第125話 歩く冷却装置
その後、みんな順調にピースを抜いていき、もうこれは不可能だという段階で最終的に崩したのは
流れで負けた者は一発ギャグをやるということになり、彼女も文句を言いつつしっかりとやってはくれたのだが……。
「「「「「…………」」」」」
「みんな冷たいねぇ?!」
床の上で背筋と腹筋を使った『打ち上げられた魚』というギャグを披露した瞬間、
たしかに頑張っているし笑わせようという意思は伝わってくるのだが、床から5cm程度浮かび上がっているのと口で「ピチピチ」と効果音を付けている辺りが見ていて気持ち悪いのだ。
「まあ、次行こうぜ」
「一発ギャグは無しの方が良さそうだね〜」
「それな」
優しさ故に「お、面白かったですよ……?」と夕奈を励ましてくれる
「わ、私の持ちギャグなのに……」
「僕は悪くなかったと思うけどね」
「本当かい?!」
「人間の力に抵抗出来ない悲しみが表現できてた」
「……そのつもりは無いんだけど」
「じゃあ勘違いかも」
「くそぉぉぉぉ!」
完成したタワーを前に悔しがる彼女。唯斗も何か励ましの言葉をかけてあげたいとは思うものの、やはり考えるのは面倒だった。
だから、このジェンガに命令されて仕方なく言う場面になれば……なんて思っていたのだが、まさか本当に言うことになるとは―――――――――。
『左隣の人の悪い所を3つ言う』
――――――――――――悪口を。
「とりあえずうるさくて、邪魔で……」
「す、ストーップ! 夕奈ちゃん泣くよ?」
「あと鬱陶しいし、自分のこと可愛いとか言う」
「おいおい、4つ目言うなや」
「でも、確かに顔はいいし運動出来るのは尊敬できるし、
「唯斗君、私のことをそんなにも……」
「それだけに頭の悪さは救いようが無いね」
「ぐふっ……」
褒められてから一気に落とされたことで、その高低差によるショックで夕奈は胸を押さえて仰向けに倒れてしまう。
それを見て慌てた花音は医療ドラマの真似をして手首で脈を測った後、「脈があります、心臓マッサージしないとです!」とわけの分からないことを言いながら夕奈の胸に手を当てた。
「ちょっと待てい」
「あ、目を覚ましました!」
「花音の懸命な治療のおかげだよ」
「えへへ、当然のことをしたまでですよ〜♪」
「いや、
誇らしげに微笑んでいる花音を褒めつつ、唯斗が耳元で「倒れたフリするのが悪い」と言うと、夕奈は「精神ダメージ与えてくるからじゃん」と不満そうに頬を膨らませる。
「僕は本当のことを言っただけ……」
「わーわー、聞こえなーい! 私だって唯斗君の悪口言ってやるもんね!」
「いいよ、言ってみて」
「えっと、永久ぼっち!」
「僕が一人でいる理由、もう一回教えようか?」
「……ほんとごめんなさい」
土下座までしてくれなくてもさすがに怒りはしないが、唯斗もこの話題はあまり口にしたいとは思わなかった。
だからこそ少しキツイ口調になってしまったが、「それに夕奈たちがいるからぼっちになれてないよ」と言うと彼女は何故か元気を取り戻してくれる。
「他に悪いところ言ってよ」
「ま、まだ続けるの?」
「この機会に聞いておきたいと思ってね」
「えっと……ど、鈍感なところとか?」
「僕、察しはいいほうだと思うけど」
「んなわけあるかい」
彼女はそう言いながら唯斗の方をペシッと叩くと、「じゃあ、この言葉の意味を察せたら認めてあげる」と耳元に口を寄せて小声で囁いた。
「夕奈ちゃん、いつも寝る時に使ってる抱き枕を家に忘れてきちゃったんだよねー♪」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます