第11話 図書館!!
北通りにある図書館には、結構早く着くことが出来た。
「走る速さ上がった気がするなぁ」
私は、ヘルメスの館から図書館までが走ったとはいえ、前よりも早く着いたことに驚いた。
走った感覚も、一昨日とは違う感じもする。速度上昇で、ステータスが上がっているのもあると思うけど、装備が変わったのも要因の一つかもしれない。私は、図書館に入ると真っ先に、カウンターに向かった。前にも来たので、カウンターの場所だけは覚えている。
「こんばんは、図書館をご利用ですか?」
受付にいるお姉さんが、首を傾げる。
「はい。これは、入場代の一〇〇〇〇ゴールドです」
私は、前もって用意しておいたお金をお姉さんに渡す。
「はい、一〇〇〇〇ゴールドちょうどですね。今月の入場代を頂いたので、一ヶ月間のご利用が出来ます。本の貸出は行っておりませんので、図書館内だけでの閲覧をお願いします」
「わかりました。メモを取るのは大丈夫ですか?」
「はい、それは構いませんよ」
どうやら、持ち出しだけが禁止されているだけらしい。
「あの、メモとかって売ってますか?」
「はい、一つ二〇〇〇ゴールドになります。ペンもご入用ですか?」
「はい、お願いします」
「では、メモとペンを一つずつで、五〇〇〇ゴールドになります」
私は、五〇〇〇ゴールドをぴったり払って、メモとペンを受け取った。
「二十三時までの開館となりますので、お気をつけ下さい」
私は、壁に掛かっている時計で時間を確認してみた。今は、二十二時だ。後一時間は、開いている。少し短い気もしたけど、仕方ない。
私は、まず本棚を見て回ることにした。私の言語学で、どこまで読めるのかが分からないからだ。
ちなみに、今のスキルは、
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ルナ[冒険者]:『銃術Lv6』『銃弾精製Lv7』『リロード術LV4』『集中Lv8』『言語学LV7』『潜伏Lv4』『速度上昇Lv5』『器用さ上昇Lv4』『回避術Lv5』『暗視Lv3』『聞き耳Lv4』
EXスキル:『解体術Lv6』
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だ。レベルは、軒並み上がっている。特に、戦闘系のスキルが上がっていた。昨日のソルと一緒に狩りをしたのが、良かったんだね。まぁ、でも、一番高いのは、集中だったのは意外だ。銃を撃つのに毎回集中し続けるからかな?
少し、奥の方に行くと、途端に本の題名が読めなくなってしまった。
「ここから先は厳しそうかな。手前で収穫になりそうなものを探そ」
色々と気になったものを手に取っていく。
『モンスター分布~ユートリア周辺編~』『ダンジョンの心得』『美味しいお肉』『急所攻撃をしてみよう!』『私のコーデってあり!?』
いくつかおかしなものも混じってる気がするけど、こんな感じだ。そして、一番気になったのが、この本だった。
『銃術の基礎』
自分のスキルに関する事で、一番重要なものだ。私は、真っ先にそれを読み始める。
「構え方かぁ。いつも、両手を使って構えたけど、胸の前に手を置いて片手で撃つって事もあるんだ。でも、あまり安定しなさそうだなぁ。こっちは、リボルバーじゃなくて、えっと、自動式の拳銃もある。こっちの方が使いやすいのかな?」
書いてあるのは、それだけではなく銃弾についても書かれていた。
「貫通性の高いものから、破片で傷を広げるもの、衝撃重視のものもあるんだ。結構危険だね。一応メモはしておこう」
私は、銃弾の名前と特徴をメモする。私は銃弾精製で、いつでも作れるので、こういうメモが重要になる……かもしれない。
『『銃術Lv6』『銃弾精製Lv7』にボーナスを付加します』
「ボーナス? 本を読んでも付加されるんだ。スキルにあった本を読むと良いって感じかな? これはソルにも教えてあげよ」
他の本にも目を通していくと、分かったことがあった。それは……
「私のコーデは、おかしくない!」
ということだ。そんなこと? と嘲笑う人もいるかもしれない。でも、女の子として、見た目に気を使わないといけないってソルも言ったたんだから!
後は、街周辺のモンスターの事。東は南より少し強いぐらいっぽいけど、北と西は、初心者には絶対に無理だと分かった。モンスターのレベルが桁違いだった。私みたいな初心者は即死だよ。
そして、『急所攻撃をしてみよう!』を読んだときに、想定外の事態が起こった。
『『急所攻撃Lv1』を修得しました。最初の修得者のため、ボーナスが付加されます』
「これって、スキルの書だったの!?」
スキルの取り方には、スキルの書を読むという方法がある。まさか、こんな近場で読めるとは思わなかったけど。
ちなみに、『ダンジョンの心得』は、地図を作れと奇襲に備えろとのことだった。かなり普通のことだ。今読んだ本は、ほとんどが絵になっていたので、かなり早く読むことが出来た。
私は、他にも急所攻撃と同じような本が無いか探し始めた。似たような名前の本はあったけど、読んでも何も得ることは出来なかった。他の条件もあるらしい。
「う~ん、めぼしいのは無いかな。ソルのスキルの本があったから、これもソルに教えなきゃだね」
探し回るのに時間が掛かったため、閉館時間になってしまった。
「ご利用ありがとうございました」
私は、受付のお姉さんに一礼してから図書館を出た。
図書館を出ると、前の通りにアーニャさんが立っていた。私が、図書館から出てくるのを見つけることが出来てないっぽい。
「アーニャさん、どうしたんですか?」
「わっ! びっくりした~。夜隠れの効果は凄まじいわね。店だとよく見えるのに」
私が声を掛けると、アーニャさんは跳び上がってびっくりした。
「それで、どうしたんですか? こんなところで」
「ルナちゃんを待っていたのよ。そろそろ出てくると思ってね。これから、少し時間あるかしら?」
「少しなら大丈夫です」
「じゃあ、館に行きましょう」
「はい」
今日は、戦闘はなさそうだね。私とアーニャさんは、並んでヘルメスの館を目指す。
「今日は、ソルちゃんは来ないのね」
「はい、向こうで用事があるので」
「残念ね」
「そういえば、少し気になったことがあるんですが」
「何かしら」
アーニャさんは、こっちを向いて微笑む。改めて、凄く綺麗な人だと思った。
「アーニャさんは、銃の取り扱いがあるって言ってましたけど、こんな素敵なコートまで作るんですね」
「あら、最初に会った時に言わなかった? 完全オーダーメイドの武具店だって」
「そういえば……」
「銃も作るけど、こういった服も作るわよ。そうだ、素材が余っているから、もう一個何か作るわね」
アーニャさんは、とんでもないことを言い出した。
「えっ? でも、お金は……」
「それは、払って貰うわよ? 頑張って稼いできてね?」
「う、はい。でも、今度は何を作ってくれるんですか?」
「内緒よ。でも、後悔はさせないわ」
今回も何が出来るかは、出来るまでのお楽しみになるらしい。まぁ、アーニャさんは信用出来るから任せちゃお。
そうして、世間話も含めた話をしているとヘルメスの館にすぐ着いた。
「ただいま~」
「こんばんわ」
アーニャさん、入っていった後に私も入っていく。
「ルナちゃんもただいまでも良いんだよ?」
「えっと、それはさすがに……」
自分の家でも無いのにそんな事を言えない。そう考えていたんだけど、
「いやなの?」
とアイナちゃんに上目遣いで見られて、そんな考えは消え去った。
「ううん。じゃあ、ただいま」
「おかえり!」
アイナちゃんが抱きついてくる。私、抱きしめられてばっかだなぁ。まぁいいけど。
「ルナちゃん、黒羽織はどう? 肩周りとか、裾とか邪魔な部分はない?」
「大丈夫ですよ。そうだ、あの、出来ればタイツかなんか無いですか? 戦闘中にスカートが捲れそうになるんです」
「なるほど、パンチラね!」
なんでその言葉が、この世界にもあるんだろう……。
「まぁ、そういうことです。黒いタイツで隠せればいいんですけど」
「そうねぇ……一応置いてあったかしら、少し派手だけど」
アーニャさんは、店の奥に向かった。少し派手というのが気になるけど。
「アーニャ様、まさかあのタイツを持ってくる気じゃ……」
「アイナちゃん、知ってるの?」
「えっと、まぁ、見てみれば分かるかな」
アイナちゃんがそう言ったタイミングで、アーニャさんが帰ってきた。
「はい、これしか無いんだけど」
アーニャさんが持ってきたのは、蜘蛛柄の黒タイツだった。結構厚めなので、これであまり気にしなくても平気かもしれない。見ようとしなければ見えないだろうし。ただ、蜘蛛の巣が黒とはいえ、やっぱり目立つなぁ。
「背に腹はかえられない……買います……」
「特別に二五〇〇ゴールドにしてあげるわ。売れ残りだし」
「オーダーメイドなのにですか?」
私は、お金を取り出してアーニャさんに渡しながら訊いてみた。
「いやぁ、少しふざけ過ぎちゃってね。売れなかったのよ……」
アーニャさんは、視線を斜め下に向けながらそう言った。私は、買ったタイツを装備してみる。
「どうですか?」
その場でくるくる回って二人に見てもらう。
「う~ん、可愛いから問題なし!」
「うん、似合ってるよ!」
二人がこう言うので、大丈夫だと思う。自分では少し派手すぎな気がするけど。
「そろそろ、私は帰りますね」
時間を見ると、もうそろそろ寝ないといけない時間になりそうだった。
「そうね。私達も店を閉めるから、ちょうどいいわ。明日は、来るのかしら?」
「多分、お金を稼いでからになると思います」
「いつでも来ていいからね。楽しみに待ってるよ!」
「うん、ありがとう!」
私は、ヘルメスの館を出てログアウトした。
「う~ん! さて、寝よ」
私は、そのまま眠りについた。
次の日、朝起きると、お母さん達はすでにいなかった。テーブルにメモが置かれている。
『朝早く出なくちゃいけなかったから、先に出ます。朝ご飯はサンドイッチを作っておいたから。冷蔵庫に入れておきました 母より』
冷蔵庫を開けると、サンドイッチがラップに掛けられて置いてあった。
「忙しいだろうに……、でも、ありがたく頂こう。お母さんのサンドイッチは美味しいし」
ご飯を食べて、いつも通りの家事を軽く行い、学校の準備をして外に出る。そして、いつも通り日向と合流する。昨日と同じように抱きしめられながら……
「昨日、図書館に行ってきたよ」
「そうなの? どうだった?」
「かなり有用だよ。新しいスキルが手に入ったし、ユニークスキルにボーナスが付加されたんだ」
「へぇ、そんな事が出来るんだ? 私が使えそうなのはあった?」
「うん、日向用もあるよ。行ってみるといいよ」
私は、昨日見つけたソルが使えそうな本を教えてあげる。
「うん、そうする」
「日向は? 昨日はログインしたの?」
「うん、何回か戦闘したよ。かなりコツを掴めた気がする」
「今日は、午前授業だけど、一緒に行ける?」
「うん! 行けるよ!」
日向は目を輝かしている。一緒に冒険出来るのが嬉しいんだろう。
今日は二人で、大冒険かな。
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