第74話 ティードリッドの正体

 話を聞き終えるとみんな一応に思うことがあったようだ。そんな中、ティードリッドに尋ねる者がいた。琢磨だ。


「一つ聞いていいか?」

「何ですか?」

「何で俺だったんだ?」

「それは簡単です。琢磨さんが異世界から転生してきたからです。転生者には何かしらのギフトが与えられてるはずです。それからシエラの封印を解いたことも理由の一つです。あれを解くことができるのは封印した颯人本人か天使のトップクラスのみです。私でも無理です」

「それだけで天使に勝てるとは思えないけどな。でも、ガブリエルには負ける気がしないな。もしかして天使ってあんなのばっかしなのか?」

「あのは鈍臭いだけです。一緒にしないで下さい」


 琢磨は口角をつりあげる。


「へぇ~、随分天使の内部事情に詳しいんだな」


 ティードリッドはしまったというように慌てて口を手で塞いだがもう遅かった。シルフィーはあ~あって顔をしている。表情から察するになにか知ってるのだろう。アリサは成り行きを見守るようだ。そんな中、シエラが訝しげに聞いた。


「・・・・・・ティードリッドってエルフなんじゃないの?」


 ティードリッドは深く息を吐くと、


「・・・・・・琢磨さんと二人っきりにして下さい。シルフィー、お願いします」

「分かりました。いくよ、二人とも」


 そう、言ってシルフィーは部屋の外に出ていく。シエラはまだなにか言いたそうに琢磨を見たが、琢磨が頷いたので大人しくアリサと部屋の外に出て行った。


 やがて、部屋の扉が閉まると、ティードリッドが呪文を唱えると部屋全体に薄い膜が張られた。


「遮音結界です。これでここでの会話は愚か、物音ひとつ外に漏れることもありません」

「シエラたちを外に出した上でここまで用心するってことはあいつらには聞かれたくないってことか?」

「はい、特にシエラには知られたくないのです。あのには刺激が強いですから」

「・・・・・・!? どういう事だ?」


 琢磨の疑問に応える形で、


「言うより見せた方が早いですね。実はこの姿も私の心の姿ではないのです」

「・・・・・・はっ!?」


 琢磨の理解が追いつかない。


「この事を知っているのは颯人を除いてシルフィーしか知らないから黙っていて下さいね」


 そして、ティードリッドが手に持っている杖をかざすと何やら聞き取れない言葉で呪文をとなえる。

 つえからまばゆい光がほとばしりティードリッドの身体全体を包む。

 しばらくすると、光が割れる様に弾け、姿が段々見えてきた。その姿を見た琢磨は驚いた。それもそのはずである。

 その姿は、純白のドレスのようなものを身につけ胸元は開いており形の良い胸が主張している。そして、背中にはこの世とは思えない白い羽、足元には白いハイヒール。髪の毛は青みがかった長い髪に毛先が緑かがっている。そして目の色は青、鼻はスッとしており瑞々みずみずしい唇。頭の上にはこの世のものではないことを主張するような天使のわっか。右手には青いクリスタルのようなものが先っぽに取りつけられた長い錫杖しゃくじょうのようなものが握られていた。ある天使と瓜二つなのだ。


「お、お前は!?」

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