第119話 後悔先に立たず、懺悔は足りず
「……どうしてマルちゃんがここにいるのさ」
「だから、さっきも説明した」
「ぐぬぬ……私は認めない!」
たかいたかいをしてから数時間後、
どうしてこまるがやってきたのかと言うと、マコさんたちのコテージのベッドが、この場にいる3人を寝かせた時に濡れてしまって使えないからである。
「夕奈、大人気ないよ」
「大人じゃないし、まだピチピチのJKだし!」
「頭の中は小学生なのに?」
「誰がピカピカやおら」
さすがに夫婦を別々の部屋で寝させる訳にもいかず、宿無しとなったこまると
「ベッドが使えなくなったのは僕たちのせいでもあるんだよ。こまるを受け入れるのは当たり前の事じゃない?」
「い、言われてみれば……」
「夕奈も人の子なら、たまには優しくなってみようよ」
「仕方ないなぁ……って、夕奈ちゃんはいつでも優しいけど?!」
「……」
「無視はやめて?!」
まあ、なんだかんだOKしてくれているらしいので、唯斗もこまるに手招きし部屋の隅に荷物を置いてもらう。
その後、自分のベッドの右半分を示しながら、「こまるはこっち側を使って」と寝床を分けてあげた。
「待って、私は入ることすら許されなかったよね?」
「夕奈にはベッドがあるから」
「ならマルちゃんは私が引き取るよ!」
「僕はそれでもいいけど」
唯斗はあくまで床で寝かせるわけにもいかないからと、優しさで半分にしてあげていただけで、こまるに対して好意がある訳では無い。
夕奈のベッドで寝てくれると言うのなら、喜んでその身を引き渡すだろう。しかし―――――――。
「こっち」
こまるが寝込んだのは唯斗のベッドで、夕奈の方へ行くつもりはサラサラないらしかった。
本人が行かないというのだから彼から何か言えることもなく、ただ中央に引いた境界線を維持することしか出来ない。
「ま、マルちゃん? 唯斗君も男の子なんだけど」
「知ってる」
「変なことされちゃうかもしれないよー?」
「あっそ」
「は、恥ずかしいことされちゃうよ?!」
こまるは夕奈の言葉に「人を変態みたいに言わないでよ」と言っている唯斗の顔を見上げると、相変わらず無表情のまま少しだけ視線を逸らした。
「……別にいい」
「はぁ?!」
「もう手遅れ」
「や、やっぱりマコさんのコテージでしてたのって……」
わなわなと震える夕奈に唯斗が何気なく「あれは腰が大変だったよ」と言うと、彼女は何かが崩壊したように叫びながら悶え始める。
「私よりも先に唯斗君のことをぉぉぉぉぉ!」
「うるさ」
「マルちゃんが悪いんじゃん! 何人の男に手出しちゃってんの?!」
「僕は夕奈の物になったつもりないけど」
「唯斗君は黙ってて」
「奇遇だね、僕も夕奈にそう思ってたよ」
皮肉を言う唯斗を無視してこまるに近付いた夕奈は、その小さな体を引っ張り起こすと「どこまでやったの!」と問い詰めた。
「最後まで」
「っ……」
「体がフワフワした」
「き、聞きたくない聞きたくない!」
「照れる。でも、またして欲しい」
「ぶへっ?!」
見えない何かによってKOされた夕奈から離れたこまるは、話しているうちに思い出してしまったのか、ベッドにいる唯斗の肩を叩きながら「もっかい」とおねだり。
今なら両親も見ていないし、少しくらいならいいだろうと唯斗は仕方なく彼女の体を抱えてベッドから降りた。
「ま、待って……ここでするの?!」
「何か問題ある?」
「問題しかないよ! 私いるし!」
「誰が見ててもできるよ、これくらい」
「え、えぇ……」
唯斗はやっぱり価値観が合わないのかななんて思いつつ、「いくよ?」と声をかけて膝を軽く曲げる。それと同時に夕奈は両目を手で覆ってしまった。
「ほら、たかいたかい」
「……♪」
しかし、いざ始まって見れば指の隙間から覗き、「……ほえ?」と間抜けな声を漏らしながらガン見してくる。
「……何やってるの?」
「見てわかるでしょ、たかいたかいだよ」
「えっと、それがコテージでしてたこと?」
「逆になんだと思ってたの」
「あ、いや、その……」
されるのが恥ずかしくて、体がフワフワして、腰が疲れること。思い返してみれば全て当てはまるものの、勘違いしていたなんて言えるはずがなかった。
「や、やっぱりたかいたかいだよねー!」
「夕奈も分かってたんだ?」
「あたぼーよ! 私も好きだかんね」
「え、夕奈がたかいたかい……?」
「今、重そうって思ったよね?」
「……いいや?」
せっかく気を遣ってあげたものの、「本当は?」と聞いてくるので素直に「僕には持ち上げられないかなって」と言ってあげたら叩かれてしまった。
やっぱり夕奈って何考えてるのかよく分からないね。唯斗はそんなことを思いつつ、ふと冷凍倉庫内での出来事を思い出す。
「そう言えば夕奈、謝ってもらわないと」
「何をー?」
「倉庫でキスしてきたこと」
「いや、あれは成り行きというか混乱していたというか――――――――――」
「僕は深く傷ついた。よって慰謝料を請求します」
「か、勘弁してください……」
その後、あのアクシデントを貸し3つとして詫びると言うので、人情溢れる唯斗は彼女の頭を撫でながらこう言ってあげた。
「貸し5つね」
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