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 「ねえ、おじいさん恐竜の言った、100年後って、どういうことだろう」


 おねえちゃんが首をかしげている。

 スーパーおろち号に戻って、シャワーを浴びて、さっぱりしたところだ。


「やっぱり気になる?」

圭太は尋ねた。


「うん、なる」

「行ってみようか、100年後へ?」

「スーパーおろち号は、タイムマシンだもんね」


二人は同時に、白蛇を見た。


「ええーっ」


 白蛇は、いやな顔をした。だが、やっぱり、自分も、行ってみたい気がしていたようだ。


「ちょっとだけですよ、ちょっとのぞくだけ」





 「ああ、たしかにここだ。百年、経ったんだ」


 スーパーおろち号は、緑色の葉がきらきらときらめく森の上空に停車していた。


 100年前、おじいさん恐竜が倒れていたのは、平原だった。しかし今、そこは、さわさわとした若木が茂る、森となっていた。


 スーパーおろち号の窓からは、森の全体の形が見渡せる。


 上から見ると、森は、あのセイスモサウルスの形をしていた。木々が、頭の部分にひとかたまり、それから、5~6本ずつ横並びになって、それがたてに続いて首に見える。胴体の部分には、木々が、こんもりと茂っていた。そしてまた、ほっそりとしたしっぽをなぞるように、2~3本の木が横に並んで、それがずうーっと続いていく。



 「アロサウルスたちに食べられた後、おじいさん恐竜の体が、最後の一仕事をしたんですねえ。木々にとって、素晴らしい栄養となったのです」


 珍しく感動したように白蛇が言った。




 その時、向こうから、どすーん、どすーんという地響きが聞こえて来た。


 セイスモサウルスの大群だった。

 たくさんのセイスモサウルスたちが、一列に並び、この森目指してやってきた。


 一頭一頭、じゅうぶんなあいだを空け、セイスモサウルスたちは、ゆっくりと歩いてくる。太陽の光を大きな体いっぱいにあびて、彼らの姿は輝くようだ。


 しっぽをむちのようにしなやかに降り、その複雑な動きが、先頭から群れの最後まで、伝言ゲームのように伝わっていく。


 先頭のセイスモサウルスは、群れの中でも、ひときわ、大きかった。

 一歩一歩、足が前へ出るたびに、首が揺れる。体の筋肉が、美しく踊り動いた。


 何も恐れるもののない、王者そのものに見えた。


 彼は、ふと、何かの気配を感じたように首をぐるんとまわした。上を見上げ、スーパーおろち号に気がついた。



 「モーモだ! あれ、モーモだ!」

興奮して、圭太は叫んだ。


「モーモ、モーモ!」


圭太とおねえちゃんは、窓から身を乗り出すようにようにして、けんめいに、手を振った。


 ぐおーーーーーーん


 先頭の恐竜がいななくように叫び、その声は、群れ全体に広がっていった。








◇:*:☆:*:◇:*:☆:*:◇:*:☆:*:◇:*:☆:*:◇:*:☆:*:◇


 お話にあったように、現代では、セイスモサウルスは、ディプロドクスの一種とされています。セイスモサウルスと言われた化石は、当初考えられていたよりも小さく、全長33メートルほどとわかりました。


 タイトルは「セイスモサウルス(ディプロドクス)」としましたが、モーモとおじいちゃんは、このどちらでもない、全く別の種類の竜脚類と、お考え下さい。


 おとなが横たわったら、軽く、森くらいの大きさになる、巨大恐竜。しかも、おとなしい植物食。


 そんなのがいたら、壮大だろうな、と、想像しながら書きました。






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