第6話 クラス委員長の高山さん

掃除当番の日、私は一人で教室を掃除していた。


みんな、帰ってしまったのだ。


私:「これは、いじめだ。いじめに違いない。」


そんな時、クラス委員長の高山さんが、教室に顔を出した。


高山:「あら、利子さん、どうしたの?掃除当番のみんなは?」


私:「あっ、委員長。みんな帰ってしまいました。これっていじめですよね。」


高山:「先生に言ってきます。利子さんは、そのまま掃除していてね。」


私:「ありがとう委員長。」


私と高山さんと担任の先生は、話し合いになり、担任の先生が、掃除当番だった生徒の親に連絡する事で落ち着いた。


私は高山さんにお礼を言って、三献茶の話をした。


私:「そして、利休は、おもてなしの心を感じ取ったの。」


高山:「良い話ね。どうしてそんな良い話をする利子さんをみんな嫌うのかしら。」


私:「その話をするのに、ちょうど良い場所があるの。利休派の事務所なんだけど。利休の逸話に詳しい女の人が、優しく教えてくれるの。」


高山:「大丈夫、そんな所に行って。」


私:「大丈夫、長官も優しい人だから。」


高山:「利子さんが、心配だわ。もう行かないで済むよう、私が説得してみせるわ。」


なぜか燃えている高山さんは、私と一緒に事務所へ向かった。


高山:「そちらの方々が、うちの利子さんをたぶらかした人たちね!」


私:「高山さん、失礼ですよ。」


長官:「威勢が良いですね。高山さんですか。では、たぶらかしているという理由をお聞かせください。」


高山:「はっきり言います。このような事務所、中学生が普通に来る場所ではないです。千利休が好きなだけの利子さんを、逸話で釣って、恥ずかしいと思わないんですか!」


秘書:「では、高山さんの心を動かすだけの逸話があれば、納得されますか。」


高山:「私を納得させるなんて無理です。」


長官:「では、高山さんを納得させられなければ、私達は今後一切、利子さんから手を引きましょう。利子さんも、ここには来ないでください。逆に、高山さんを納得させたなら、今後、高山さんもこちらに出入りしていただけますか?」


高山:「わかりました。だいたい、逸話なんかで心は動かないわ。」


秘書は、少し間を開けてから、逸話を話し始めた。


秘書:「ある時、豊臣秀吉が利休に、今夜、突然訪れても、抹茶を飲める家はあるか、と聞きます。利休は、針谷宗春ならば間違いなく釜を掛けているでしょうと答えます。それではと言って、利休を伴い出かけます。針谷家へ行くと、門と扉が少し開いていて、釜を火にかけていたそうです。秀吉は快く一夜を過ごし、褒美を与えます。」


高山:「始めから、来ることがわかっていたのでしょ。もしくは、褒美欲しさに、利休と話し合っていたとか。」


秘書:「いいえ、毎日、欠かさず釜に火をかけていただけです。そう、毎日欠かさずにね。」


高山:「それがどうしたというの。」


秘書:「当時、欠かさず火を焚くことは容易ではありません。炭火ですからね。しかもいつ来るともしれない客のために、門と扉を少し開けておくなど、ますます難しいでしょう。でも、それを毎日していた。針谷宗春は、日々の行いで秀吉から褒美をもらえたのです。」


長官:「高山さん、逸話は人々の生きた歴史です。この逸話から日々の行いが新たなチャンスを生むことを学んでください。そして、高山さん自身が掴んでください。利休の逸話を通して、人は成長できるということを。」


高山:「・・・・・」


私:「高山さん、私、友達がいなくなった原因を知っているの。利休の逸話を話す人々を、次々にだまして、物で釣って、最後に心を失わせる。日本人が本来持っていたおもてなしの心。私は高山さんにも知ってほしいの。」


高山:「利子さん。」


長官:「さて、高山さん、逸話は話した。意味も知ってもらった。利子さんからも一言あった。もしこれで高山さんの心を動かせなければ、私達との縁もこれまでと言うことになる。どうするかな。」


高山:「もう少し、様子を見させてください。利子さん、この事務所に来るときは、必ず私に声をかけてください。それが条件です。」


私:「ありがとう高山さん。今度は私が、高山さんを納得させられるだけの逸話を話せるよう、ここで勉強して見せるわ。」


高山:「利子さん・・・。そうね、楽しみにしているわ。」


高山さんが仲間になった。


◆◆◆


現在の高山の特殊能力

 ・説得力・中級

 ・燃え方・上級

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