第23話 荒れ地の探索!!
PVPイベントに備えるために荒れ地に向かった私は、早速モンスターを狩ることした。幸いなことに、さっきグレート・ベアを倒したパーティーは、荒れ地のフィールドにいなかった。まっすぐシャングリラに向かったのかもしれない。あれから、何人ものプレイヤーがシャングリラに辿り着いたみたいで、情報が出回っていたから。
「素材のこともあるし、フルメタルジャケット弾を使おうかな」
荒れ地のフィールドでは、ほとんどのモンスターが硬い甲殻を有している。そのため倒すには、甲殻を破壊する威力あるいは、甲殻の隙間を狙う正確性が必要になる。私が使用しようとしているのは、貫通力が高い弾だ。この弾で、敵の体内を撃ち抜くことで倒す。
「今いるのは、レッド・スコーピオンとあのアルマジロか。名前は、ローリング・アルマジロ……そのまんまだね」
先に攻撃をしてきたのは、ローリング・アルマジロの方だった。私を見つけた瞬間、こちらを目掛けて転がってきた。
「甲羅の隙間は回転しているから分からないし、取りあえず撃とう」
転がりながらこちらに迫ってくるローリング・アルマジロに対して、引き金を引く。黒闇天から放たれたフルメタルジャケット弾は、ローリング・アルマジロに命中した。しかし、それでもローリング・アルマジロは、止まる事無く私目掛けて転がってきていた。
「やばっ!」
私は横に転がって進路から避ける。すると、ローリング・アルマジロは、私の横を通り過ぎ少しして止まった。それっきり、ローリング・アルマジロが動くことは無かった。
「やった。でも、何処に当たったんだろう?」
私は倒れているローリング・アルマジロの元に向かう。そして、その死体を確認した。
「頭……じゃないね。これは、心臓でもなさそう。ってことは、一撃で倒せる威力になっているって事かな? 強化されたけど、ここまでの威力になっているとは思わなかったなぁ」
今までの黒闇天では、急所にでも当たらない限り、一撃で敵を倒すことは出来なかった。それが今では、フルメタルジャケット弾を使ったとはいえ、一撃で倒せるようになった。凄く嬉しい事だ。
「よし! どんどん倒していこう!」
私は、荒れ地を走り回り、モンスターを倒し続けた。レッド・スコーピオン、ローリング・アルマジロを中心として倒していった。
「結構通用する事が分かったね。じゃあ、あれを倒してみようかな」
私は、少し遠くで歩いている岩の塊を見る。
「どう見てもゴーレムだよね」
初めてここに来たときも見つけてはいたけど、私とソルは戦わずに街に向かったから、これがゴーレムとの初戦となる。
「う~ん、エクスプローラー弾で倒せるかな? 他のゲームとかだったら核とかが剥き出しになっていることもあるのに、完全に岩の塊なんだよね……」
私はゴーレムを倒すために、マガジンを入れ替えてエクスプローラー弾を装填する。
「削れるだけ身体を削ってみようかな」
私はゴーレム背中目掛けて駆け出す。かなり距離が縮んでいるのだが、ゴーレムは振り返りもしない。スキルと防具の能力で私の気配が薄くなっているおかげだと思う。
私は、ゴーレムの腕の付け根に向かって引き金を引く。放たれた銃弾が、ゴーレムの右腕の付け根に命中すると、小さな爆発を起こしゴーレムの右腕を落とすことが出来た。
「よし!」
私が小さく拳を握ったのもつかの間、まるで逆再生のようにゴーレムの右腕が戻っていく。
「へ?」
元通りに戻ったゴーレムは、私の方を振り返る。心なしか無機質であるはずのゴーレムが怒っているように見える。ゴーレムは、まっすぐこちらに向かって走り出した。あっという間に目の前まで来ると拳を振り下ろしてくる。
「危ない!」
横っ飛びで避けると、私がいた場所に小さなクレーターが出来上がっていた。
「威力が高い……これは、まともに受けちゃだめだね」
私は、ひとまずゴーレムの攻撃を避けることに集中した。振り下ろし、掴みかかり、両手を組み合わせての叩きつけなど様々な攻撃をして来た。
「攻撃の一つ一つがエグすぎるね。クレーターがいくつも出来てるし、一発でも受けたらおしまいって感じかな」
何度も攻撃を受けた感じから、絶対にゴーレムの攻撃は受けちゃいけないって判断した。ぺしゃんこになるのは嫌だしね。
「全身くまなく観察してみたけど、弱点らしいのはないみたい。考えられるのは、身体の奥の方にあるってことだね。掘り出すか……」
私はゴーレムの攻撃を掻い潜りつつ、ゴーレムの身体にエクスプローラー弾を撃ち込んでいく。一発撃つ毎に、ゴーレムの身体が削れていき、三発撃ち込むと身体の一部が崩れ落ちた。すると、その中に大きな赤い石が埋め込まれていた。
「核発見!」
私はすぐさま引き金を引いて、核に命中させる。小さな爆発とともに核が砕け散った。そして、ゴーレムを形成していた岩が崩れ落ちる。
「やった!」
私は跳びはねて喜んだ。その数秒後に、人に見られたら恥ずかしいなと思い、ちょっと赤面する。
「さて、この岩って素材になるのかな? 一応集めておこう」
私は、砕け散ったゴーレムの核と身体を集める。
「よし、ここら辺のモンスターは狩れる事が分かったし、荒れ地の奥に向かってみよっと」
荒れ地のフィールドを歩いて行くと、平原と森では考えられないほど多くのモンスターに襲われた。
「もう! これで何回目!? キリが無いんだけど!」
何体目かのレッド・スコーピオンを仕留めて、すぐにローリング・アルマジロを相手取る。一対一で戦う分には大丈夫なんだけど、多対一になった途端、形勢が不利になってしまう。そこで私が取った作戦は……
「ほら! こっちだよ!」
私の声に釣られたローリング・アルマジロが転がってくる。私は転がってくるローリング・アルマジロに背を向けて走り出す。そして、目の前にいるレッド・スコーピオンの攻撃を掻い潜って背後に回る。私をターゲットしていたレッド・スコーピオンは、後ろに回った私を追い掛けようとするが、私を追い掛けて転がってきたローリング・アルマジロに踏み潰された。
意外なことに、ローリング・アルマジロとレッド・スコーピオンがぶつかり合うと、ローリング・アルマジロが勝つのだ。
「回転しているからその分の勢いもプラスされているのかな?」
そんな事を言いつつ、次のターゲットの元に向かう。そう、私が取った作戦というのは、ローリング・アルマジロにモンスターを潰させるというもの。
「ふぅ、多対一はこれで大丈夫だと思ったんだけどな……」
この作戦は途中までは本当にうまくいっていた。そのおかげで荒れ地の半分くらいを探索出来たから……でも、この作戦に穴がある事が判明した。
「無理かもとは思ったけど!」
そう叫びながら、その場を飛び退く。私がいた地点に丸くなったローリング・アルマジロが叩きつけられた。それをした張本人が歩いてきて、再びローリング・アルマジロを掴み上げ、私目掛けて投げつけてくる。
「アルマジロも何でされるがままなの!?」
投げつけられたローリング・アルマジロを避けるために横っ飛びをする。そして、ローリング・アルマジロを投げた張本人……ゴーレムを睨み付ける。ゴーレムは、再びローリング・アルマジロを掴み上げる。
「そのまま潰れろ!」
私はエクスプローラー弾をゴーレムの両肘に撃ち込む。ローリング・アルマジロを支えていた腕が落ち、抱え上げていたローリング・アルマジロが上から降ってくる。
ローリング・アルマジロの突撃を正面から受け止めたゴーレムのだったが、真上から落ちてくるものには耐えきれなかったようでそのまま潰れてしまった。
「よし! でも、もうこの作戦はやめておこう」
砲丸となっていたローリング・アルマジロにトドメを刺す。
「もうちょっと奥に行ってみようかな」
私は、モンスターに気を付けながら先に向かった。屈んで移動していると、モンスター達に気付かれにくい。それを利用して、こそこそと移動する。私の場合は、防具とスキルのこともあるので、本当に気付かれずに進むことが出来た。
最初からこうしておけば良かった……
若干後悔しつつも、荒れ地を抜けていくと今までの場所とは雰囲気が違う場所に出てきた。
「この感じ……多分、ボスかな?」
恐る恐る先に進んで行くと、私の目の前の土が盛り上がっていき、光沢があるゴーレムが出てきた。その大きさは、私の身長の五倍はあった。
「ゴーレムかぁ。今までのよりも硬そうだなぁ」
そう言いながらも、私は黒闇天のマガジンを入れ替える。
「できるだけ情報を稼いでから逃げよう」
私は荒れ地のボス、アイアン・ゴーレムと対峙する。あちらから攻勢には出てきそうにないので、アイアン・ゴーレムの周りをぐるぐると回る。アイアン・ゴーレムは、私を目で追ってはいるけど、攻撃しようとはしない。
「敵対していない?」
私がそう思ったのもつかの間、私の進路に向かって拳を振り下ろしてきた。いきなり止まることの出来ない私は、ギリギリのところでジャンプする。私の足先の二ミリ下をアイアン・ゴーレムの拳が通り過ぎる。
通常のゴーレムとは威力が違い、クレーターの大きさも一・五倍近くある。
「通常のゴーレム以上に食らったらいけない攻撃だね……」
私は、アイアン・ゴーレムの腕に着地して、そのまま頭の方に駆け上がる。駆け上がりながら、腕にエクスプローラー弾を撃ち込んでいく。私の後ろで小さな爆発が連続した。しかし、ある一ヶ所を除いて傷が付くことはなかった。
「関節に傷が入った。それ以外は無傷って事は、現状の弱点は関節部分って事だね!」
頭まで駆け上がった私は、アイアン・ゴーレムの肩から真上に飛び上がり、アイアン・ゴーレムの首に弾を撃ち込んだ。小さな爆発とともに、アイアン・ゴーレムの首に少し傷が入る。
「傷は入ったけど、ダメージが通っているようには見えない……関節を重点的に狙って何が起こるか確認しよう」
アイアン・ゴーレムから距離を取った私は、関節部分を狙って撃ち続ける。先程、傷が入った右腕を狙っていると、関節部分から少しだけ罅が入った。
「威力の上がった黒闇天でも、結構掛かるか……な!!」
私が攻撃を続けている間も、アイアン・ゴーレムは私に対しての攻撃をやめない。動作自体は、ゴーレムと変わらないので対処はしやすい。しかし、時折先程と同じように私の動きを予測した一撃を加えてくるので油断は出来ない。
「大分削ることは出来たっぽいけど、まだダメージが通りにくい……」
それから、十分間アイアン・ゴーレムの右肘部分を狙って攻撃を続けると、ようやく右腕が壊れた。
「再生するかな……?」
私は用心をして、アイアン・ゴーレムから少し離れたところで待機する。すると、アイアン・ゴーレムは、腕を再生させることなく私の方に向かってくる。
「再生しない? ゴーレムとの違いはここかな。じゃあ……」
今度は、右の膝を狙って攻撃を続ける。こちらも、十分間攻撃を続けてようやく破壊することが出来た。時折、アイアン・ゴーレムの攻撃が当たりそうになったけど、紙一重で躱すことが出来た。
右脚を壊されたアイアン・ゴーレムは、まともに身動きが取れずに這っている。
「このまま間接部分を狙って攻撃を続けよう」
アイアン・ゴーレムからの攻撃の心配が無くなったので、ゆっくりとアイアン・ゴーレムに攻撃することが出来た。両腕、両脚を砕くことに成功した私は、今度は首を狙って攻撃する。
アイアン・ゴーレムと戦い初めて一時間近く経過してようやく、アイアン・ゴーレムにトドメを刺すことが出来た。
「はぁ、精神的にも身体的にも疲れた……。核を破壊しないで倒せたのは本当に助かったよ……」
私は身体を伸ばしてからアイアン・ゴーレムの身体を回収する。
「よし、ちょっと先のエリアを見てみよ」
アイアン・ゴーレムを倒した場所から先に向かうと、ひび割れていた地面から段々砂が多くなり、最終的に砂漠へと変化していった。
「ここは……砂漠エリアだねって……暑!! 死ぬ!!」
私は急いで荒れ地に戻っていく。
「基本布装備の私でこんなに暑いって事は、金属装備の人は火傷しちゃうんじゃないの!?」
ほんの数秒間、砂漠にいただけなのに身体に異常なまでに熱がこもっているのが分かる。
「ここの攻略は、また今度にしよう……今日狩ったモンスターを解体してログアウトだ」
私は、ユートリアにあるアキラさんの店に行くためにシャングリラへ向かった。
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