第233話 お泊まり会(2)!!

 二人が洗い物を終える頃に、黒江から通話が来る。すぐに出て、ビデオ通話が始まる。


「こんにちは、黒江」

『あ、こんにちは。ちゃんと出来てる?』

「出来てるよ。そっちは?」

『大丈夫』


 黒江と話していると、すぐに日向達もやって来た。


「やっほー、黒江」

『大空』

「黒江ちゃん、こんにちは」

『日向』

「こんにちは。黒江さん」

『舞歌』

「今日は顔色が良さそうだね」

『美玲。皆いる』

「そりゃあね。お昼は食べた?」

『うん』


 黒江もお昼は済ませたみたい。


「よし。それじゃあ、お泊まり会の本番を始めようか」

『うん』


 その後、格闘ゲームで盛り上がる。基本的に黒江は見学になるけど、かなり楽しそうにしていた。総当たりで戦ったが、一番の戦績が良かったのは、日向だった。私も頑張ったけど、決まるわけ無いだろうというコンボを繋げられて倒された。

 カラオケタイプのゲームでは、やはりというべきか、舞歌が良い成績を収めていた。時点は、私だった。アカペラじゃないカラオケという事で、黒江も一緒に歌っていた。

 そして、最後に新作のゾンビゲーをやった。これは、皆であーでも無いこーでもないと話し合いながら進めていき、黒江の一言がその場を打開する一手となった事もあった。

 ゲームで大盛り上がりした後は、予定通りタコパの始まりだ。


「黒江ちゃんは、夜ご飯何になったの?」

『皆と同じたこ焼き。もうお母さんが作ってくれてる。本当は、自分で焼きたかったけど、さすがに駄目だって』

「まぁ、寝室でたこ焼きは危ないと思うし、仕方ないね」

『でも、たこだけじゃなくて、色々と入れてくれるって』

「私達と一緒ですね。こちらも色々と入れる事になっています。楽しみですね」

『うん』


 タコパの準備をしている間、日向、舞歌、黒江が、そんな事を話していた。美玲には生地を頼んで、大空にはたこ焼き器の準備をしてもらっている。

 私の方は具材を切っていく。そうして準備が完了したところで、たこ焼きを焼き始める。最後に焼いたのは、結構前だったけど、勘は鈍っていなかった。クルクルと回していると、皆が声を出して感心していた。

 最初は、皆で一斉に一つを食べた。もちろん黒江も一緒だ。


「我ながら上手く出来た」

「うん。美味しいよ」

「本当。出店とかで食べるのと同じ感じ」


 日向と大空も感心してくれる。


「黒江はどう?」

『美味しい。いつもよりも美味しく感じる』

「皆で一緒に食べているからかもしれませんね」

「船の上で食べたお刺身も美味しかったしね」

『うん。そうだと思う』


 場所は違えど、こうして会話しながら食べるだけで、普段とは違う形になる。それが、黒江に良い刺激を与えている感じだ。


「それじゃあ、次は誰が焼く?」


 私がそう言うと、小さくだったけど、真っ先に手を上げたのは、舞歌だった。あまり意外では無い。こういう事をやりたいって言うのは、日向か舞歌だと思っていたから。


「じゃあ、生地を流し込んで、具材を一つ一つに入れていこう」


 さっき私がやったところを見ていたからか、舞歌はテキパキと生地を流していき、様々な具材を入れていく。そして、生地を丸める段階に入ると、少し手こずり始めた。


「け、結構、難しいですね」

「周りを軽く剥がしたら、刺して回すって感じ」

「な、なるほど」


 そうして四個目くらいになると、慣れてきたようで、次々に焼き上げていった。


『おぉ……凄い』

「ありがとうございます」


 黒江から褒められて、舞歌は嬉しそうにしていた。実際、初めてやったのに結構上手いと思う。


「では、朔夜さん。どうぞ」

「ありがとう」


 舞歌が取り分けてくれたたこ焼きを食べてみると、驚いて目を見開くことになった。


「甘っ!?」

「チョコのたこ焼きです。美味しいですか?」

「美味しいけど、何というか、たこだと思って食べると滅茶苦茶変な感じがした」

「へぇ~、私も気になる」


 そう言って日向がお皿を差し出すので、舞歌がチョコ焼きを渡す。そして、それを食べた日向は、少しびっくりしていた。


「本当に甘い。びっくりしちゃった。でも、美味しいね」

「そうなんだよね。驚く事に不味くはない」

「へぇ~、私はやめとこ」

「では、こちらをどうぞ」


 そう言って舞歌は、大空に別のたこ焼きを振る舞う。大空はそれを少し怪しみつつ食べた。


「あっ、ウィンナーね」

「はい。ちょっと捻りがないですが、その分約束された美味しさです」

「うん。本当に美味しいや」


 大空は満足したように頷いていた。


『私もウィンナーのたこ焼き食べた』

「おっ、お揃いじゃん。美味しいよね?」

『うん。美味しかった。後、ツナのたこ焼きも食べた』

「ツナかぁ。ちょっと美味しそう」


 美玲がそう言うと、舞歌の目がキラリと光る。


「では、こちらをどうぞ」


 そう言って、たこ焼きを配る。


「いただきます……ツナ!」


 食べて驚き、黒江から話題が出たツナのたこ焼きを作っていたのだ。まさか本当にツナが出て来ると思っていなかったので、美玲の驚きも大きいだろう。

 そして、舞歌も自分が焼いたたこ焼きを食べた。一体、どんな感想が出て来るのかと思っていると、口を押えて顔が真っ赤になっていた。


「ま、舞歌!? どうしたの!?」

「お、お水を……」

「あ、うん。はい、これ」


 お水を一息で飲み干した舞歌は、手で自分の顔を扇いでいた。


「……辛いの食べたの?」

「まずは、自分で味わった方が良いと思いまして……」

「辛かった?」

「そ、そうですね。ちょっと驚くくらいには辛かったです」


 そう言いながら、舞歌はまた辛いたこ焼きを食べていた。


『やみつき?』

「そうですね。また食べたくなってしまいますね」

「お、おお……」


 舞歌は、涙目で辛いたこ焼きを食べていた。でも、無理に食べていると言うよりも本当に美味しいみたいだ。

 その後、予想通り日向が焼きたいと言ったので、最後の生地を頼んで、たこ焼きを食べ尽くした。美玲の提案でチーズと卵もたこ焼き器で焼いてみる事になった。結果、結構おもしろい事になった。

 夜ご飯を美味しく頂いて、わいわいと話していると、黒江の部屋に黒江のお母さんがやってきた。


『黒江』

『……もうちょっと』

『だ~め。ちょっと咳も出てるでしょ? 明日熱が出ちゃったら嫌でしょ?』


 そう言われて、黒江は渋々頷いた。


「黒江。今日は楽しかった?」

『うん』

「それじゃあ、またやろう? 私達も楽しかったからさ」


 私がそう言うと、黒江は嬉しそうに頷いた。


「それじゃあ、またね。黒江ちゃん」

「にゃのない黒江は、新鮮だったよ」

「また一緒に歌いましょう」

「宿題は忘れないようにね」

『うん。今日はありがとう』


 皆がそれぞれお別れの挨拶をしたところで、私は一つの提案をする。


「どうせだから、皆で写真を撮ろうか」


 皆で黒江が映るパソコンを囲んで集合写真を撮った。それを皆に送る。


『それじゃあ、バイバイ』

「うん、またね」


 黒江とは、ここでお別れとなった。まぁ、お昼の一時くらいから八時までぶっ続けで通話していたら、そこそこ長いだろう。

 後片付けは、皆で協力して終わらせた。一人やったら時間が掛かるけど、皆でやったから、すぐに終わった。


「さてと、お風呂は沸いてるけど、誰から入る?」


 私がそう訊くと、日向が勢いよく手を上げる。こういう時の日向は、あまり良くない提案をする可能性が高い。嫌な予感がしつつも日向の方を向いた。

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