第15話 悲鳴が聞こえた!!

 朝、目が覚めると、目の前に日向のつむじがあった。


「……ああ、日向は泊まったんだっけ」


 まだ少し寝ぼけているからか、日向がなんでいるんだろうかと考えてしまった。日向のつむじが見えているということは、日向が抱きついてきているということだ。


「日向起きて……」


 私が声を掛けても起きない。それどころか、もっとこっちに近づいてきた。


「日向?」

「んん……」


 もう一度呼びかけると、日向は抱きつく力を少しだけ上げる。そして、私の胸に顔を埋めてきた。


「……起きてるでしょ、日向」

「…………バレた?」

「起きてるなら、早く離れろ!!」


 私は、日向を引き剥がして立ち上がる。


「ああああ、私の温もり……」


 そう言って、日向は、私に手を伸ばしてくる。


「私は、湯たんぽか!?」


 ────────────────────────


 起きるのを渋る日向を無理矢理起こして、私達は、朝ご飯を食べた。その後、一通りの準備を終えて、学校へと向かい、授業をきちんと受けてから自宅に戻った。今日も午前授業だったので帰りはお昼を少し過ぎたくらいだ。さすがに連日泊まるわけにも行かないので、日向は、自分の家に戻った。


「さてと、簡単に焼きうどんでも作って、ログインしよっと」


 私は、昼ご飯を食べてからユートピア・ワールドにログインした。昨日、噴水広場でログアウトしたので、ログインした場所は噴水広場だった。


「よし、今回は、外でモンスターを狩ろう! その前に、ギルドでクエストを受けてみようかな」


 ユートピア・ワールドでは、ギルドでクエストを受けることが出来る。その受け方は、街の人に直接依頼されるか、ギルドで収集されている依頼から自分で選ぶか、この前のリリさんの時の様に突然発生するかだ。私は、この中のギルドでも受注をやろうとしている。ちなみに、街の中でのクエストの呼び方は、依頼で統一されているみたい。私達プレイヤーは、クエストって呼ぶことがほとんどだけどね。ゲームシステム的にもクエストってなっているということも大きいと思う。


 早速、ギルドの中に入って、専属カウンターに向かう。


「シズクさ~ん」

「ルナさん、今日はどうしました?」

「依頼を受けようかと」

「依頼ですね? かしこまりました。少しお待ちください」


 シズクさんは、そう言って、後ろの方にある本棚に向かう。その中から一つのファイルを取ってきた。


「それでは、どのような依頼をお探しですか?」

「えっと……」


 いきなり、どのような依頼かと言われて、よく分からなくて、言葉に詰まってしまう。


「依頼のご説明からしますか?」

「あっ、はい、お願いします」


 困っている私を見かねてか、シズクさんが説明してくれるみたいだ。助かった。クエストが受けられるという情報だけで、どういうものがあるかとかは知らないんだよね。


「まず、依頼の種類からお話ししますね。依頼には、採取、討伐、雑用という、三種類の一般依頼と、ギルドや国からの依頼である特別依頼があります。

 一般依頼は、街の皆さんからの依頼やギルドからの依頼があります。こっちのギルドの依頼は、街の皆さん同様材料の捕集などが目的です。

 特別依頼は、ギルドや国から緊急で依頼されるものです。大規模なモンスターの発生や討伐困難なモンスターの討伐依頼が対象となります」


 特別依頼は、かなり難しいクエストのようだけど、報酬は良さそう。


「この他にも、街の人から直接依頼を受ける事もあると思います。その場合は、ギルドは干渉出来ませんので、報酬の交渉はご自身でやってもらうことになります。ご了承ください」

「分かりました」

「では、一般依頼からお選び頂くのですが、ルナさんは、一番下のGランク冒険者となっていますので、こちらのファイルからお選びください」

「ランク?」


 聞き覚えのないことなので、首を傾げる。


「はい。ランクについては、依頼を受ける際にご説明していますので、初耳かと思います。ランクには、G、F、E、D、C、B、A、S、SS、SSSの十段階になります。

 Dまでは、依頼を一定回数引き受け、さらに報告を済ませると昇級していきます。Cランクからの昇級には、先程の条件にプラスして試験を受けてもらうことになります。こちらに関しては、その時が来ましたらご説明します」

「なるほど、ありがとうございます」


 説明してくれたシズクさんにお礼を言って、先程渡してくれたファイルを開けて中を見ていく。そこには、いろんな依頼書があった。Gランクということもあって、雑用系のクエストが多い。私は、その中から討伐系と採取系のクエストを探して、選び取る。


「薬草の採取とキラーラビット、ラッシュ・ボアの討伐ですね。受理いたしました。キラーラビットの毛皮とラッシュ・ボアの牙が討伐証明になりますので、それを十個ずつ提出してください」

「それって、今持っているものでもいいんですか?」


 私のアイテム欄には、毛皮と牙が大量にある。それを提出していいのなら、簡単だなと思った。


「はい、構いません。既に、討伐した対象も範囲内になります。ですが、あまりに時間の経ったものですと、その範囲内から出てしまうのでご注意ください」


 私は、アイテム欄からキラーラビットの毛皮とラッシュ・ボアの牙を十個ずつ取り出して、トレイに載せる。


「十個ずつですね。確認しました。では、こちらが報酬です」


 シズクさんがトレイにお金を載せる。


「全部で五〇〇〇ゴールドですね」

「ありがとうございます。核の換金の方が、多くもらえるんですね」

「そうですね。この素材よりも、核の方が用途が多いので」

「そうなんですか?」


 そういえば、私はモンスターの核が何に使われるのか知らない気がする。


「はい、この街の明かりに使われていますよ。あの街灯に魔力を供給するためにですね」

「へ~、あの街灯って魔力で動いているんですね。初めて知りました」

「そうですね。異界人の方は知らない方が多いでしょう」

「そうだ。また依頼を受けていいですか?」

「はい、どうぞ」


 せっかくクエスト受けたのに、あれだけで終わらせるのも何なので、討伐ではなく採取のクエストを受ける。


「薬草、毒消し草、増幅茸の採取ですね。受理いたしました。それぞれ、二十個ずつの採取をお願いいたします」

「はい! ん? メグさん! こんにちわ!」


 説明を受けていたら、シズクさんの後ろにメグさんがいたので、挨拶をした。すると、メグさんは、ビクッと震えた後、


「こ、こんにちわ……」


 と返してくれた。


「あの、ソルさんは……?」

「ソルは、用事があるので、来たとしても夜になると思いますよ」

「そうですか……ありがとうございます」


 メグさんは私に一礼すると、後ろの机に向かって、書類仕事を始めた。忙しそう。


「じゃあ、行ってきますね」

「はい、お気を付けて」


 私はギルドを出て、南の森に向かう。


「さてと、まずは、黒闇天の強さを確認しなくちゃね。というか、これの銃弾って、マガジンで出てくるのかな?」


 私は、試しに銃弾精製を行う。


『銃弾精製・黒闇天・十発・マガジン』


 かすかな倦怠感とともに黒闇天のマガジンが手のひらに現れる。


「出来た。一応、アーニャさんが複数マガジンを用意してくれたけど、これで、使い捨てにしても平気になった」


 私は、精製したマガジンをポーチの中に入れる。


「さて、あの森の中で探すけど、猿にだけは会いたくないなぁ……」


 私は、憎き相手を思い出しながら、素材が生えている森の中に入っていく。


 ────────────────────────


「フラグになっちゃったよ!!」


 森の中に入っていった私の目の前に、ソードモンキーが現れた。相も変わらず、私を煽ってきている。苛つく。


「むぅぅ! こっちだって木登り出来ないわけじゃないんだよ!」


 私は、目の前の木に向かって走り、途中でジャンプし、木の幹を使った三角飛びで枝に掴まって逆上がりの要領で、枝の上に降り立つ。

 ソード・モンキーは、自分と同じ場所まで上がって来たので目を剥いていた。その一瞬の動転で出来た隙を突き、黒闇天を抜いて、セーフティを外し、引き金を引く。


 ウキャァ!!


 ソードモンキーの胸に風穴が開く。今までのリボルバーでは、あり得ない結果に少し驚く。


「……今までのリボルバーよりも遙かに威力が高い。反動もあるけど。それに……」


 私は、自分が今いる場所を見る。


「想像よりも簡単に木に登れた。これもスキルのおかげ?」


 私は、試しに木から木に飛び移る。


「出来た。私の体重で良く折れないね」


 私が乗っている木は、本当に頑丈のようだ。私はしばらく木の上を渡っていく。いつもと違う目線で、森を渡り歩いていると、凄く新鮮な気持ちになる。


「凄い! こんなことも出来るんだ!」


 私は、サーカスのように、木の枝から枝に渡り歩いていく。丁度いいところにないときは鉄棒のように、逆上がりをしたり、体操選手のように勢いを付けて飛んだりと自由自在に動き回る。


 途中で見かけるモンスターは、黒闇天で撃ち抜いていった。もちろん死体は回収する。私は、ここに来た目的を忘れて、気ままに森の散策をしていた。すると、私の耳に何かが聞こえる。


「きゃあああああ!」


 女性の悲鳴だ。私は、悲鳴の聞こえた方向に向かう。そこは、森の中の開けている場所だった。そこに、馬の死体と馬車、複数人の野蛮そうな男達と騎士みたいな人達、そして、メイドさん達と綺麗なドレスに身を包んだ可愛い美少女がいた。


「何だろう? 盗賊かな?」


 騎士が、メイドさんと美少女の周りを固めて、さらに、その周りを盗賊が囲んでいる。よく見ると、メイドさんの一人が、剣を握っていた。今時のメイドさんは、戦いも出来るんだね。


「はっはー! そこの嬢ちゃんを渡せ! そうすれば命だけは助けてやろう!」


 盗賊のお頭のような人が、気持ち悪い笑みを浮かべて騎士達に言う。


「ふざけるな! このお方をどなたと心得る!」

「知るかよ! どっかの金持ちの嬢ちゃんだろ!」

「貴様! 無礼だぞ!」


 騎士と盗賊の問答は、そこで終わり、盗賊が騎士に襲い掛かる。数では、騎士が不利のため、劣勢になっていた。


「どうしよう……助けても面倒くさい展開になる可能性もありそうだよね……いや、やっぱり助けよう。あんなに可愛い子を、盗賊の手に陥らせたらどうなるか分からないもんね!」


 私は、盗賊のお頭に向けて引き金を引く。お頭は反応出来ずに、頭に風穴を開けた。


「…………結構グロいね。でも、気にしてたら助けられない!」


 私は、木々を飛び移って、常に動き続ける。銃声に気付いた盗賊が、お頭が死んでるのを見つける。


「……親分?」


 盗賊の動きが止まった。そして、何故か騎士の動きも止まった。いや、盗賊倒してよ……


 私は、場所を変えながら一人、また一人と急所を撃ち抜いていく。どんどんと数を減らされていく盗賊。その段階になって、ようやく騎士達が動き始める。


 私は、その光景を見ながらリロードをする。マガジンを落として、ポーチにあるものと入れ替える。黒闇天に新しいマガジンを入れ、スライドを引く。そして、まだ、動いている盗賊に向けて引き金を引く。


 私と騎士達によって、盗賊達は全滅した。


「ふぅ、これで終わりっと」

『条件を達成しました。職業『狩人』を獲得』


 突然出てきたウィンドウに驚く。


「これって、職業の獲得だよね。もう変更出来るのかな」


 職業の選択をしてみようとすると、


「何者だ! 何が目的だ!?」


 騎士が、いきなりそう大声を出した。絶対に私の事を言っているよね。


「どうしよう……行くしかないか……」


 私は、木から降りて、地面に着地する。一応、銃は仕舞っておいた。


「こんにちわ。私は冒険者です。ここには、採取の目的で来ました。襲われているあなた方を見つけて手助けをしただけです」


 本当のことを言ったから、問題ないはず。


「冒険者だと……? いや、貴様は異界人だろ!?」

「えっと、はい。そうですけど」

「本当の目的は何だ!?」


 騎士の一人が激高している。何故か、本当の事を言っても、信用してもらえない。異界人である事がいけないのかも? でも、なんで?


「えっと、本当に採取目的で、ここに来たんですけど」

「信じられないな。貴様等異界人は、私利私欲の限りを尽くすだろ!」


 騎士は、剣を引き抜き、私に向ける。私も、反射的に黒闇天を抜き構える。


「な、じゅ、銃だと!?」


 騎士達が狼狽える。銃の脅威を知っているからなのか。あるいは、別の理由か……


「剣を降ろして下さい。私は、あなた達に危害を加えるつもりはありません。ただ、そちらが敵対するというのであれば、話は別です。全力でお相手します」


 私がそう言うと、騎士達はさらに狼狽える。森の中に入ってしまえば、そこからは私の独壇場になると思う。私は、認識阻害、潜伏、それに木々の上を渡れる。さらには、遠距離武器を持っている。剣と鎧だけの騎士達では、相手にならないと思う。


「どうしますか?」


 私がそう言っても、騎士達は剣を降ろそうとしない。


(はぁ、結局、戦闘することになるのか……)


 私は、いつでも動けるようにしておく。しかし、私の警戒は杞憂に終わった。


「やめて! 命の恩人に失礼でしょ!」


 綺麗なドレスを着た美少女が、騎士達の前に出る。


「姫様! 危険です!」


 騎士が止めるが姫と呼ばれた美少女は、そのまま私の方に向かってくる。その美少女は、緩くウェーブの掛かった金髪を背中まで伸ばしていた。それに、その眼はとても綺麗な碧眼をしている。


「助けて頂きありがとうございます。私は、ここユートピアの第二王女シャルロッテ・ファラ・ユートピアです。シャルとお呼びください」

「えっと、私は、ルナです」

「ルナ様ですね。本当にありがとうございます。貴方のおかげで助かりました」

「いえ、シャル……様が、ご無事で良かったです」


 私がそう言うと、シャル様は顔をしかめた。何か粗相をしてしまったのかもしれない。内心焦っていると、シャル様は、私の方に身体を近づける。


「シャ・ル・と・お呼びください」


 笑顔の圧力が強い。内心は冷や汗だらだらだよ……


「えっと、シャル?」

「はい! そう呼んでくださいね!」


 シャルがにこやかに笑う。


「姫様! そのような野蛮な異界人に、御身の名を呼び捨てにさせるなどあってはなりません!!」


 私の言うことを信用してくれなかった騎士がそう吼える。


「黙って……! 私が許可を出しているの。貴方に意見を求めてない」


 シャルは、氷のように鋭い眼差しで、騎士を黙らせる。


「申し訳ありません。命を助けて頂いたのに気分を害させてしまい。この埋め合わせは、近いうちに必ず。あの者は、ああ言いますが、気にしないでください。私の事はシャルと呼ぶこと。約束ですよ?」

「はい、分かりました」

「敬語も無しにしましょう。私も少し砕けた話し方をさせて頂いてもよろしいですか?」


 シャルは、とんでもないことを言い出してくる。一国の姫様相手に、ため口で話せと言うのは、かなり無茶なのでは?

 でも、私に選択肢はないと思われるので、従わざる終えない。


「わかった。これでいい?」

「うん。じゃあ、私も砕けた話し方にするね。それで、いつ頃空いてる?」

「へ?」

「空いてる時間だよ。埋め合わせをすると言ったでしょ?」


 突然の話に一瞬、思考が飛んでしまった。


「えっと、明日の今頃なら空いてるけど」


 明日の予定を必死に思い出してそう言った。明日も午前授業なので、今の時間帯ならログイン出来る。


「じゃあ、明日のこの時間に、ユートリアの噴水広場に来てね」

「あ、うん。分かった」

「じゃあ、ここで失礼するね。明日を楽しみにしてるから!」


 シャルは私に微笑みかけて、騎士とメイドを連れて、この場を離れていった。さっきの騎士は、最後まで私を睨んでいた。


「なんか、すごいお姫様と感じの悪い騎士だったなぁ」


 私は、唖然としながら見送っていった。


「あっ! 私、まだ採取してない!」


 私は当初の目的を思い出し、森の中を東奔西走する事となった。


 ────────────────────────


 シャルは、森の中を騎士に護衛されながら歩いていた。


「姫様、よろしかったのですか?」

「何が?」


 メイドの質問の意図が分からず、シャルは聞き返した。


「ルナ様のことです。明日にお約束を致していましたが、今日、これからという選択肢もあったのでは?」


 騎士の一人がルナの名前を聞いて、メイドを睨んだ。そのメイドに睨み返されて、一瞬たじろぐ。しかし、意を決して、進みでる。


「姫様。恐れながら、あの者と会うことに私は反対です!」


 騎士の一人が、シャルの目の前に跪いてそう言った。


「そう。なら、貴方の護衛の任を解く。ユートリアに戻り次第、王都に帰っていいよ」

「な、何故ですか!?」

「貴方は、恩知らず過ぎる。それに、私怨を持ち出して意見するのも頂けない。分かった?」

「…………承知いたしました」


 騎士の顔は苦渋に歪んでいた。しかし、顔を上げたときには、その顔は普通の状態に戻っていた。その後、シャル達は、ユートリアまでの道のりを、何の支障も無しに帰る事が出来た。


 そして、ある宿屋の一室にシャルとメイドがいた。


「姫様、ルナ様の事をどうお考えなのですか?」


 シャルの着替えを手伝っていたメイドが問いかける。


「それは……」


 シャルは、そこで言葉を途切れさせる。しかし、メイドの顔は平然としていた。そうなるのが分かっていたかのように。そして、少し溜めた後、シャルはこう言い出した。


「とても可愛い人だったよね! あの流れるように綺麗な白い髪の毛! 宝石をそのまま埋め込んだような赤い瞳! その容姿から服装まで、完璧な美少女だった! お近づきにならなかったら、ぜっっっったい! 後悔する!」

「そうですか」


 シャルは、眼をキラキラさせながらそう語った。メイドは、それを慣れたように軽く受け流す。


「シルヴィアは、そう思わなかったの!?」


 シャルは、メイド……シルヴィアに詰め寄る。


「詰め寄らないでください。着付けが出来ません」


 シルヴィアは、シャルを押しとどめ、着替えを進めていく。


「とても可愛らしい方というのは、同意します。それに、かなりの実力者と言えるでしょう」

「シルヴィアから見ても、そうなの?」

「はい。高度な認識阻害と精密な攻撃、さらには、自由自在な身のこなし。あの場にいた騎士達では、太刀打ちできません」

「認識阻害? それは、気が付かなかったかも」


 シルヴィアの分析のほとんどは、シャルも感じていたようだが、認識阻害には気が付かなかったようだ。


「姫様の美少女センサーが働いたのでしょうね」

「私に、そんな能力があったなんて……」

「冗談です。姫様の持つ『王の眼』があるからでしょう」

「まぁ、そうだよね」


 そんな話をしているうちに、シャルの着替えが終わる。


「さて、出来ました。そろそろ時間にもなります。行きましょう」

「うん、行こう」


 シャルは、シルヴィアを連れて、宿屋から出て行った。向かった先は、ユートリアのギルド支部だった。


 ────────────────────────


 その日の真夜中、街道をひた走る馬がいた。その上には、一人の男が乗っている。


「姫様はどうかしている。異界人を信用するなど……」


 その男は、ルナを異常なまでに敵視した騎士だった。


「あいつらは平気で人を踏みにじるんだ。俺の故郷だって、あいつらのせいで滅びかけた。全てあいつらが……」


 騎士の言葉は、そこで一度途切れる。


「そうか、姫様は、あの異界人に洗脳されているんじゃ……姫様の身が危ない! だが、何もしていない奴を殺すわけにもいかない。方法を考えなければ……」


 それは、最悪の事態を引き起こすきっかけに繋がる……

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