第236話 衝撃の真実!!

 船の上にログインした私を、唐突に衝撃が襲い掛かってきた。


「うぐっ……」

「ルナにゃ!」


 私よりも先にログインしていたネロが、私がログインしてきたのを見て、突撃してきたらしい。


「ネロ……人に急に突撃するのは、やめようね」

「分かったにゃ」


 ネロは私の腹部に頭を擦りつけながらそう言う。これは絶対にまたやるなと思った。アリスちゃんには見られないようにしないといけない。

 甘えモードのネロをあやしていると、皆も次々にログインしてきた。


「ついさっきまで現実で一緒だったのに、こうしてこっちでも会うと変な感じ」


 シエルが、そんな事を言う。実際、私も同じような気持ちなので、理解は出来る。


「学校のある平日は、全然集まらないしね。そんな事よりも、早く探索を始めよう。森も広いわけだし、早く調べたいから」

「そうだね」


 私達は、小舟でアヴァロンに戻り、月読とプティに乗って森に入っていく。


「早く調べるなら、手分けする?」


 走っている最中に、シエルからそんな提案をされる。


「こっちは、ガーディを着せれば、探索力は補えるから」

「まぁ、その方が良いか。それじゃあ、何かあれば連絡。何もなければ、一時間後に世界樹集合で」

「了解。『人形合体──プティ──』」


 プティとガーディを合体させ、シエル達が離れていく。


「それじゃあ、私達も速度を上げて調べようか。ネロなら大丈夫だよね?」

「にゃ。任せるにゃ」


 私は、いつもよりも速度を上げて、森の中を走っていく。私自身も周囲に気を配りながら走っているが、特に何の変哲もない森ばかりだ。遠くに海が見えるので、そのまま海が見えるか見えないかの距離を維持して、島の縁と森の中どちらも調べる。見た感じどこにも怪しい場所はない。そのまま一時間の探索時間を終える事になった。その間に、島を一周出来たのは、大きいな収穫だったけど、他の成果は何もなかった。


「何にもなかったにゃ」

「ね。これは、じっくりと調べるしかないのかもね。取りあえず、集合場所の世界樹に行こう」

「にゃ」


 シエル達から連絡がないので、あちらも何も見つけられなかったという事だろう。それでも、何かしら分かった事はあるかもしれない。ちょっとは期待してしまう。

 世界樹に近づくにつれて、また私の鬼の力が勝手に発動する。鬼の力は、私の五感にも作用するようで、さっきよりも周囲のものが分かる気がした。

 それでも何も見付からないまま、世界樹の根元まで移動した。すると、またウロボロスが私を見つけて追ってきた。まぁ、私をジッと見るだけで何もしては来ないんだけど。

 世界樹の根元と言っても、世界樹の太さはかなりあるので、一箇所で待っていたら合流出来ない。私は、かなりの速度で世界樹の周りを回っていく。


「この速度でも付いてきているにゃ」


 後ろを見ていたネロがそう言った。どうやら、ウロボロスが普通に付いてきているみたいだ。今も私は、百キロ以上の速度が出ているはずなんだけど、それに追いつているって、どれだけ速く動けるんだか。


「まぁ、気にしても仕方ないよ」


 そう言いながら周りを見ていると、ソル達がこっちに来ているのが見えた。私はそっちにハンドルを切って、合流する。


「どうだった?」

「何もないよ。森と平原だらけ。そっちはどうだった?」

「こっちも同じ。島の縁近くを一周したけど、特になにも無かった。もうウロボロスに訊くしか無いか」


 私がそう言うと、ソルから空気が漏れた。


「ほ、本気だったの!?」

「いや、あの時は冗談だったけど、本当に何も見付からないなら、それも一興かなって」

「良いんじゃない? あの石碑の謎を解くためには、藁にもすがりたいわけだし」


 シエルは、すぐに賛同した。


「話しかけた事で、敵対判定にされないでしょうか?」


 メレは、私が話しかけた事で、またウロボロスと戦う事になるのではと心配していた。横でミザリーも頷いているので、メレと同じ意見という事だろう。


「その可能性は捨てきれないけど、まぁ、可能性は低いでしょ。取り敢えず、何でもやってみようだよ。シエル、すぐに移動出来るように準備はしておいて」

「了解」


 すぐに退散出来るように、シエルには準備をしてもらう。それが出来たのを確認してから、私は、上からこっちを見てくるウロボロスを見る。

 そして、ウロボロスに向かって大きく手を振った。


「お~い!」


 すると、ウロボロスが地面に落ちてきた。私達の真上では無く、前の方に落ちている。敵対して、攻撃の意思があるのなら、私達の真上に落ちてくるはずなので、まだ敵対していないだろう。シエルが、一瞬動きそうになったけど、手振りで止める。

 私の前で止まったウロボロスは、私をジッと見ている。これは、もしかしたら、もしかするかもしれない。


「石碑にあった世界樹の中に入りたいんだけど、あなたは何か知らない!?」


 でかいウロボロスにも聞こえるように、大声で話しかける。ダメ元での行動だけど、ウロボロスは、首を縦に振って頷いた。


「知ってるみたい」

「えぇ~……」


 予想だにしない事態に、ソルも唖然としていた。

 ウロボロスは、そんな事も気にせずに、首だけで付いてくるように指示して、動き始めた。地面よりも世界樹の上が良いのか、移動する場所は世界樹の枝だった。私達は、ウロボロスの後を地面から付いていく。

 そのまま付いていくと、ウロボロスは、尻尾で木の幹の一箇所を指していた。だけど、そこに穴があるわけでもなく、ただただ木の幹があるだけだ。


「何もないよ!」


 遠くにいるので、少し大声でそう言う。だけど、ウロボロスは、ただ幹を指すだけだった。


「?」


 さすがに、蛇の言葉なんて分からないし、ウロボロスが何を言いたいのか三分の一も理解出来ないけど、取り敢えず、ウロボロスが示してくれている木の幹に近づいていく。

 やっぱり近づいても何も無い。一体何を言いたいのだろうか。そう思いつつも、ペタペタと木の幹を触っていく。すると、唐突に木の幹が開いた。木の幹に寄りかかるようにして探っていた私は、唐突に支えを失い、その先にある階段へと落ちていく。


「いやあああああああああああああ!!!」


 頭、背中、腰、あらゆる場所を打ちながら、落ちていき階段下に着いた。


「うおおぉぉぉ……あまり痛くないのが逆に怖い……」

「痛覚耐性のせいでしょ。大丈夫みたいでよかった」

「それ、本当に良かったと思ってる……?」


 軽く身体を動かして、状態を確認する。


「ルナちゃん、大丈夫?」

「なんとかね。馬鹿みたいに高い痛覚耐性のおかげで、痛みはないよ」

「念のため、回復はしておくね」

「ありがとう」


 ミザリーに回復して貰って、私が落ちた先を見回す。そこにあったのは、三枚の石碑だ。階段を除いた三面に一枚ずつある。


「これ、日本語と英語と……何語?」

「見たところ、ヨーロッパ圏の言語だと思います。ドイツですかね」

「メレ、読める?」

「いえ、さすがに」

「オッケー。じゃあ、英語の訳をお願い。日本語と同じなら、日本語だけ読めば良いから」

「分かりました」


 メレに英語の確認をして貰いつつ、石碑の文字を読んでいく。まずは、一番左の石碑。


『この世界は実在する。現実とこの世界は夢で繋がっている。一人の男が夢の世界で暮らしたいと考えた。それは、様々な人物がこんな世界だったら良かったのにと思うような理想郷だったからだ。男は、自分の願望を他の人達も同じだろうと考えた。その結果、夢の世界と繋げる方法を確立した。だが、それは現実世界での死を意味する。一生元の世界に戻る事は出来ない一方通行だった』


 一枚目の石碑にはそう書かれていた。あまりに唐突な事に、皆、言葉を失っている。そんな中で英語の和訳をしていたメレが、私の肩を叩く。


「日本語と同じ内容です。恐らく、他の二枚もそうでしょう。なるべく広い方々に知ってもらうためのものと思われますが、何故、この三カ国語なのかは、何も書いていませんでした」

「日本語でも書いてなかったし、この分だと、そこの説明は、もう一つの言語でも書かれてないだろうね。ありがとう」

「いえ」


 メレのおかげで、日本語だけを読めば良いことが分かった。有り難い事だ。メレにお礼を言って、次に真ん中の石碑を見る。


『男は、一つの計画を立てた。それは、地球の人類を、こっちの世界に移住させるというもの。だが、それには一つの障害があった。この世界の住人だ。そこで、男は、計画を悪魔の計画に変えた。それは、この世界の住人を消して、自分達が成り代われば良いという計画だった』


 話の内容が一気に悪い方向へと向かっていた。一枚目は、まだ理解出来なくもない内容ではあった。そんな事を可能にした技術は、全く理解出来ないけど。

 私は、最後の一枚に目を向ける。


『計画を知った我々は、計画を頓挫させようと動き始めた。だが、男の遺志を継いだもの達によって、次々に計画が復活する。我々も同志の薬によって不老不死となり、どうにか阻んでいる。君達がどういう事を聞いてここに来たのかは分からないが、これだけは知っておいて欲しい。君達のやっている事は、この世界の人々を死に至らしめる事だという事を。最後に、仮に生きている我々に出会えても、言論統制をされていて、情報は喋られないだろう。どうか、我々に力を貸して欲しい』


 三枚に書かれていた内容は、これで全部だった。

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