玲瓏の空

第14話 トモダチ

「もう、大丈夫だよ」

　零菜は僕の顔をしっかりと見ながらそう言った。零菜の頭に手を置き髪を梳かすように動かすと彼女はそれに合わせるように頭を動かした。

「悠翔君にお願いがあります」

「何？」

「今度一緒に勉強しよ」

「いいよ。いつにする？」

「えっとね、じゃあ――」

　零菜は人差し指を口に当てながら予定を考え始めた。遊ぶ場所や日程、予定を零菜が決める。男の僕がリードしなくてどうすんだって思うだろうけど、僕達にとって懐かしい姿だった。

　僕らは、また来週会う日を約束した。

「じゃあまた来週だね」

「うん……」

　返事をする零菜はまだ僕から離れようとはしなかった。

「どうしたの？」

「……もうちょっとだけ話さない？　私これから悠翔以外の友達に謝らなきゃいけないからさ。忘れちゃってごめんって。それがね、ちょっとだけ怖いんだ。だから――」

「じゃあ何話そうか？」

　零菜は僕に断られることが怖かったのかまた下を向き始めてたが、僕の言葉に引き上げられるように顔をあげた。

「ホント！？　じゃあね！　じゃあね！　悠翔君の友達の話して！」

「俺の友達かー。じゃあまずは光太郎（こうたろう）だな。俺の大学で出来た一番最初の友達」

「光太郎……どんな人だっけ？」

「金髪で小っちゃいけどかっこいい人」

「あ、もしかして光（こう）ちゃん！？」

「知ってるの？」

「すごい面白い人だよね」

「あー多分光太郎だわ。光太郎は、見た目チャラいし変わったとこあるけど友達はすげー大事にするやつだからさ。怖がらないで話してみてほしいな。絶対裏切るタイプじゃないから」

「……分かった。ねぇねぇ他にはどんな人がいるの？　悠翔君かっこいいし優しいしいっぱい友達いるでしょ？」

「かっこいいと思ってるのは零菜だけだよ……」

「そうかな？」

「その理論でいったら零菜だって可愛いし友達いっぱいってことになる」

「ウチは可愛くないよ。悠翔君センス悪いんだね」

「ひどいな」

「悠翔君はね、絶対幸せにならなくちゃいけない人だよ。約束ね」

「突然だな」

　時々ふざけたり、冗談を交わしたりして僕らは話し込んだ。

　笑いは絶えなかった。

「悠翔君ありがとね。やっぱり君と話してると楽しい」

「それはよかった。じゃあもう暗いし帰るね」

「ちょっと待って！」

　零菜は何かを思い出したように僕の服を掴んだ

「今度会った時、私の宝物あげるね」

「分かった。楽しみにしてるね」

　零菜は笑顔で返事をした。

「気を付けて帰ってね。事故に気を付けるんだよ。怪我しないでね」

　最後にドアを閉じる前に零菜を抱きしめた。

「またね」

「またね！」

　零菜はベランダから僕の事を見送ってくれた。