第59話 報告!!
城の中に入る前に、城門にて持ち物検査が行われた。黒闇天や吉祥天、ハープーンガン、黒影は、既にアイテム欄に入れてあるので、没収されることはない。守衛の人も、さすがにアイテム欄の中まで出せとは言わなかった。そもそも、私が異界人である事を分かっていないのかもしれない。まぁ、武器とかが無くても、私には体術があるから問題はない。
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ルナ[狩人]:『銃術Lv38』『銃弾精製Lv39』『リロード術LV36』『体術Lv28』『暗視Lv22』『潜伏Lv36』『消音Lv21』『聞き耳Lv31』『速度上昇Lv32』『防御上昇Lv20』『器用さ上昇Lv29』『防御術Lv34』『回避術Lv35』『軽業Lv37』『急所攻撃Lv35』『防御貫通Lv20』『集中Lv40』『気配感知Lv5』『弱点察知Lv18』『潜水Lv11』『泳ぎLv11』『登山Lv18』『痛覚耐性Lv28』『気絶耐性Lv9』『言語学LV31』
EXスキル:『解体術Lv28』『採掘Lv15』『古代言語学(海洋言語)Lv19』
職業控え:[冒険者]
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潜水艇の材料集めやアトランティスでの戦闘で、スキルが伸びている。体術はあまり使ってないから、それほどでもないけど、持っているのと持っていないのでは、かなりの差があると言えるはず。
それと、服装についても、少しだけジロっと見られたけど、得に何か言われることは無かった。見た目だけで言えば軍服みたいなものだし、ミリアのお付きの人だとでも思われたのかな。
「こちらです。付いてきてください」
持ち物検査を終えた後、リリさんがそのまま案内を続けてくれる。王城の玄関口は、とても広かった。豪華な柱が十メートル程上の天井を支えている。さらに、上階へと続く階段が弧を描いて左右対称に存在している。その見た目は、まさに創作の中の城って感じだ。
ジッと観察しているわけにもいかないので、リリさんに遅れずについていく。横を歩いているミリアの顔をちらっと見てみると、パッと見て分かるくらいに青ざめていた。そりゃ、王様がいる城の中を歩いているって思ったら、緊張するよね。
城の廊下でお喋りするわけにもいかないから、取りあえず、ミリアの手を握ってあげる。手を握ると、安心感を得られるとか何とかを、テレビか何かで聞いた気がするからだ。すごく曖昧な情報だけど、手を握った途端、ミリアの顔色が少しだけ戻ったから、成功だったはず。
ミリアがニコッと微笑む。たぶん、お礼を言ってきているんだと思う。だから、私も微笑み返して返事をした。私とミリアは、リリさんが案内してくれている間、ずっと手を繋いだままで歩き続けた。
「この扉の向こうに既に、大臣の方々がお待ちになっています。ここからは、私も迂闊に言葉を発する事が出来ません。お二人でどうにかしてもらうしかありません。よろしいですね?」
「分かりました」
「が、頑張ります」
「では、行きます」
リリさんが扉を開ける。私とミリアの手が離れる。私とミリアは、短く息を吸うと、部屋の中に入っていく。
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「よく来たのぉ。ほれ、そこに座りなさい」
出迎えてくれたのは、白髪と白髭を蓄えた好々爺のような人だった。というか、そのおじいさんしかいない。この国の大臣は一人だけなのかな?
「へ、陛下!?」
そう思っていたら、リリさんがそう言ってから、膝を突いて頭を下げた。ミリアも慌てたように膝を突く。これは、私もそうしないといけないやつだと思って、同じように膝を突いた。
「これこれ、そこに座りなさいと言ったじゃろう。リリウムも面をあげい」
「はっ!」
リリさんはそう言って立ち上がった。それに習って、私とミリアも立ち上がる。
「リリウムには、申し訳ないが、そこで立っていてくれるかのう?」
「畏まりました」
「二人は、そこに座りなさい」
「「は、はい!」」
私とミリアは慌てて椅子に座る。というか、このおじいちゃん、国王様なの!? 何で、大臣さんじゃなくて、国王様がここにいるの!?
「あの……」
「なんじゃ?」
私は意を決して、国王に話しかける。
「何故国王様が、ここにいらっしゃるのですか?」
「ふむ。その前に、自己紹介をしておかないといかないのぉ。儂が、ユートピア王国国王ウィレム・ファラ・ユートピアじゃ。儂が、ここにいるのは、直接報告を聞きたかったからじゃ」
「そうなんですか?」
そう言ってから、国王様と話していることに気が付いた。思いっきり不敬な感じになってる気がする。
「ほっほっほっほ、あまり気にしなくても大丈夫じゃよ。お主の事は、娘から聞いておるからの」
「シャルから?」
「そうじゃよ。儂の事は、国王というよりも友人の父親だと思ってくれればよい」
「えっ、あっ、はい。分かりました」
私が少し萎縮してしまった事に気が付いたのか、国王様からそんな事を言われた。何だろう、こういう感じはシャルに似ている気がする。おかげで、緊張が解れた。
「それで、報告とはアトランティスの事じゃったな?」
「は、はい!」
ミリアは、まだ緊張しているみたいだ。この国の住人だし、仕方のないことだと思う。
「え、えっと、実は、私はアトランティスの巫女なんです」
「うむ。聞いておるよ」
「なので、アトランティスを鎮めようと、ルナさん、ソルさん、シエルさんと一緒にアトランティスに向かいました。その結果、アトランティスを崩壊させてしまいました」
「アトランティスを停止ではなく、崩壊させたと?」
「は、はい」
アトランティスについての話が始まった途端、国王様の雰囲気が変わった。好々爺から、厳格な国王様という感じだ。
「ふむ、それは、ミリアが意図して起こした崩壊ということかのう?」
「いえ、何代も前の巫女が、私に憑依した際に仕組んだことです。私がしたことは、停止させる命令をアトランティスにしただけです」
「なるほどのう」
国王様は、そう言って髭を弄り出す。考えるときの癖なのかもしれない。ミリアの顔が少しずつ青くなっていく。何かをやらかしたと思っているのかもしれない。
「ん? ああ、そんなに気に止めんでもいいんじゃよ。崩壊したものは仕方ないからのう。それに、そもそもアトランティスは取り壊す予定であったからのう」
「「「!?」」」
これには、リリさんも驚いていた。リリさんも聞いていないことだったんだと思う。
「古代兵器は、基本的に取り壊す方針にしておるのじゃよ。これは、国の上層部しか知らないことじゃから、内密にのう。話してしまえば、暗殺せざる終えないからのう」
国王様が、さりげなく怖いことを言い出した。てか、国家機密みたいな事を、さらりと言わないで欲しい。これって、絶対にソル達にも話せないことじゃん!
「ふむ。ルナは、アトランティスの能力については、どの程度知っておるのかのう?」
「えっと、ミリアから話を聞いて、ほとんど全部知っています。一緒に、アトランティスに向かった私の友人も同じです」
「なら、その友人も含めて、アトランティスの能力についての一切の口外を禁ずる。伝えてもらってもいいかのう?」
「はい。分かりました。でも、崩壊したなら、口外を禁ずる必要はあるんですか?」
少し気になったので、国王様に訊いてみた。
「アトランティスの能力を知っておるということは、古代兵器の危険性も分かっておるということじゃな?」
「他の古代兵器は知らないので分かりませんが、アトランティスが世界を滅ぼすくらいに危険だということは分かります」
「うむ。他の古代兵器も似たり寄ったりじゃ。世界を滅ぼすもの、国を滅ぼすもの、環境を破壊するもの、様々なものがある。アトランティスが崩壊したと言ったのう?」
「はい」
「じゃが、その根幹である技術自体は残っておる可能性がある。もう一度作られるわけにもいかんのじゃ」
国王様の言うことは当たっていると思う。アトランティスの崩壊は、完全になくなるというよりも、どんどんと割れていくような印象を受けた。つまり、アトランティスの根幹のシステムが残ったパーツがそのままある可能性もあるんだ。それらを回収されたら、アトランティスを再建されて、再び世界の危機になりかねない。
「なるほど、分かりました」
「うむ。報告は以上じゃな? リリウム悪いのじゃが」
国王様がその後を言おうとしたその瞬間、背後の扉が勢いよく開かれる。
「失礼します!」
「シャル!?」
いきなり部屋に入ってきたのは、シャルだった。
「シャルロッテ、慎みを覚えるように言っておるじゃろう……」
「父上が、ルナに会っていると聞いて来たんです! それに、慎みは大分覚えました!」
多分、私と国王様の心の中は、『どの口が言っているんだ』で一致していたと思う。慎みを覚えた人は、多分ノックしてから入ると思うよ。国王様から新たなる苦言が呈されるかと思ったけど、そうはならなかった
「ひゃっ!」
シャルの身体が急に持ち上げられる。持ち上げている人は、いつの間にか、部屋の中に現れたシルヴィアさんだった。多分、ものすごい速さで入ってきたんだと思う。
「大変失礼致しました」
シルヴィアさんは、ただ一言そう言って、部屋から出て行った。
「シルヴィア!? は~な~し~て~!」
「地獄の説教と公務、どちらがいいですか?」
出て行く直前、そんな話が聞こえた。ちなみに、シルヴィアさんの言葉の後、シャルは一気に大人しくなった。
「すまないんじゃが、後で、執務室行って貰えるかのう?」
「はい。分かりました。私もシャルと話したいので」
「すまんのう」
国王様は本当に申し訳なさそうにしていた。後で、私からも説教しておこう。私は、そう心に決めた。
「リリウム、改めてすまないんじゃが、ルナと二人にしてくれるかのう?」
「畏まりました。ミリアさん、私達は先に家に戻りましょう」
「分かりました。失礼します」
「うむ」
そう言って、リリさんとミリアが部屋から出て行った。そして、国王様と私の二人きりとなってしまった。
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