『夢の航空券』

横山 睦 (むつみ)

マクラ (前書き)

 えー、まぁ、久しぶりにこの場所でお話をるわけなんでございますが、あぁ、これはこれは、どうも暖かい拍手をありがとうございます。


 拍手がまばらだろうと、そんなこたぁ気にしないのでございます。お話を演る場所があることがとても幸せなことなんです。


 今回の新作『ゆめ航空券こうくうけん』っていうお話の本題に入る前に、少しだけ『マクラ』についての話をしますと、まぁ落語好きな方はわかっているかと思うんですがね、改めて説明しますと、ここでの『マクラ』っていうのは、寝室にあって寝る時に使う『枕』のことではなく、『枕詞まくらことば』みたいなもんで、簡単に言うと前書きのことなんでございます。


 それで、なぜ寝る時に使う『枕』のことも出したかというと、今回、寝ている時に見る夢が重要なテーマになっているわけでして。


 夢っていうのは不思議なもんで、怖い夢を見る時もあれば、楽しい夢を見る時もございます。


 リアルな夢を見ることもあれば、突拍子もない現実ではありえない夢を見ることもあるかと思います。夢に関して未だ解明されていないことが多いのです。つくづく人間っていうのは不思議な生き物だなぁなんて思うわけです。


 それと、夢は例え話で使われていまして、嫌なことがあった時にこれが夢だったら良かったのになぁとか、この悪夢から一刻も早く逃れたいと願うことがあるんでございます。


 また、嬉しいことがあった時に、ほっぺたをつねって夢じゃないよねと確認したりすることもあるわけでございます。


 あぁ、それと、多くの人が経験したことがあると思いますが、夢の中でトイレに行ってオシッコをしますと、起きた時におねしょをしてるなんてことも。


 さて、どこからどこまでが夢の中の世界で、いったいどこからどこまでが現実世界なんでしょうか。




 だって、考えてみてください。1年前に、今の世界を誰が想像出来ていたでしょうか?




 変わりゆく状況に気持ちが追いつかず、お金も無く、苦しい日々を過ごす人が多いと思います。もう本当に現実が嫌になって、暗い気持ちに陥ってしまうってわけで。


 そんな中、昔っから落語の世界では、年末は人情噺にんじょうばなしを演ると決まってるわけなんでございます。


 今回は、古典落語『芝浜しばはま』をモチーフにしまして大胆にアレンジしたお話です。少しでも笑って泣いて、明るい気持ちで、年を越そうではありませんか。


 古今東西いろんな夢オチの話もありますが、『夢の航空券』どうなることやら。


 おっと、肝心かんじんなことを忘れるといけねぇ。


 今回は、寄席よせからではないんですが、お題を頂戴しておりまして。それらのお題をすべてお話の中に含めながら、ストーリーが進行していくのでございます。


「冷めたカツ丼」

「ビーフジャーキー」

「ゴリラ」

脱脂綿だっしめんを食べるイエティ」

「天使みたいな裸の赤ちゃんキーホルダー」

甘苦あまくるしい」

「ドッグファイト」

「レベルアップ」

「つわもの」

「逆クリスマス」

「妖怪AI」

「芸人になりたいミュータント」

革財布かわざいふ

「酔っ払い」

芝浜しばはま


 お題は全部で15個。


 どこで、どうやってお題が出てくるのか、そういうのも楽しんでくださいな。


 では、お待たせしました。『夢の航空券』のはじまり、はじまりー!


 どうか来年も良い年になりますように。こんな時代ですが、元気でまたどこかでお会いしましょうってことで。

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