第77話 琢磨とシエラのちょっとした修羅場と甘い展開

 琢磨はきびすを返して扉に向かう。


「ちょっと待って下さい」


 ティードリッドが呼び止める。

 琢磨は頭だけ振り向くと言った。


「何だ?」

「私の正体がラファエルだってこと黙っておいてくれませんか。このことを知ってるのはシルフィーだけなんです。他のエルフはティードリッドとして私を認識しています。どこで情報が洩れるか分からないので・・・・・・特にシエラには知られたくないのです。あの子にとってラファエルは一族を滅ぼしたかたきのはずですから」

「確かにな。だが、いずれ本当のことを言った方がいいと思うぞ。隠し事される方がシエラにとってつらいはずだ。それに、あいつはそんなに弱くない」


 ティードリッドは琢磨の言葉に痛いところをつかれたような表情をした。


「・・・・・・そうですね。時が来たら本当のことを打ち明けようと思います」

「そうしてくれ」


 ティードリッドはフゥ~と息を吐いて一呼吸するとどこか嬉しそうな顔をして言った。


「私の方が付き合いが長いはずなんですが、貴方の方がよくシエラを知っていますね」

「それは恋人だからな」

「そうですか。シエラの封印を解いたのはあなたで本当に良かったです。これからもシエラのことをよろしくお願いします」


 ティードリッドは頭を下げてお願いした。


「仮にも天使が人間に頭を下げていいのか?」

「天使だからとか関係ありません。私がそうしたいからそうするのです」

「天使にもお前みたいなのがいて安心したよ」

「最後に私はこの地を離れられませんが代わりにシルフィーを連れてってください。見た目は頼りなさそうに見えますが、私のすべてを叩き込んであります。きっと琢磨さんたちの役に立つはずです」


 琢磨はドジなシルフィーしか見てないため役に立つどころか下手したら自分たちが危ない目に遭うんじゃと思ったがティードリッドが言うんだから大丈夫かと思いなおして返事する。


「・・・・・・まぁ、仲間は一人でも多い方がいいしな」


 そして、琢磨は部屋の外に出るのだった。

 その琢磨の後ろ姿にティードリッドはかつての颯斗の姿と重なり安心したような目で見送っていた。



 そして、現在――――


「琢磨、中で何を話してたの?」

「いや、大したことじゃない」

「う~う」


 琢磨はそっけない態度でシエラの機嫌を損ねてしまったかと警戒する。次に発するシエラの言葉を待っていると、


「・・・・・・タクマ、浮気はダメ」

「・・・・・・はっ!?」


 琢磨は何を言われたか分からずキョトンとする。そんな琢磨を気にしないでシエラは言葉を続ける。


「・・・・・・確かにティードリッドは美しい。体系はスリムだけど出るところは出ている。胸だって私より大きい。タクマがなびくのも分かる。だけど彼女は私。だから私のを揉めばいい。それかアリサだったら許す。アリサのもティードリッドに負けないぐらい大きい。これならタクマも満足するはず・・・・・・」

「わ、私!?」


 急に飛び火したアリサは思わず手で胸を隠すしぐさをする。その仕草で胸が張り、装備の上からでも分かるぐらい胸が強調されている。そのせいで周りの視線が自分の胸に注がれてるのが分かると手をどかし、恥ずかしさを誤魔化すように「琢磨だったらいいわよ」っと言うのだった。


 琢磨はアリサの言葉に思わず触りたくなりそうな衝動をグッと抑えてシエラの方を両手でつかむと安心させるように言った。


「俺が好きなのはシエラだ。他の奴なんか関係ない」


 シエラは顔を上げて琢磨の顔を見つめる。その瞳は何処か不安そうで揺れている。


「私も琢磨が好き。だけど私は知ってる。時々アリサの胸をチラ見していることを。私では満足させられないかもしれない。だから――――んっ!?」


 シエラは驚いたような声を上げる。何と琢磨がシエラにこれ以上言わせるかというように口を重ねてキスをしていた。


「琢磨、やるわね」


 アリサが感心したように言う。


「こ、こんなところで破廉恥ですよ」


 シルフィーはそう言って両手で顔を隠す。エルフの耳の先まで真っ赤だ。しかもちゃっかり指の隙間からはっきり見ている。むっつりスケベだ。

 そして、十秒ほどしただろうか。琢磨が口を離すとシエラから唾液の糸を引いていた。それを指で斬るようにするとシエラは舐めた。どこか表情もトロンとしている。


「これが俺の気持ちだ。わかったか」


 シエラはコクンとただ頷くことしかできなかった。ただ気持ちが高ぶってきたのか吸血鬼の特徴である目が真紅に輝いていて今にも琢磨と一線を超えそうな勢いだ。


「いちゃつくなら外でやってくれません?」


 その声に一同、ビクンとなって振り向くとティードリッドが立っていた。しかも表情は微笑んでいて冗談ぽく言ったのかと思ったが目が笑っていなかった。しかも何ともいえない重圧で背後に般若が見えるようだ。この出来事で琢磨たちの見解でティードリッドは怒らせてはいけないという認識と共に琢磨とシエラの熱は一気に覚めるのだった。

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