって何の躊躇いもなく他人の手を握れるほど鋼鉄のメンタルはしていない。相手が夕奈だとしても、本気で拒まれれば傷つくレベルだ。
「悪い悪い。でも、必要な時は頼むぞ?」
「そんな瞬間、滅多にないと思うけどね」
「自然災害だって油断してる時に来るものだろ」
「夕奈と一緒にしたら災害が可哀想だよ」
「……相変わらず酷い言われようだ」
瑞希は苦笑いしつつ、「とにかく頼んだからな」と言い残して
その集団の中、こちらをじっと見つめる視線があることに、彼は気が付くことが出来なかった。
「……夕奈、ずるい」
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