第40話 水着を買いに行こう!!
お昼ご飯を食べた私は、すぐにユートピア・ワールドに戻ってきた。
「ちょっと遅くなっちゃった。二人とも待ってるかもしれないし、急がなきゃ」
お昼ご飯を食べていたら、時間がギリギリになってしまった。私はシャングリラからアトランティス港に転移する。アトランティス港の噴水広場に着いた私は、すぐに周りを見回す。すると、ソルとシエルが、並んでベンチに腰を掛けているのを見つけた。
「ごめん! 遅れた!」
「全然待ってないから大丈夫だよ」
五分くらい遅れたけど、二人とも全く気にしていなかった。
「それよりも、ソルが水着を売っている場所を見つけたんだって。早速、買いに行こ!」
「すごい可愛いのがいっぱいあったんだ! ルナちゃんに似合いそうな奴もあったよ!」
「分かった。それと、二人に話しておきたいことがあるから、水着買ったら街の外に向かおう」
二人は少しだけ首を傾げたけど、すぐに頷いた。あまり、他のプレイヤーに知られない方が良いのかもしれないから、なるべく街から離れた場所で話さないと。気にしすぎかもしれないけどね。
「あっ! そういえば、とうとう言語学のスキルを手に入れたよ!」
シエルは、私に向かってピースしながらそう言った。
「へぇ~、ようやく手に入れられたんだ。良かったじゃん。地味なスキルだけど、便利だもんね」
「本当に、苦労したよ。読めない文字を読もうとじっと見てないといけないんだもん」
シエルは、かなり苦労して言語学を手に入れたみたい。やっぱり、昨日の本は本当の事みたいだ。
「確かに、シエルちゃんはそうかもしれないね。そんな事より、早く水着を買いに行こう!」
ソルは私とシエルの手を掴んで、引っ張って行く。私とシエルは、ソルに引っ張られながら、互いに顔を見合わせて、思わず笑ってしまう。
────────────────────────
ソルの案内で水着屋に入ると、原色やパステルカラーの水着が所狭しと並んでいた。
「う~ん、少し派手なのが多いかな?」
私は、入り口付近にある水着を見てそう言った。そこにあるのは、原色系の水着なのだが、なんというか……布面積が異常に少ない。
「店の入り口だから、それなりに見栄えの良い水着を並べているんだよ。奥の方はおとなしめのデザインが多いから、そっちに行こう」
ソルについて行くと、布面積が大きい水着が増え始めた。
「う~ん、どれにしようかな?」
「意外と迷うね。この身体に合うものを探さないとだし」
「ほらほら! これとかどう? こっちはシエルちゃんに合うんじゃない?」
ソルはノリノリで、色々な水着を勧めてくる。
「ええ……黒とかの方が好きかな」
「黒? ルナちゃんって、黒とか白が好きだよね」
「確かに、今も黒ずくめだし」
ソルとシエルは、私の今の格好を見てそう言った。確かに、黒とかは好きだけど、今の服とかは自分で選んだものじゃないんだよね。
「別に良いでしょ? 私はこの水着にする!」
「じゃあ、私はこれにしよう」
「それじゃあ、私はこれ」
私達はそれぞれ自分の水着を買って、店の外に出た。
「そういえば、これってどこで着替えるの?」
「昨日、お店の人に聞いたけど、ビーチに更衣室があるんだって。そこで着替えれば良いらしいよ」
「そうなんだ。じゃあ、ビーチに行こう。ルナも何か話があるんだよね?」
「うん、結構重要な事だから、周りに人がいないところが良いんだ」
私達は、ビーチを目指して、北東に向かった。
「うわぁ、すごく綺麗!!」
「確かに、近くの海は、こんな綺麗じゃないよね」
「南国感あるよね。あそこが更衣室じゃない?」
「本当だ。早速着替えよ」
更衣室は意外と広かった。私達三人が中に入っても、後、何十人も入る余裕がある。もちろん、男女別だった。
「わあああ……二人とも似合ってる!」
ソルが大興奮していた。両手で口を覆って、何故か涙目になっている。
「ソルも似合ってるよ。もちろんシエルもね」
「ありがとう」
私は、黒いビキニと黒に白い花柄がついたパレオを腰に巻いている。ソルは、白いワンピース型の水着を着ている。見た感じでは、水着という感じはしない。シエルは、水色のビキニにショートパンツを履いている。
「さて、丁度いいから、更衣室の中で話しちゃうね」
私は昨日知ったスキルについての話をする。
「それって本当のことなの?」
シエルが真剣な顔で訊いてきた。
「うん。シエルの話を聞いて確信したよ。シエルは、国語と英語が苦手でしょ? 私とソルは、どちらかと言えば得意な方だから、すんなり覚えたけど、シエルは覚えるのに苦労したという事は、この話は本当の事だって事にならない?」
「なんというか、釈然としない」
シエルは、苦い顔でそう言った。
「じゃあ、私達の初期スキルって、才能によって決まってるのかな?」
ソルがそう言った瞬間、私とシエルはきょとんとしてしまった。ソルは、部活で剣道をしているから刀術を持っていても不思議ではないけど、私とシエルのスキルは、銃術と人形術だ。才能と言われてもピンとこない。
「まぁ、それはランダムなんじゃないかな?」
「うん。私もそうだと思う」
取りあえず、私達はそう返すことしか出来なかった。前も思ったけど、銃の才能があるって言われても複雑な気持ちになるし。
「じゃあ、同じ事をしてもスキルを得られるかどうかは分からないって事なんだ」
「絶対に貰えないわけじゃないと思うけどね。それに、スキル無しでも出来る人は出来るらしいしね」
このことは、この前のロッククライミングで検証済みだ。私は、登るのに時間が掛かったけど、ソルとシエルは、スムーズに登っていた。
「プレイヤースキルと才能がものをいうゲームって事なのかな?」
「才能の部分がどうやって判断しているかは分からないけどね」
「何にしても要検証って所かな」
私は考察し合う二人をよそにこの話題を締めくくる。このまま、話し続けると、夜まで話しそうだったからだ。
「じゃあ、海の中に海藻を採りに行こう。マイルズさんのメモによると、結構浅瀬にあるらしいから、膝くらいまでの場所で探してみよう。これは、数が必要だから、沢山集めないとね」
「よし! 海水浴だ!!」
「遊ぶぞぉ!!」
私が目的の説明をしたのに、二人は遊ぶ気満々だった。更衣室を飛び出して、海に駆けだしてしまう。
「二人とも素材集めは忘れないでね!!」
二人に私の声が聞こえたかは分からないけど、楽しそうだしいっか。私も二人を追い掛けて海に駆けていった。
「気持ちいい……」
「現実じゃ、まだ冷たいだろうけど、ゲームだから全然平気だね……」
ソルとシエルは、海にぷかぷか浮かんでいた。
「ここら辺の気候は、赤道付近とかに近いのかな」
私も海に身体を浸けていくと、夏の海みたいに冷たすぎない丁度良い感じがした。
「もしかして、水着の効果だったりするのかな?」
私は装備欄から水着の情報を見てみる。でも、水着としての説明しかないので、水着の効果ではなさそう。
「ん? ねぇ、これって件の海藻?」
ぷかぷか浮いていたソルが赤い海藻を掴み上げていた。
「名前は?」
「『酸素海藻』だって」
「うん、それだね。まんまの名称だし。どうやって見つけたの?」
「え? 何か泡出てたから掴み上げたら、海藻だったよ」
ソルは、きょとんとした顔でそう言った。
「モンスターだったら、どうするの……」
私は、苦笑いでそう言った。ちなみに、私は左足にリボルバーを装着している。海でも対応出来るように、この前使った氷結弾を二発装填している。シエルは、背中にプティを背負っている。ただ、ソルだけは何も装備してなかった。刀を差す場所が無いから仕方ないけどね。
「じゃあ、モンスターに気を付けながら海藻を採っていこう」
私達は、海の中にある海藻を採っていく。意外と、モンスターが現れることなく、海藻の採取を終える事が出来た。まぁ、遊んでいたから、完全に夕暮れになってしまったけど。
────────────────────────
海から上がった私達は、更衣室でいつもの服に着替えていた。
「そういえば、この前手に入れたナイフは使わないの?」
私が着替えている所を何故か見ていたソルが訊いてきた。装備していく中でナイフが出てこないからだと思う。
「いや、しまう場所がなくて……あっ! 昨日、アーニャさんに作ってもらえばよかった……後で、行ってこよう」
「アーニャさんって誰?」
私が嘆いていると、シエルが首を傾げて訊いてくる。
「シエルは会ったことなかったっけ? 私とソルがお世話になってる人だよ。この外套やシエルの装備を作ってくれたの」
「へぇ~、生産職のプレイヤーって、こんなすごいのも作れるんだ」
シエルは少し勘違いしていた。
「アーニャさんは、NPCの人だよ」
「え!? そうなの!?」
シエルはすごい驚いていた。こういう自由度の高いゲームでは、NPC産よりもプレイヤーメイドの装備の方が強いのは、ある意味常識だ。
「腕のいい人でね。色々作ってくれるんだ。その分、お金が必要だけどね」
「まぁ、それはさすがにね。でも、会ってみたいかも」
「じゃあ、明日は、ヘルメスの館に寄ってから蟹退治に行こうか」
「それが良いかもね。シエルに紹介してあげたいし」
明日の予定も立てたところで、その日は解散となった。
「そういえば、読んだ本がシャングリラのやつって言いそびれちゃった。まぁ、いいか。ヘルメスの館に行こう」
私は、今日の内にナイフを収納するベルトを注文しておくためだ。
「こんばんは、アーニャさんいますか?」
「ルナちゃん! いらっしゃい、奥にいるから呼んでくるね」
「うん。ありがとう、アイナちゃん」
私は、いつもの席に座ってアーニャさんを待つ。
「いらっしゃい、ルナちゃん。今日はどうしたのかしら?」
「実は昨日の探索で、ナイフを見つけたんですが、収納する場所がなくて」
「ナイフ? 少し見せて貰っていいかしら?」
「はい」
私は昨日のナイフをアーニャさんに渡す。
「あら? これって、鑑定されてないのね」
「?」
私はよく分からず頭にはてなを浮かべる。
「名前がナイフしかないでしょ? こういうものは、本当にその名前か、あるいは鑑定されていないものかになるのよ。私が見た感じは、このナイフは後者になるわね。明日まで待ってくれる? 鞘作りと合わせて、鑑定もしてあげるわ」
「本当ですか? ありがとうございます!」
私は、アーニャさんにお礼を言って立ち上がる。
「あれ? 今日は飲んでいかないの?」
アイナちゃんがお茶の準備をしようとして止まっていた。
「ごめんね。夜に予定があるんだ。また今度頂くね」
「分かった。待ってるね」
私とアイナちゃんは、手を振って別れた。そして、夜のメアリーさんとの勉強会に備えて、夜ご飯を食べにログアウトした。
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