第27話 強敵との戦い!!

 私とソルとシエルは、森の中を抜けて平原を歩いていた。森を抜けるまでに、大体十分程掛かった。


「こっちの方角であってるよね?」


 私は少し不安になったので、ソルとシエルに訊く。


「あってるはずだよ。シエルちゃんはどう思う?」

「私もこっちだと思う。あんな大きな攻撃なら、その跡も残っているんじゃないかな?」


 二人も同じ方向だと言ってくれたので一安心だ。それに、シエルの言うとおり、あの光の柱が攻撃だったのだとしたら、その跡地が残っている可能性は高い。


「今のところ、そんな感じの場所は見付からないね」

「もう少し奥なのかな? でも、それだとしたら、あの攻撃って相当でかくなるよね」


 私がそう言うと、ソルもシエルも圧し黙ってしまった。


「そうしたら、絶対に連発は出来ないはずだよ」


 ソルの考えには同意だ。あんな威力の技が連発出来るとしたら、あれから一回も使われていないのは、おかしいと思う。


「ただ、あれから結構時間が掛かっちゃったから、クールタイムが過ぎちゃっている可能性もあるから、細心の注意を払って進んで行こう」


 私がそう言うと、二人は同時に頷く。私達は、所々にある物陰に潜みながら先を急ぐ。

 それから、約二十分程彷徨っていると、ようやく攻撃の跡地が見える場所に辿り着いた。


「これは……」

「嘘……」

「やばいかも……」


 私達の顔は、かなり引きつっていたと思う。そのくらいすごい光景だった。私達は、高台の上からそれを見ているのだけど、そのおかげで、跡地の全体がよく分かる。


 まず、約八~十メートルくらいのクレーターが出来ていた。そして、その周りの約三メートル程の草木が焼けていた。


「地面が焼けている……」

「というよりも、溶けてるよ」

「光の熱ってことなのかな?」


 光の熱。シエルの考えは当たりだと思う。というより、それ以外考えられない。


「魔法職で確定かな?」


 ここまでの威力の属性攻撃は、魔法職以外考えられない気がする。


「でも、これが私達みたいにユニークスキルを持っている人の仕業だったら? 剣を持ったまま、こんな攻撃を放ってくるかもしれないよ」


 ソルがそう言った。正直、考えから抜けていたからありがたい。


「熱の攻撃って、人形はどのくらい耐えられるの?」


 私は、シエルに訊く。場合によっては、シエルの参戦がなくなるからだ。


「全く耐えられないと思う。火を使う相手と戦った事がないから分からないけど、プティは毛皮だし、無理だと思う」

「プティ?」


 聞き覚えの無い言葉に首を傾げる。


「この子の名前だよ。最初から名前が付いてたの」

「へぇ、私のはただの拳銃だったよ」

「私もただの刀だった」


 というか、シエルの背負ってる熊の人形って初期装備だったんだ。かなりのぶっこわれ武器だよ。


「どうする? シエルはここで別れる? 敵と相性が悪いと思うけど」

「大丈夫! 一応秘策はあるし、足手まといにはならないよ!」


 私の心配は、杞憂だった。シエルは、やる気で満ちあふれている。


「よし! じゃあ、敵を探そう!」


 私がそう言った直後、ここから少し離れたところに再び光の柱が現れた。私達三人は思わず、呆然としてしまう。しかし、すぐに我に返り、顔を合わせる。


「近いね。あの位置で発生したなら、近くに敵がいるはず。あっちの高台に移動しよう」


 私の意見に二人が頷く。私達は、こそこそと移動して、光の柱が現れた場所を見られるであろう高台に移動した。そこからさっきと同じような跡を見つける事が出来た。


「ルナ、ソル、あっち」


 シエルが、指さした方を見ると、金ぴかの鎧と光輝く剣を携えた優男が立っていた。装備だけでなく、髪の色まで金髪なので、全体的に光輝いているように見える。


「ソルみたい……」

「どこが!?」

「髪色」

「あんなに輝いてないよ!」


 髪色だけで思った事をぼそっと呟いたら、ソルから怒られた。一応同じ金髪のはずなのに。


「何というか、勇者みたいだね」


 そんな私達を気にせずにシエルがそう言った。学校でも同じような事はあるから、慣れてるんだと思う。


「そうだね。何というか、物語で出てくる分にはかっこいいとか思うけど、実際に目にすると、あれはないって思うよ」

「分かる」

「私もそう思った」


 ソルとシエルも同じだった。「私勇者です!」ってアピールしてる感が凄まじい。軽く引くレベルだ。


「そんな事よりも、あの鎧の防御力を抜けるかな?」


 あの優男の容姿は置いておいて、攻略するための話し合いをする。


「一応隙間があるみたいだから、そこを狙えば私は大丈夫だと思うよ」

「打撃の防御力は高そうだけど、物理無効でも無い限り、衝撃を突き抜けさせる事は出来ると思う」


 二人の攻撃は通りそうだ。


「ルナちゃんは?」

「私は、あの剥き出しの頭を狙えば大丈夫。でも、問題は相手の反射神経とスキル構成だよね。正面から突っ込めば返り討ちにあう可能性は高いと思う」


 私がそう言うと、二人も少し考え込んだ。二人も私と同様の考えを持っているようだ。


「ルナちゃんは隠れておく方がいいよね。シエルちゃん自身も同じように隠れて、私とプティちゃんが突っ込む形が良いかな?」

「……そうだね。それが良いかもしれない」

「プティを前に置いて、その後ろをソルが追従する形が一番安全だと思うよ」

「よし、それでいこう。でも、もう一つだけ手を付け足そう」


 私達は、優男に攻撃を仕掛けることにする。


 私達が準備を終えた瞬間に、シエルのプティが優男目掛けて突っ込んでいく。


「熊……!?」


 優男が突っ込んで来るプティに面食らう。しかし、すぐに立ち直ると、剣に光を纏わせる。


「元々輝いているのに、更に輝くんだ。でも……」


 プティを撃退しようと、剣を振りかぶる優男。でも、実際に気を付けないと行けないのは、プティではないよ。


「……!!」


 優男が気が付いたときには遅い。上空から夜烏が舞い降りてくる。


「モンスターは出ないはずなんじゃ……!」


 優男は、プティを撃退する前に夜烏を斬り伏せる。


「やっぱり夜じゃないと、本領は発揮出来ないか……でも」

「!!?」


 光輝いていた優男の剣から光が消え失せる。そこに、プティが到着し右腕を振う。優男は剣を盾にして防ぐ。しかし、勢いまでは殺す事が出来ず、少し飛ばされた。そこにソルが飛びかかった。鎧の隙間を狙った一撃は、狙い違わず命中する。


「……浅いか」


 優男はバックステップで後退する。


「一人か?」

「答える必要なんて無いでしょ」


 優男は再び剣に光を纏わせようとする。


「何!?」


 その光は纏う直前で消え去る。黒闇天を通して使った『夜烏』の効果だ。恐らくだけど、あの剣の長所は光を纏う事による攻撃力の上昇と属性の付与だと思う。だからこそ、その光を打ち消し、かつ光を纏う事を妨害している。これがいつまで続くのかは分からないけど、今のうちに攻めていくしかない。


「はぁ!」


 ソルは、優男に対して素早い連撃で攻めていく。優男は、それを何とか見切って防いでいる。素早さ重視の攻撃は、優男にとって厄介なようだった。そして、その中にプティによって鋭く大きな一撃が混ざる。


「くっ!」


 その攻撃も含めて、優男は回避と防御で切り抜けている。


「強い……」


 ここで、私が援護射撃しても良いんだけど、敵が優男一人とは限らないので、少しの間は、観察に徹する事になっている。


「シエル、誰か見える?」

「ううん、私には一人だけに見えるけど……」

「そうだね。そうだと良いんだけど」


 ソル、プティと優男の戦いを見つつ、周りを見回す。


「敵に仲間がいるんだとしたら、そろそろ戦闘に参戦するはずだと思う。様子を見て私もさんせ……シエル! プティでソルを守って!」

「!!」


 シエルは、プティに指示を出してソルを包み込ませる。さっき聞いた事だけど、プティへの指示は口頭ではなくても、頭の中で指令を飛ばす事が出来るみたい。技を使う時は口頭じゃなくちゃいけないみたいだけど。


 そして、プティがソルを守った瞬間、その戦場に大きな氷の玉が降ってくる。優男はすぐにその場から退避する。ソルを抱えたプティは、避難が間に合わない。そのため、ソルを背中で庇う体勢になった。


 押し潰されてしまうソルとプティ。私とシエルは、その光景をその場で動かずに見ていた。やがて、氷の玉が消え去り、地面にめり込んだプティが姿を表す。


 そこに優男が近づく。その後ろの方に、一目で魔法使いと分かるような赤いローブを纏った赤毛の女の子が見える。


「ジーク!! 大丈夫!?」

「ああ! 俺は大丈夫だ。助かった、エラ!」


 敵の二人は合流すると、プティの方に向かっていく。


「これ、モンスター?」

「みたいだな。さっきの女の子が使役していたんじゃないかと思うんだが……」

「このモンスターが消えていないって事は、まだ生きてるのかな」

「それか、俺達みたいに二人で協力しているかだな」


 二人の話し声が私の耳に届いてくる。


「二人だけみたいだね」

「よし! じゃあ、本格的に戦おう! ルナは魔法使いの方をお願い!」

「分かった!」


 私はシエルと別れる。


 ────────────────────────


 ルナが動くと同時に、プティが動き始めた。ガバッと起き上がり、瞬時にジークと呼ばれた優男を殴り飛ばした。


「ぐあっ!」


 そして、プティがいた場所からソルが飛び出て、ジークに追撃をする。


「刀術『繚乱りょうらん』!」

「くっ! 聖鎧技『光膜ルークス・アメット』!」


 ジークの鎧から光の膜が現れ、ジークを包み込む。そこに、ソルの高速五連撃が叩き込まれる。光の膜は、五連撃に耐えこそしたが、ひび割れ砕け散る。


「ギリギリか……」

「どうだろうね」


 思わず呟いたジークにソルが笑いながら告げる。一瞬、怪訝な顔をしたジークは次の瞬間、大きな衝撃に襲われる。


「しまった!」


 衝撃の正体は、プティの一撃だ。ジークの意識がプティに逸れる。そこにソルが飛びかかる。ソルの速い攻撃に意識を向ければ、プティの鋭い一撃が襲う。逆も同じ事。つまり、どちらも意識しなくてはいけない。


「くっ、まずはお前からだ!」


 ジークは、目標をプティに絞り早期決着を目指そうとしている。


「聖剣技『光刃ルークス・ラーミナ』!」


 光の刃がプティに向かって飛んでいく。ルナの『夜烏』で、光を纏えないはずだが、飛ばす事は出来るようだ。

 光の刃は、プティに命中し傷を付ける。


「硬いな……」


 背後からソルが斬りかかる。ジークはすぐにソルに向き直り、剣で防ぐ。


「私を無視するの?」

「出来そうにないな。なら、お前からやるだけだ!」


 ソル、シエル、プティ対ジークの戦いが始まった。

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