第44話 鉱石掘り!!

 巨大化け蟹を倒した私達は、素材を回収してアトランティス港に帰ってきた。


「これって解体するの?」

「いや、メモでは、そのまま持って来いって注釈されてるから、そのままを持っていけば良いと思う」

「じゃあ、この後は、鉱石を探しに行くって事で良いの?」


 メモを見ながら説明すると、ソルが首を傾げて訊いてきた。


「うん。一度、ユートリアに行って、クエストを受けてから、シャングリラに向かうよ。ついでにお金稼ぎをしたいからね」


 私達は、ユートリアに戻って、ギルドでシズクさんにクエストを受注させて貰った。その後、すぐにシャングリラの採掘場に来た。


「おう、この前の嬢ちゃんじゃねえか」

「あっ! こんにちは。この前はありがとうございました」


 前来たときに、入り口に立っていた炭鉱夫の人が、また入り口に立っていた。この人は年中無休で働いているのかな。


「またお願いします。今度は、三人一緒で」

「おう。報酬はどうする?」

「この前と同じ鉱石を持ち帰りで」

「じゃあ、その他の鉱石で勘定だな。了解した。気を付けて行けよ」

「はい」


 炭鉱夫からツルハシと荷車を貰って洞窟に入っていく。


「ルナって本当にすごいよね。普通、あんな強面の人と普通に喋れる?」

「ルナちゃんって人間たらしみたいなところがあるからね。どんな人とも仲良くなれるし」

「そんな事ないよ」


 実際、ついこの間、シャルの部下の人と揉めたしね。


「ルナの人間たらしの部分が、ゲームに反映されて、NPCの皆さんと仲良くなってるのかもね」

「ルナちゃんの知り合いって女性しかいないから、どちらかというと女たらしかもね」


 何か好き勝手言われている気がする。


「NPCの知り合いって、皆もいるでしょ?」

「私は裁縫屋おばあちゃんぐらいだよ。ルナみたいに沢山はいない」

「私は、ルナちゃん関連での知り合いしかいないかな」

「そもそも、この世界のお姫様と知り合いになっている時点で色々おかしいでしょ」


 シエルのツッコみに何も返せない。シャルと知り合ったのは偶々だけど、仲良くなれるかは、かなり微妙だったんじゃないかと今だから思う。シャルに気に入られる必要があるんだもんね。


「シャルちゃんがフランクな性格だって事が要因なのかな?」

「だとしても、普通お付きの人が許さないよね」

「うん。めっちゃ、警戒されたよ」

「そういえば、言ってたね。シルヴィアさんが殺していなかったら、私が殺してたのに」


 ソルの恨みは強かった。私自身、もうあまり気にしていないんだけどね。


「着いた。ここで掘るよ」


 この前と同じ場所になんとか来ることが出来た。そこには、ランタンや梁が張られていた。あの後、すぐに補強しておいてくれたみたい。そこを掘り進めていく。そこまで広いところじゃないから、三人並んで掘るのは無理だから、二人で前と同じ場所を掘って、もう一人は、別方向を掘っていく。


「これ……意外と……辛いね……」


 シエルは息絶え絶えになりながら、ツルハシを振っていた。


「へ? そう?」


 対してソルは、軽々ツルハシを振っているので、あまり辛そうに見えない。


「何で……私だけ……」

「ステータス補正がないからじゃない? シエルのスキル的に力のパラメーターが上がるとは思えないし」

「そう……いう……こと……?」


 シエルは、そういうと、地面にお尻から倒れていった。


「もう無理! 休憩!」


 シエルが休憩に入った。掘り始めて五分という早さでの休憩に思わず苦笑いになる。


「プティを使おうにも、この天井の低さじゃ、うまく動けないだろうし。ガーディは、ツルハシを使えない。私がやるしかないよね」

「採掘のスキルは?」

「私は、まだ取れてないよ」

「私は、今さっき手に入れたよ」


 ソルは、採掘のスキルを手に入れて、さっきよりもすいすいと採掘を行っていた。その前から、結構すいすい採掘をしていたけどね。スキル補正で上がっているステータスが、筋力寄りになっているのかな? 私は、どちらかというと速度とか器用さの方に振られている感じだし。


「私もスキルを手に入れたら変わるかな?」

「多分、ある程度の補正が掛かるから少し楽になるとは思うよ」

「スキルが大きく影響するゲームだって知ってたけど、ここまでとは思わなかったよ」


 スキルによる補正は結構大きいものがある。それこそ、スキルに完全に合っている人は、より強く補正を感じるはず。


「まぁ、少しだけツルハシが軽くなるくらいだと思うけどね」

「私に採掘の才能はないということだね……」

「私としては、ソルに才能があったことに驚いているけどね」


 少し話していた私達をよそに、ソルがどんどんと掘り進めていた。スキルを獲得して、より効率的になった結果だと思うけど、それにしては進みすぎ……


「ソル、そこまでにして、こっちを掘ってよ。やり過ぎると崩落するかもしれないよ」

「分かった~!」


 ソルはキラキラした笑顔で振り返った。よっぽど、採掘が楽しくなったみたい。


「私も頑張んないと」

「私はもう少し休憩してから再開するよ」


 それから、三時間くらい掛けて鉱石を掘りまくった。主に、ソルが……


「嬢ちゃん達すげえな。女性でここまで掘った奴はいねぇぞ……」


 炭鉱夫の人も驚いていた。いや、どちらかというと軽く引いていた。


「おっ! かなりレアな鉱石も混じっているな。持って帰るか?」

「何の鉱石なんですか?」

黒鉄こくてつっていう鉱石だ。鉄よりも硬く、しなやかさも兼ね備えている。結構、使い勝手がいい鉱石だ。ただ、採掘される頻度が、かなり低くてな。嬢ちゃん達の装備にも使えるんじゃねぇか?」


 炭鉱夫は、黒鉄と呼ぶ黒っぽい鉱石を見せてくれた。


「へぇ~、じゃあ、それも報酬に加えて下さい」

「おう、それと、こっちもレアなものだがどうする?」


 炭鉱夫が次に見せてくれたのは、青みがかった鉱石だった。


「爆雷鉱石といってな。使い方によっては、水中で爆発を起こすことも出来るらしいぞ」

「じゃあ、それも下さい」


 即決。水中で爆発を起こすことが出来るなら、水中で銃弾を撃ち出すことが出来る可能性がある。これはアーニャさんに相談しなきゃだけどね。


「その他の奴は大丈夫か?」

「他のはこの前の奴と同じものがほとんどですよね。じゃあ、大丈夫です」

「んじゃ、これくらいだな。この前と同じように、これを持っていってくれ」


 炭鉱夫が紙を手渡してくる。それを、この前と同じく、ギルドに提出すれば報酬が貰えるということだ。


「じゃあ、行こうか」


 私達は、ユートリアに戻り、ギルドに向かった。


「シズクさ~ん、精算お願いします!」

「は~い。先程の鉱石掘りのものですね。少しお待ち下さい」


 シズクさんは、紙に書かれているものを見てから、ギルドの裏に歩いていった。


「お待たせしました。こちらが報酬になります」

「ありがとうございます」


 私達の報酬は、全部で二〇万ゴールド。これでも、潜水艇の料金には及ばない。


「もっと稼がないと」

「一応、報酬が良い依頼を集めてはいますけど、ご覧になりますか?」

「う~ん、それは、また今度でお願いします」

「分かりました。では、またお越しください」


 シズクさんに手を振って別れて、私達は噴水広場のベンチで休んでいた。


「お金足りそう?」

「全然! 今、私が持っているだけでも、五〇万くらいだし」

「私もルナちゃんと同じくらいだね」

「う~ん、私は三〇万くらいだから、あと五倍くらい必要だね」


 素材が集まった今、最大の壁は、資金集めになった。五〇〇万の資金を集めないと、潜水艇は造れない。


「明日、私はお昼にログイン出来ないんだ」

「私も予定があって無理かな」


 ソルとシエルは明日は、ログイン出来ないみたい。


「じゃあ、これから一週間くらい、別行動で資金集めにしようか。各々が出来うる限りで集める感じ」

「そうしようか」

「私もそれが良いと思う」


 最後の資金集めは、それぞれで別れて集めてくることにした。その後、私達は解散した。


 ────────────────────────


 翌日の昼、お母さん達が帰ってきた。本当は、明日の予定だったんだけど、仕事が早めに終わったらしい。


「朔夜~~!!」


 いきなり帰ってきて驚いた私を、お母さんが勢いよく抱きしめる。


「ごめんね! 卒業式に行けなくて!」

「いや、仕事なら仕方ないでしょ。私だっていつまでも子供じゃないんだから、そのくらい理解しているよ」

「いつの間に、こんなに可愛げがなくなっちゃったの?」


 お母さんは抱きしめながら、失礼なことを言ってきた。


「お父さんもいるんだが……」


 お母さんの後ろでケーキの箱を持ったお父さんがしょんぼりとして立っていた。


「おかえり、お父さん。お昼は?」

「いや、食べてきたから大丈夫だ。すまないが、夜まで寝させてくれ」

「そりゃ疲れているよね。おやすみ」

「お母さんも一眠りしてくるわね」


 お母さんとお父さんは、部屋に戻って眠りについた。


「さて、お昼ご飯は食べたし、ログインしてこよ」


 その日は、シズクさんから紹介して貰った割の良いクエストを何件かこなして、お金を稼ぎ、夜はお母さんとお父さんに卒業祝いをして貰った。そして、ソル達と別行動を始めてから三日くらいしたところで、一度ミリアに会いに行くことにした。

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