第64話 顔合わせ!!

 私は、パーティーの顔合わせのために、ユートリアの噴水広場に来ていた。服装は、いつもと同じ夜烏と黒羽織だ。腰には、昨日シルヴィアさんに買ってもらったストラップがぶら下がっている。お守り代わりだ。


「あっ、ソル! シエル!」


 王都から転移してくると、ベンチに二人が座っていた。


「ルナちゃ~ん!」


 私に気が付いたソルが大きく手を振る。同じく気が付いたシエルは、小さく手を振った。


「まだ、二人しかいないんだ?」

「集まる時間には、まだ早いからね」


 シエルが答えてくれた。確かに、集まる時間はまだ少し先だ。私もベンチに座って三人で世間話をしていると、噴水広場に転移の光が起きた。光が収まると同時に、エラとジークが現れる。


「あっ、私達が最後だ。ジークが急がないから」

「急いでただろ」


 少し揉めつつ二人近づいてくる。


「ごめん、遅くなっちゃった」

「ううん。時間通りだから大丈夫だよ」

「エラが言っていたのは、君達だったのか。なら、強い味方というのも納得だ。俺の名前はジークだ。よろしく」


 ジークは、そう言って手を差し出してきた。それを断る必要はないので、私も手を差し出す。


「ルナです。よろしくお願いします」

「俺にも敬語はいらない。呼び方もジークで構わない」

「分かった。よろしく、ジーク」


 その後、ソルとシエルも自己紹介をする。


「前のイベントで、全員の戦い方は分かっていると思うけど、編成はどうする?」


 自己紹介が終わると、エラがそう言った。


「ソルとジークが前衛で、エラは後衛でしょ?」

「ルナも後衛じゃないの?」


 後衛の話のところで、私の名前が出てこない頃に気が付いたシエルがそう訊いてきた。


「私は後衛でも良いけど、場合によっては、遊撃に回した方が良いと思うんだ」

「どういうことだ?」


 私の言っている事が分からないから、ジークがそう訊いてきた。エラも同じように私を見る。


「私の装備は、夜になると本領を発揮出来るから、ステージが夜の場合なら、私が遊撃で自由に動けば、敵を倒せる可能性が高くなるよ」

「そんな装備があったとは……いや、イベントの時に黒い鴉を放っていたな。まさか、夜烏を討伐したのか!?」

「え、うん。そうだけど」

「なるほどな。ユートピア・ワールド初のユニークモンスター討伐者が君だとはな」


 ジークは、かなり驚いていた。あのイベントで気が付いたと思っていたんだけど、そうでも無かったみたい。


「ジークの武器と防具もユニーク装備じゃないの?」

「いや、俺のこれは、初期装備だな」

「じゃあ、最初からエグいスキルを持ってたんだ?」

「そうだな。ユニークスキルを最初から持っている。『聖剣』と『聖鎧』だな」


 あっさりと自分のスキルを言ったので、驚いてしまった。


「自分のスキルを喋っちゃってよかったの?」

「今は仲間だからな。知っておいた方が、援護もしやすいだろ?」

「これから敵になる可能性もあるんだよ?」

「そもそもゲームだからな。楽しく出来れば良い」


 ジークは、そう言って笑った。こう言われてしまえば、こっちも開示せざるを得ないかな。まぁ、言うだけなら大丈夫だろうし。


 私達は、互いに互いのスキルを言い合った。


 ────────────────────────


 ルナ[狩人]:『銃術Lv38(ユ)』『銃弾精製Lv39(ユ)』『リロード術LV36(ユ)』『体術Lv28』『暗視Lv22』『潜伏Lv36』『消音Lv21』『聞き耳Lv31』『速度上昇Lv32』『防御上昇Lv20』『器用さ上昇Lv29』『防御術Lv34』『回避術Lv35』『軽業Lv37』『急所攻撃Lv36』『防御貫通Lv20』『集中Lv40』『気配感知Lv8』『弱点察知Lv18』『潜水Lv11』『泳ぎLv11』『登山Lv18』『痛覚耐性Lv28』『気絶耐性Lv9』『言語学LV31』


 EXスキル:『解体術Lv28』『採掘Lv15』『古代言語学(海洋言語)Lv19』

 職業控え:[冒険者]



 ソル[剣士]:『刀術LV42(ユ)』『抜刀術Lv39(ユ)』『暗視Lv31』『聞き耳Lv31』『速度上昇Lv40』『器用さ上昇Lv35』『防御術Lv35』『回避術Lv33』『軽業Lv33』『集中Lv37』『見切りLv31』『気配感知Lv3』『弱点察知Lv31』『言語学Lv20』


 EXスキル:『採掘Lv15』

 職業控え:[冒険者]



 シエル[人形遣い]:『人形術(熊)(狼)Lv45(ユ)』『従者強化Lv42』『騎乗Lv20』『暗視Lv24』『潜伏Lv40』『集中Lv31』『気配感知Lv2』『言語学Lv10』


 EXスキル:『採掘Lv2』

 職業控え:[冒険者]



 ジーク[勇者]:『聖剣Lv50(ユ)』『聖鎧Lv49(ユ)』『剣術Lv42』『光魔法Lv20』『光属性強化Lv47』『暗視Lv40』『魔力上昇Lv19』『攻撃力上昇Lv35』『防御力上昇Lv35』『速度上昇Lv37』『防御術Lv40』『回避術Lv38』『集中Lv45』『見切りLv37』『気配感知Lv10』『弱点察知Lv35』


 職業控え:[冒険者]



 エラ[魔術師]:『杖術Lv38』『水魔法Lv47』『氷魔法Lv49』『風魔法Lv30』『詠唱短縮Lv40』『水属性強化Lv38』『氷属性強化Lv40』『風属性強化Lv28』『暗視Lv40』『潜伏Lv40』『魔力上昇Lv47』『速度上昇Lv34』『防御力上昇Lv38』『防御術Lv28』『回避術Lv32』『集中Lv42』『気配感知Lv6』


 EXスキル:『並列処理Lv42』

 職業控え:[冒険者]


 ────────────────────────


 やっぱりというべきか、私のスキルレベルが一番低い。皆は、モンスターとの戦いを中心にやっているんだと思うけど、私は、NPCの皆との日常も楽しんでいるので、あまりモンスターと戦っていない事が多い。その結果が顕著に表れているんだと思う。


「やっぱり、二人の方がスキル的には、強そうだね」

「あのイベントの時も、俺達の方が上だったと思うが、それでもかなり食いついてきていただろう? スキルだけが問題なんじゃない。プレイヤースキルが一番ものを言うはずだ」

「それはいいとして、明後日が本番だけど、一度合わせてみる?」


 エラがそう定案した。


「合わせるって言っても、何と戦うの?」


 そう、私達が共通して戦える相手がいるのかどうかが問題だ。それに、生半可な相手だと、合わせにもならない可能性が高くなる。


「荒れ地の奥にいるアイアン・ゴーレムはどう? 結構硬いし、相手として丁度良いんじゃないかな?」

「あれとの相性最悪だけど、良いかもね」


 エラの提案に納得していると、ソルとシエルが首を傾げた。二人とも、まだ倒していないみたい。一応説明をしておく。


「荒れ地を進んで行くといるボスなんだ。その奥が砂漠エリアだよ」

「へぇ~、その奥は?」


 ソルがわくわくとした顔で、私を見る。


「……暑すぎて、無理だった」

「じゃあ、専用装備が必要なのかな?」

「何処にあるか分からないからお手上げだね」


 シエルの言うとおり、砂漠の踏破には専用装備が必須になると思われる。今のところ、その情報が一切ないので、砂漠を進むことは出来ない。ジーク達も頷いていることから、情報は知らないみたいだ。


「エリアボスだし、倒しておいて損はないよね。じゃあ、早速行こう!」


 ソルがベンチから立ち上がってそう言った。


「そうだな。行ってみるか」


 ジークも乗り気だった。誰も反対する人がいないということもあって、すぐに荒れ地のボス戦に挑むことになった。


 ────────────────────────


 道中のモンスターを敢えて無視せずに倒していって、それぞれの連携の確認をする。誰がどういう風に動くのかを知らないと、攻撃の邪魔をするだけになってしまうからだ。互いに敵として戦うのと協力して戦うのでは、結構勝手が違うから、真面目にやっている。


「ボス戦の前だが、結構連携出来ているんじゃないか?」

「そうだね。意外と合わせやすいから驚いてるよ」

「一度、本気で戦い合ったってのもあるかもしれないね」


 私達の連携は、思っていたよりも意外と様になっていた。前回のイベントの時、散々戦ったからある程度攻撃を把握しているのが、大きいんだとエラが言う。まぁ、あの時から、攻撃の手段が増えたりしているけど、基本的な戦法が変わった人がいないのも大きいと思う。


「そろそろ、ボスのいるところだな。準備は良いか?」


 ジークの確認に、私達全員が頷く。そして、アイアン・ゴーレムと私達の戦いが始まった。


「『夜烏』」


 先制攻撃として、私が黒闇天で夜烏を放つ。こっちを敵視していないアイアン・ゴーレムに簡単に命中した。アイアン・ゴーレムの光沢が少し薄れる。


「多分、防御力が下がったはず!」

「行くぞ!」


 ソル、ジーク、プティが一斉に突っ込む。


「『氷槍よ 彼の者を穿て』!」


 その頭上をエラが作り出した氷槍が飛んでいき、身体に突き刺さった。防御力の下がったアイアン・ゴーレムは、その攻撃で身体を大きく傾ける。


「熊人形術『ベア・タックル』!」


 赤い光を纏ったプティがアイアン・ゴーレムの左脚にぶつかる。それによって。左脚の膝から先がへし折れた。完全に、バランスを取ることが出来なくなったアイアン・ゴーレムは、右膝を突いて、四つん這いに倒れ込む。


 そこに、ソルとジークが突っ込んでいく。


「刀術『百花繚乱』!」

「聖剣技『光刃ルークス・ラーミナ』!」


 ソルが放った無数の斬撃がアイアン・ゴーレムをバラバラに分解し、取り残された核を、ジークの光の刃が真っ二つに斬り裂いた。


 互いの連携を確認するために行ったはずのアイアン・ゴーレムとの戦いは、僅か三十秒で終わった。


「呆気な……」


 思わずそう口にしてしまう。


「全員の長所が重なり合った結果、ボスを瞬殺することになるとは思わなかったわ」


 隣にいたエラも苦笑いをしていた。


「これは……道中の敵と戦った方が連携の練習になったな」

「じゃあ、荒れ地に戻ろうか」


 道中の戦いの方が連携の練習になったと、全員が判断した。そして、シエルの言葉に頷いて、荒れ地内での修行に移行した。

 実際、道中の敵との戦いの方が良い連携の練習になった。ちょっぴり複雑だ……

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