第75話 シエラとアリサの仲睦まじい様子
「シエラ、大丈夫?」
そう話しかけてきたのは、シエラを心配そうに見つめているアリサだ。
「・・・・・・知れてよかった。私は魔王様に連れて行かれた先で訳もわからず封印されて、みんな、私を嫌いになったんだと思っていたけど私を守るためだった。前に魔王さまに理由を聞いたけど、私がショックを受けない様に真実を捻じ曲げたのかと半分思ってた。昔から人を傷つけないように言葉を選んで言う人だったから・・・・・・でも、ティードリッドは昔からどんな残酷なことでも本当なことしか言わない。昔から後になってから真実を知るほうが辛いって言う人だったから。そして、魔王様とティードリッドの言ってたことは同じだった。これで私はみんなに愛されてたんだと思う事ができた。魔王様に封印された時、同族も天使に滅ぼされ、その上、魔王様たちにも見放され、ずっと一人だと思ってた。だけど違った。しかも、そのお陰でタクマとアリサに出会えた。・・・・・・私は一人じゃない」
静かに聞いてたアリサの横でシルフィーが涙ぐんでいる。
「ウッウッウッ・・・・・・いい話ですねぇ~。シエラさん、安心してください。これからは私もいますから」
「・・・・・・どういう事!?」
「フッフッフ・・・・・・聞いて驚いてください。な・ん・と・私もシエラさんたちと同行します。これで寂しくありませんよ」
シルフィーは抱きついてきてもいいんですよと言わんばかりに手を広げる。
対するシエラは、
「・・・・・・お前、足手まといだからついてくるな。戦闘中にロジなことやられるとこっちの身が持たない。迷惑――――それに琢磨とアリサがいればいい」
シエラは言い終わると首を横に振る。それを見たシルフィーは、「ガ〜ンッ!!!」とショックを受けてエルフの耳が萎れた花の様に垂れ下がっている。
アリサは「も〜う、ガマンできない」とシエラに抱きつく。
「シエラ、何て可愛いの! 琢磨が好きになるわけだわ! 私も結婚したいぐらいだわ」
アリサは自分の頬をシエラの頬にくっつけてスリスリする。
「・・・・・・アリサ、暑苦しい」
シエラは言葉では文句を言っているが、アリサを引き剥がそうとしていない。
その
「――――お前ら、何やってるんだ?」
その声に反応すると、琢磨が呆れたような顔をして歩いてくるところだった。
シエラから離れたアリサは琢磨に説明する。
「シルフィーが旅の同行を申し出たんだけどシエラにバッサリ断られたのよ」
「それなら俺がOKした。シルフィーは連れて行く。こいつだって役に立つだろ」
琢磨の言葉を聞いたシルフィーの垂れてた耳がみるみる逆立っていく。
「・・・・・・タクマがそう言うなら・・・・・・」
「それにもしもの時は壁にでもすればいいだろ」
「それならいい」
一部始終聞いていたシルフィーはフルフルと震えだし顔を上げると今にも泣きそうな顔で、「あ、あんまりですぅ〜!!」と走り出して行った。
「冗談だったんだけどな。からかうと面白いからつい、チョッカイをかけたくなるんだよな」
「わかる」
そんな琢磨とシエラの様子にアリサは呆れながら「ホドホドにしなさいよ」と言うのだった。
「アリサ、再開してから大人しくないか? 昔は事あることに俺にチョッカイ掛けてきたくせに未だに何もしてこないなんて。お前のせいで友達もできた試しがないんだからな。自分で言って悲しくなってきた」
「そ、それは、昔は金魚のフンがくっつかないようにいろいろしたわ。要するに好きな子を虐めたくなるみたいな・・・・・・でも、再開した琢磨は姿が違って大人びているし、すでにシエラという恋人がいるし、もちろん最初はどうにかしてこの泥棒ネコから奪い返してやると思ったわ。だけど力では勝てそうにないから一緒にいることでなにかないか探ってたの」
シエラは、アリサに泥棒ネコと思われていたのがショックだったのか、「・・・・・・泥棒ネコ・・・・・・」と呟いている。
「――――でも、シエラを知っていくうちに私のほうが結婚したいぐらいシエラの可愛さに気付いてしまった。見た目も金髪で人形みたいに可愛いし、その上、吸血鬼とまできた。それは、好きになるわと思ってしまった。だから、私が第二婦人でいいと言ったんだけど、いい加減気付きなさいよね、バカ」
アリサは赤面してソッポを向く。琢磨も珍しく顔を赤くし、「おっ、おぅ」と答えることしかできなかった。
「・・・・・・二人とも、顔、真っ赤」
シエラの指摘に対し、
「こ、この部屋が暑いからだ」
「そ、そうよね。暑い、暑い・・・・・・」
二人の慌てぶりを見たシエラは、
「・・・・・・そういう事にしておく」
と、大人の対応をした。
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