第2章 アトランティス
第32話 東へ!!
シャルとのデートの翌日、私は卒業式に出席した。平日だったけど、卒業式に出席している保護者の人達は多かった。でも、私の両親は出席出来なかった。忙しいから仕方が無いと思う。後日、家でお祝いしてくれるって言ってたから、悲しいという気持ちはない。
卒業式は滞りなく終った。今は、友達同士で集まって話し合っている最中だ。
「さくちゃんは、これからどうするの?」
「う~ん、家に帰って、ご飯を食べてからログインするかな」
「あっ、じゃあ、一緒に冒険しない?」
私と日向が話していると、大空が話に入ってきた。
「一緒に?」
「うん。南のエリア解放はしてるんでしょ? 東のエリアの開放しない?」
「東か、行ったこと無いかも」
「丁度いいじゃん! 日向も一緒に行こうよ!」
「いいよ!」
日向は二つ返事で承諾する。
「朔夜もいいでしょ?」
「うん。いいよ」
日向と大空が一緒ならかなり心強い。その後、他の友達ともひとしきり話してから、自宅に帰ってきた。そもそもうちの学校は進学校なので、中学から大学までほとんどエスカレーター形式だ。ほとんどの友達は、このまま進学するので離ればなれになるということは無い。でも、卒業式ということもあって、いつも以上に話し込んでしまった。
「早く食べて、ログインしよう」
コンビニで買ってきたお弁当を温めてから、食べる。軽くゆすいでからゴミを捨てて、自分の部屋に行く。今日はお母さんとお父さんは帰ってこないから、戸締まりもしっかりしておく。まぁ、そうで無くても戸締まりはしっかりするけど。
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ログインした私は、自分の装備とスキルを確認する。
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ルナ[狩人]:『銃術Lv28』『銃弾精製Lv29』『リロード術LV27』『体術Lv23』『暗視Lv17』『潜伏Lv26』『消音Lv8』『聞き耳Lv23』『速度上昇Lv26』『防御上昇Lv10』『器用さ上昇Lv23』『防御術Lv27』『回避術Lv29』『軽業Lv25』『急所攻撃Lv22』『防御貫通Lv11』『集中Lv31』『弱点察知Lv9』『痛覚耐性Lv22』『気絶耐性Lv9』『言語学LV18』
EXスキル:『解体術Lv20』
職業控え:[冒険者]
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ジークとの戦いで、戦闘系スキルのほとんどが上がっている。ジークには体術で相手をしていたからか、銃術よりも体術の方が上がっている。でも、戦闘スキルは30レベルを超えていない。
「あと少しか……」
多分だけど、今回の戦いで奥義級の技は手に入ると思う。
「さてと、二人はまだ来てないみたいだし、ギルドに行ってこようかな。東のモンスターのクエストがあれば引き受けたいし」
私は二人が来る前に、クエストを引き受けるためギルドに向かった。速度上昇のレベルも上がってるから、移動速度が速くなり、予想よりも早くギルドに着いた。
「シズクさんいますか?」
「はい、いますよ。お久しぶりです、ルナさん」
「そうですね。お久しぶりです」
シズクさんと最後に会ったのは四日前だ。そこまでではないけど、会うのは久しぶりになる。
「今日はどう為されましたか?」
「依頼を受けようかと」
「なるほど。ルナさんは、今はEランクですので、こちらからお選び頂けます。何か受けたい依頼はありますか?」
「東方面のものを」
「わかりました」
シズクさんは、私が受けられるクエストの中で、東方面のものをピックアップしてくれた。
「こちらが東側のモンスター討伐の依頼です」
「見た事の無いモンスターばかり、確か東は湿地帯でしたっけ?」
「はい。最初は南と同じように平原なのですが少し奥に行くと湿地帯になります」
「だから、カエルとかミミズとかが多いんですね」
「そうですね。少し見た目が気持ち悪いですが、大丈夫そうですか?」
シズクさんは私の事を心配しくれた。正直、SAN値が削れそうだけど、頑張らないと。
「大丈夫です。ここら辺を受けていきますね」
「はい。受注しました。それと、こちらを」
シズクさんから一通の手紙を手渡される。その手紙には、『親愛なるルナ様へ』という宛名が書かれていた。誰からのものか分からないので、裏返してみると、そこには『シルヴィアより』と書かれていた。
「!!」
思わずシズクさんの方を見ると、シズクさんは笑顔で頷いた。手紙は封蝋で封をされていて、剥がし方がよく分からず、少し焦っていると、シズクさんがペーパーナイフを貸してくれた。ペーパーナイフで、ゆっくり慎重に開封する。
『ルナ様へ
突然のお手紙失礼します。
街を出るのに挨拶も出来ず申し訳ありません。私とシャルロッテ様は、王都に戻ります。しばらくは王都に滞在するはずですが、シャルロッテ様の今後の行動次第で、王都から離れる可能性もあります。そうなった場合、衛兵隊の待機所か王城の守衛にメッセージを残します。
王都にいる場合は、王城にいることが多いので、王城の守衛に掛け合ってください。シャルロッテ様から頂いています王家の紋章が入った指輪を見せれば、話が早く進むと思われます。
これからのルナ様の健闘を祈ります。ただし、あまり無茶をしないこと。また、亡くなられるとシャルロッテ様も私も悲しいです。生き返るとはいえ、あまり自身の命を軽視しないように。
またお会い出来る日を心待ちにしております。
シルヴィアより 愛を込めて』
手紙はそう締めくくられていた。
「嬉しい事が書かれていましたか?」
シズクさんが手紙を読み終わった私に、そう言った。何でそう思ったのかが分からず、首を傾げる。
「顔に出ていましたよ」
「えっ!?」
私は思わず、顔を押さえる。
「えっと、王都でシャルやシルヴィアさんに会うにはどうしたら良いかというのが書いてありました。それだけです」
「そうなのですか? それにしては、顔が笑っていましたよ」
「うぅ、恥ずかしい……」
「ふふ」
シズクさんは楽しそうに笑う。そんなに笑ってたかな。でも、シルヴィアさんからの手紙で嬉しかったから、笑っていても不思議ではないかも……
「もう! そんなに笑わないでください!」
「ふふふ、ごめんなさい」
「むぅ、じゃあ、私はそろそろ行きますね」
「はい、行ってらっしゃい」
私は、シルヴィアさんからの手紙をアイテム欄に仕舞って、ギルドを出る。シズクさんは、笑顔で私を見送った。
ログインしてから、大体十分から十五分くらい経ったかな。多分、そろそろ二人がログインしてくるはずだけど。
私は、二人がいるであろう噴水広場に向かう。
「あれ? まだ来てない?」
噴水広場には、まだ二人の姿は無かった。
「そこのベンチで座ってようかな」
私が広場の端にあるベンチに向かおうとすると、広場にログイン時に生じる光が現れた。
「あっ! ルナ!」
「ソル!」
ソルがログインした直後、シエルもログインしてきた。
「ルナ! ソル!」
「これで、揃ったね。じゃあ、東門に行こうか」
「そうだね。二人とも武器は大丈夫?」
ソルは、私達の武器の心配をした。私はともかく、シエルの方は、プティをボロボロにされてたし、その心配も当然かな。
「大丈夫、大丈夫。見て、この新品同然のプティを」
シエルはそう言って、背中に背負ったプティを見せる。
「本当だ。アップリケとかもないし、継ぎ接ぎ感もないね」
「可愛い~~!」
私は、綺麗に直されていることに驚いたけど、ソルは、プティの顔を触って悶えている。
「皆準備万端みたいだし、行こう!」
私達は、東門に向かって進んで行った。
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東門から外に出ていくと、南門の外と同じような平原に出た。
「南と変わらないね」
「確かにね。でも、モンスターは少し違うけど」
東門の外のモンスターは、南にいたキラーラビットみたいな毛の生えたモンスターではなく、鱗で覆われた大蜥蜴だった。名前は、リザードっていうみたい。そのままだね。
私は、離れた位置にいるリザードに、銃弾を撃ち込む。頭を撃ち抜かれたリザードは、すぐに絶命した。
「あまり硬くないね」
「まぁ、あのジークに比べたらね」
ソルの言うとおり、ジークと比べていたのかも。そうしたら、そりゃ柔らかいと感じるわけだよね。
「近いのは私とソルが、遠くにいるのはルナが相手をするって形で、行こう」
「分かった」
「遠くの敵は任せて」
私達は、敵との距離で誰が相手をするのかを分担することにした。この分担は意外とうまくいって、湿地帯に着くまで、一度も攻撃を受けるということは無かった。
「ここまでは大丈夫だったね」
「ここからが本番かぁ」
湿地帯の入り口から地面のぬかるみがすごかった。
「ソルは大丈夫? 踏み込みとかしにくいんじゃ無い?」
私がそう訊くと、ソルは、地面を踏んでどのくらい踏ん張りが利くのか確認していた。
「う~ん、少し心配だけど大丈夫そうかな」
「プティはソルのサポートをして、ルナをメインに置いた戦い方にしようかな?」
「そうだね。なるべく私が敵を減らすよ」
「うん、お願い」
私達はゆっくり歩いて先に進んで行く。ゆっくり進まないと、転んでしまう可能性が高い。
「南は見通しの悪い。東は悪路。初心者向けのエリアのはずなのに、結構意地悪な感じだよね」
「同じ地形だとつまらないとかが理由なのかな?」
「あり得そう。ていうか、モンスターの姿が全然見えないけど、どこにいるんだろう?」
湿地帯をゆっくり進んでいるけど、モンスターの姿は一切見えない。私達の耳にも、モンスターの動く音などは全く聞こえない。沼地がポコポコと音を立てているくらいだ。……ポコポコ?
「沼地の中!」
私がそう言った直後に沼地から、カエルが飛び出してきた。瞬時に黒闇天を抜くけど、間に合いそうにない。
「抜刀術『
ソルが刀を抜き放ち、大きな弧を描いてカエルを
「弾力がすごい! 私の刀じゃ斬れなかった!」
「大丈夫!」
私は、フルメタルジャケット弾を空中にいるカエルに向かって撃つ。私の弾は、一瞬だけカエルの皮に抵抗されたけど、そのまま身体を突き抜けていった。カエルは地面に落ちると、そのまま動かなくなった。
「私の弾は通じそうだね。斬撃系の攻撃への抵抗なのかな?」
「そうかも『起きて』」
シエルがプティを巨大化させる。そして、周りの沼地から現れたカエルを叩き潰す。
「打撃も一応効きそうだね」
「体重で押し潰してる感じがするけどね。ソルは、なるべく敵を弾き飛ばして、私がトドメを刺す。シエルは、どんどん叩き潰して」
「「了解」」
私達は、私とプティを中心とした戦い方でモンスターを倒していく。ちなみに、あのカエルの名前は、マッドフロッグっていうらしい。
この後、ミミズ型のモンスターも出てきたけど、プティにあっさり叩き潰されていた。ミミズ型のモンスターは、マッドワームという名前だった。
「倒し方を分かっちゃえばなんてこと無いね。ソルは結構苦労しそうだけど」
「そうだね。どうしようか。何か方法があると良いんだけど……」
ソルは、この湿地の戦い方を模索していた。何度かカエルを両断出来てはいたんだけど、口を開いているところで口角を狙わなきゃいけないので、少し難しそう。
それでも、創意工夫をして、戦闘を効率よくこなしていく。そして、私達はこのエリアのボスの下まで辿り着いた。
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