第62話 最強パーティー!!?

 ログアウトした後、いつも通りに夜ご飯と入浴をすませた。そして、昨日に引き続き、自室でベッドに寝ながら、日向と電話をしていた。


「イベントの告知は見た?」

『見た見た。パーティー戦でしょ? 大空ちゃんは誘うとして、他はどうしようか?』

「三人パーティーじゃ、厳しそうだよね。今、思ったんだけど、私って、プレイヤーよりもNPCの人達の方が仲のいい人が多い気がする」

『人脈の狭さが出たね。学校の友達でも誘ってみる?』

「……やっている人、大空くらいしか知らない」


 友達はいっぱいいるんだけど、ユートピア・ワールドの話はあまりしないんだよね。自分がユニークスキルを手に入れたからっていうのが理由かな。


『大空ちゃんなら知っていると思うけど?』

「う~ん、誰かしら集めてもらおうかな。じゃあ、大空にも話しておこう。明日、ユートリアに集合でいい?」

『いいよ。じゃあ、お昼頃に噴水広場でね』


 私は、日向との電話を切って、大空の方に掛ける。


『もしもし』

「もしもし、朔夜だけど」

『朔夜から電話するなんて珍しいじゃん。どうしたの?』

「イベントの情報見た?」


 何のイベントか言っていないけど、大空にはそれだけで通じた。


『見たよ。パーティー戦だってね。朔夜達と組むつもりだったんだけど、大丈夫だった?』

「うん。こっちもそのつもりなんだけど、上限が六人だから、三人だと不利なんじゃないかなって思ってね。大空から誰かを誘うことって出来る?」

『う~ん、どうだろう。意外と固まって動いている事が多いみたいでね。もう六人ずつで固まっているんじゃないかな? 一応、誘ってみるよ』

「うん、お願い。明日の昼から、ユートリアの噴水広場にいるから」

『オッケー』


 そう言って、大空との電話を切った。


「う~ん、最悪、三人で出る事になりそうだなぁ。まぁ、プティとガーディがいるから、実質五人かな。あっ、でも、シエル自身は戦えないから、四人か」


 人数の差は、今回のパーティー戦で大きく響いてくると思う。よっぽど、こっちの方が強くないと、戦いにならない可能性がある。


「まぁ、それは今度考えれば良いや……あっ! ヘルメスの館に行くの忘れてた!!」


 私は慌ててログインすると、ヘルメスの館に急いだ。


「ごめんなさい! 遅くなりました!」


 そう言いながら入ると、ちょうどアイナちゃんがテーブルの上を拭いている最中だった。


「おかえり、アーニャ様を呼んでくるから、席に座ってて」

「うん。ありがとう」


 アイナちゃんにお礼を言った後に、いつもの席に座った。すると、すぐに奥からアーニャさんがやって来た。


「いらっしゃい。やっぱり、シャルロッテ様がいらっしゃるから、少し遅くなったわね」

「あっ、いや、その……実は、ここに来るの忘れてて……」

「あら、私達は、ルナちゃんにとって、その程度の存在なのね……」


 アーニャさんは、悲しそうに顔を伏せる。


「そ、そんなことないですよ! ちょっと、色々な事があって、その……」


 私が口ごもっていると、アーニャさんの背中が小刻みに揺れ始めた。そして、


「ぷっふふふふふ」


 アーニャさんは、口を押さえて笑っていた。


「今、絶対にからかいましたよね!?」

「ごめんね。ちょっと、からかってみたくなって」


 アーニャさんは、誤魔化すように私の頭を撫でる。何だか、少し楽しそうだ。


「まぁ、ひとまず、それは置いておいて、これが強化した黒羽織よ。強化した結果、認識阻害が認識阻害(強)に強化されたわ。防御力も上がってるから硬化も強くなっているかもね」


 私は、アーニャさんに強化してもらった黒羽織に袖を通す。


「やっぱり、これがあると落ち着きますね」

「そう? そう言ってもらえると嬉しいわ」

「そういえば、ルナちゃん、王都はどうだったの?」


 アイナちゃんが、お茶を運んできながらそう言った。


「今日は、国王様に報告をして、シャルやメアリーさん、シルヴィアさんと話していたから、全然回ってないんだ。明後日に、シルヴィアさんと回る予定」

「ブフッ! 陛下に直接報告を!?」


 アーニャさんが、紅茶を噴き出してそう言った。かなり驚いているみたい。返事をしようとしたけど、その前に、アイナちゃんから怒られていた。ひとしきり怒ったアイナちゃんは、雑巾を取ってきて床を拭き始めた。


「何で、陛下に直接報告することになったの?」

「国王様が話をしたかったからみたいですね。シャルやメアリーさんが私の事を話していたみたいで」

「しれっと、メアリーゼ様とも親交があるのね」

「王立図書館で、海洋言語を教えてもらいました」

「ああ、なるほどね……」


 それだけでアーニャさんは、納得したみたいだ。それから、アイナちゃんも席に座って世間話に花を咲かせた。

 ここで、アーニャさんに色々問いかけても良かったけど、多分にのらりくらりとはぐらされるだろうと思い、普通に話した。


 ────────────────────────


 次の日、ユートリアの噴水広場に来ていた。いつものベンチで、二人を待っていると、二人同時にログインしてきた。


「おまたせ」

「ううん、時間ぴったりだよ。それよりもどうだった、シエル?」

「ごめん。確認取ったんだけど、皆、もうパーティー組んでて、三人が入れるところはなかった」

「そっか~~どうしようか?」


 結局、三人でのパーティー構成になりそうだ。今回のイベントは厳しいかもしれない。


「大丈夫そうかな?」

「何が?」


 私達が話していると、後ろからソルでもシエルでもない声がそう言った。私達は、ビクッと肩を揺らすと、ベンチから慌てて離れた。ベンチの背もたれにいたのは、この前の対人イベントで戦ったエラだった。


「エラ!? 何で、ここにいるの!?」


 いきなり現れたので、心底驚いた。思わず、黒闇天を抜くところだった。


「いやぁ、ジークと待ち合わせしていたんだけど、ベンチにルナ達がいたから来ちゃった。それで、どうしたの?」

「今度のイベントで、パーティー戦があるでしょ? 私達、三人しか集まらなくて、大丈夫かなって話」


 エラにそう説明すると、にやっと笑った。


「ならさ、私達と組まない?」

「え?」


 エラからの提案に、私だけでなく、ソルとシエルも驚いた。


「私達もさ、二人だけなんだよね。他のパーティーから敬遠されているみたいでね」


 あれだけ強い、ジークの加入を断る人達が多いみたいだ。何でだろう?


「何か、優勝したジークを倒したい人が多いらしいの」

「それって、私達も狙われることになるんじゃないの?」

「まぁ、そうかもね! でも、三人なら大丈夫でしょ? あれから、もっと強くなっているはずだもの」


 エラとジーク。この二人と組めるのは、かなり大きい。現状、プレイヤーで最強のジークがいれば、勝率はかなり上がることになるはず。


「二人は、どう?」


 私は、ソルとシエルに確認を取る。


「私は、有りだと思うよ」

「私も同じ。後は、ルナがどう考えるかだよ」


 最終的な決定権は、私に委ねられた。私の答え、それは……


「分かった。二人と組むよ。五人で戦おう」

「良かった。じゃあ、お願いね。ジークにも伝えておくから、明日は……私が無理だから、明後日に顔合わせしよう」

「うん。分かった」


 エラは、そう言うと手を振って別の場所に向かっていった。多分だけど、ジークと合流しに行くんだと思う。


「これで、パーティーが揃ったね。意外なパーティーだけど」

「でも、最強のパーティーじゃない? 後衛には、ルナとエラがいるし、前衛はソルとジーク、遊撃で私がいるから、かなりバランスが良いと思うよ」

「私もそう思うよ。取りあえず、勝率はかなり上がったはず。取りあえず、頑張ってみよ!」


 私達は、自分達の連携を確かめるために、アトランティス港周辺で、戦闘をしていった。

 今日は、沢山の戦闘をこなしてから解散した。そして、翌日は、待ちに待ったシルヴィアさんとの観光だ。

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