第61話 久しぶりの会話!!
しばらくお茶を飲みながらメアリーさんと話していると、
「終わった~~!!」
という声がした。それと、ほぼ同時についたての向こうから、シャルが姿を現した。
「おまたせ!」
「もう大丈夫なの?」
「大丈夫、大丈夫、溜まってたやつは全部片したから」
シャルはそう言うと、私の隣に座った。シルヴィアさんは、傍に立っている。
「いつ、こっちに来たの?」
「昨日の昼近くに来た感じかな」
「そういえば、何かの報告に来たんだっけ?」
「アトランティスの崩壊です」
シャルが思い出そうとしていると、すかさずシルヴィアさんが教えた。
「ルナは、古代兵器を全部壊す気でいるの?」
「え? さすがに、そこまで考えてないけど。そもそも、アトランティスを崩壊させたのは、私じゃないし。というか、古代兵器ってそんな量があるの?」
私の問いに答えたのは、シャルでもシルヴィアさんでもなく、メアリーさんだった。
「今、存在が知られているのは、アトランティスを含めて三つ。アヴァロン、メメント・モリ、そして、アトランティスね」
「どこにあるとかも分かっているんですか?」
「確か……アヴァロンは、アトランティスがあった海の向こう側、そのどこかにあると言われてたはず。メメント・モリは、今はどこにあるか分からないんじゃなかったかな」
「どっちもどこにあるか、明確に分からないんですね」
「ええ。名前が伝わっているのが、その二つってだけだから。アトランティスは、偶々近くにあったって感じだね」
メアリーさんが言っていた二つは、存在すると言われているだけみたい。実際に見た事がある人がいたらしいけど、再び見つけ出すことは出来ていないとのことだ。メアリーさんも本に書いてあるのを見つけたって感じかな。
「どっちも、古代兵器なんですよね? どんな能力なんですか?」
「ええっと……アヴァロンは、その土地に足を踏み入れた人の傷や病気を治すだったかな? メメント・モリは……アンデットを問答無用で、消し去るみたいな能力だった気がするかな」
「なるほど。でも、どっちも、そのままの能力とは限らないのか……」
「どういうこと?」
シャルが、首を傾げて訊く。少し見回すと、シルヴィアさん、メアリーさんも何を言っているのか分からないみたいだった。
「えっと……国王様に口外を禁じられるから、詳しく話せないんだった……」
「う~ん、じゃあ、父上に今度聞いてみよ」
「うん。そうして」
「そういえば、ルナは、王都を回った?」
シャルが、話題を転換させる。真面目な話から一転ほんわかとし出す。
「ううん」
「じゃあ、案内してあげる!」
「シャル」
メアリーさんが、窘めるように名前を呼ぶ。名前を呼ばれたシャルは、見るからに元気が無くなる。
「ごめん。王都では、自由に動き回れないんだ」
「そうなんだ。王都だとダメな理由があるの?」
「騒ぎになってしまうからね。他の街なら姿を見たことがない人の方が多いから、動き回ることも出来るんだけど」
メアリーさんが、そう説明してくれた。
「なるほどね。じゃあ、仕方ないよ」
「せめて、名物とか名所を教えておくね!」
「ありがとう」
シャルは、王都の名物や名所を沢山教えてくれた。話しているシャルは、すごく楽しそうなので、今から王都を回るのが楽しみになってくる。
「そろそろ、私はお暇するね」
部屋に備え付けられている時計を見て、メアリーさんがそう言った。
「もうこんな時間、私も戻らないと」
「楽しい時間は、早く流れていくね」
シャルは少し寂しそうにそう言った。
「そうだね。あっ! リリさんとミリアにも、挨拶に行かないと」
「では、私がお供しましょう」
シルヴィアさんが送ってくれるみたいだ。
「お願いね、シルヴィア」
「はい、畏まりました」
「そうだ。シルヴィアが、王都案内について行けば良いんじゃない?」
そこで、メアリーさんがそう提案した。
「そうだ。シルヴィアなら、普通に外に出れるもんね。シルヴィア、お願い出来る?」
「ルナ様がよろしければ」
「はい! お願いします!」
シルヴィアさんと出かけられるかもしれないということもあって、テンションが上がる。
「では、リリウムの家に向かいながら話しましょうか」
「はい! じゃあ、シャル、またね。私も自由に城を歩いて良いみたいだから、すぐ会いに行くよ!」
「うん! 楽しみにしてる!」
シャルと手を振って別れようとしたら、シャルが飛びついてきた。しばらく会えてなかったし、感極まって抱きついてきてもおかしくないかな。シャルを受け止めて、こちらからも抱きしめる。
「じゃあ、またね」
「うん」
シャルと別れて、シルヴィアさんと一緒に歩いていた。メアリーさんは、シャルの部屋を出たところで別れている。
「王都の観光ですが、いつ頃が都合が良いですか?」
「う~ん、明日は、多分ソルと会うことになるので、明後日が良いです」
まだ春休みなので、連日ログインも出来る。
「分かりました。では、明後日の昼頃に城門で待っていますね」
「はい。分かりました。シルヴィアさんは、王都は長いんですか?」
「そうですね。五年程前に、騎士団に所属してからですね」
「えっ!? シルヴィアさんって、今、何歳なんですか?」
失礼かもと思いつつ、気になってしまったので訊いてみた。
「今は、二十一ですね。十六で騎士団長になって、二年前から姫様に仕えています」
「じゃあ、騎士団にいたのは、三年間だけなんですか?」
「いえ、実際には十四で騎士団入りしたので、五年間程ですね。そこで、様々な功績を残したおかげで、最強の騎士などと呼ばれるようになりました」
確かに、五年で数々の功績を残したったってなったら、最強って呼ばれても不思議じゃないかも。そもそも、シルヴィアさんの戦いを見てるから、功績がなくても最強だと思っただろうけど。
「へぇ~、そうだったんですね。シルヴィアさんの強さなら納得です」
「ルナさんも、すぐに騎士団クラスの強さを得られると思いますよ」
「そうなれたら、良いですね。でも、私の力は、まだまだです。いつも正面突破より、せこい手ばかりを使ってますから」
ソルやシエルがいるときは、正面突破でも何とかやっていけるけど、一人の時とかは、不意打ちとかを主流にしている。銃という利点を一番に発揮出来るのは、そういった不意打ちだと考えているからだ。
「ルナさん」
「はい?」
シルヴィアさんは、真面目な顔で名前を呼んだ。
「良いですか? どんな事があっても、正々堂々なんて考えなくて良いです。ただ、生きることを考えて、自分の出来る最大限の戦法で戦ってください。戦場で、正々堂々などと考えていれば、その隙を突かれてやられてしまいます。あなた自身が生き残るためにも、いいですね?」
シルヴィアさんは、そう言うと、私の頭を撫でた。シルヴィアさんは、私を慰めるためにこう言っているのではないことが分かる。ただ、私の身を案じているんだ。
「はい。ありがとうございます!」
「どういたしまして。もう少しでリリウムの家ですよ」
「あそこを右折した先ですよね?」
「はい。合っています。良く覚えておいでですね」
シルヴィアさんに褒められて少し嬉しくなる。そのまま、歩き続けて、リリさんの家の前に着く。
「師匠!?」
ちょうど家の入口から出てきたリリさんが驚いていた。そして、すぐに門に駆け寄る。
「リリウム、貴方は、私が現れたら毎回のように驚きますね。そんなに私が怖いですか?」
シルヴィアさんがニコッと笑ってそう言った。シルヴィアさんお得意の怖い笑顔だ。
「い、いえ! 師匠が来ると思っていなかっただけなので……」
「そうですか。まぁ、良いでしょう。では、私は、ここで失礼しますね。また、明後日に」
「はい。送っていただきありがとうございます」
私は、シルヴィアさんと手を振って別れた。
「陛下とのお話もシャルロッテ様とのお話も終わったんですね」
「はい。今日は、もう向こうに戻ろうと思うので、一応挨拶をしに来ました」
「なるほど。では、ミリアさんを呼んできますね」
リリさんは、家まで駆けていき、すぐにミリアを連れて出てきた。ちょうど、すぐそこにいたのかな。
「ルナさん、もう帰ってしまわれるのですね」
「うん。時間が時間だからね。また、今度ね。リリさんの家に来れば、また会えるんですよね?」
「ええ、うちに来れば、会うことは出来ます。勉強の途中でなければですが」
「じゃあ、また来るね」
「はい。あの、色々とありがとうございました!」
いきなりミリアはそう言って頭を下げた。何だろう。報告の前に手を握ったこととかかな。
「ううん。私がやりたくてやっただけだから。じゃあ、またね!」
私はミリアとリリさんに手を振って噴水広場へと向かった。その道中、ウィンドウが勝手に開いた。
『イベント告知
五日後、新しいイベントを開催します。内容は、集団戦。最大六人パーティーでの、戦いになります。詳しい内容は、当日に知らせます。それまでに、パーティーを組み、当日の十三時にユートリア噴水広場までお集まりください』
新しいイベントの告知だった。今回もPVP戦みたい。しかも、パーティー戦だから、前とは勝手が違うね。
(新しいイベントかぁ。ソルとシエルと話し合った方がよさそうだね)
そう思いつつ、噴水広場でログアウトした。
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