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「ねえ、おじいさん恐竜の言った、100年後って、どういうことだろう」
おねえちゃんが首をかしげている。
スーパーおろち号に戻って、シャワーを浴びて、さっぱりしたところだ。
「やっぱり気になる?」
圭太は尋ねた。
「うん、なる」
「行ってみようか、100年後へ?」
「スーパーおろち号は、タイムマシンだもんね」
二人は同時に、白蛇を見た。
「ええーっ」
白蛇は、いやな顔をした。だが、やっぱり、自分も、行ってみたい気がしていたようだ。
「ちょっとだけですよ、ちょっとのぞくだけ」
*
「ああ、たしかにここだ。百年、経ったんだ」
スーパーおろち号は、緑色の葉がきらきらときらめく森の上空に停車していた。
100年前、おじいさん恐竜が倒れていたのは、平原だった。しかし今、そこは、さわさわとした若木が茂る、森となっていた。
スーパーおろち号の窓からは、森の全体の形が見渡せる。
上から見ると、森は、あのセイスモサウルスの形をしていた。木々が、頭の部分にひとかたまり、それから、5~6本ずつ横並びになって、それがたてに続いて首に見える。胴体の部分には、木々が、こんもりと茂っていた。そしてまた、ほっそりとしたしっぽをなぞるように、2~3本の木が横に並んで、それがずうーっと続いていく。
「アロサウルスたちに食べられた後、おじいさん恐竜の体が、最後の一仕事をしたんですねえ。木々にとって、素晴らしい栄養となったのです」
珍しく感動したように白蛇が言った。
その時、向こうから、どすーん、どすーんという地響きが聞こえて来た。
セイスモサウルスの大群だった。
たくさんのセイスモサウルスたちが、一列に並び、この森目指してやってきた。
一頭一頭、じゅうぶんなあいだを空け、セイスモサウルスたちは、ゆっくりと歩いてくる。太陽の光を大きな体いっぱいにあびて、彼らの姿は輝くようだ。
しっぽをむちのようにしなやかに降り、その複雑な動きが、先頭から群れの最後まで、伝言ゲームのように伝わっていく。
先頭のセイスモサウルスは、群れの中でも、ひときわ、大きかった。
一歩一歩、足が前へ出るたびに、首が揺れる。体の筋肉が、美しく踊り動いた。
何も恐れるもののない、王者そのものに見えた。
彼は、ふと、何かの気配を感じたように首をぐるんとまわした。上を見上げ、スーパーおろち号に気がついた。
「モーモだ! あれ、モーモだ!」
興奮して、圭太は叫んだ。
「モーモ、モーモ!」
圭太とおねえちゃんは、窓から身を乗り出すようにようにして、けんめいに、手を振った。
ぐおーーーーーーん
先頭の恐竜がいななくように叫び、その声は、群れ全体に広がっていった。
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※
お話にあったように、現代では、セイスモサウルスは、ディプロドクスの一種とされています。セイスモサウルスと言われた化石は、当初考えられていたよりも小さく、全長33メートルほどとわかりました。
タイトルは「セイスモサウルス(ディプロドクス)」としましたが、モーモとおじいちゃんは、このどちらでもない、全く別の種類の竜脚類と、お考え下さい。
おとなが横たわったら、軽く、森くらいの大きさになる、巨大恐竜。しかも、おとなしい植物食。
そんなのがいたら、壮大だろうな、と、想像しながら書きました。
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