第72話 琢磨、かつての魔王の仲間に出会う。

「・・・・・・おい、何でお前がここにいる」

「・・・・・・不可解」

「確かに私たちの後ろにいたはずなのに途中でいなくなってたものね」


 琢磨たちが不思議に思ってると不敵な笑い声が聞こえた。


「フッフッフ、驚いたようですね。私はこっそり先回りして皆さんを驚かそうとしたんだですが・・・・・・どうやら大成功ですね」


 琢磨たちが黙ってることに驚いてることだと思ったシルフィーはますます得意顔になる。


「・・・・・・一つ聞いていいか?」


 琢磨の問いにシルフィーは「何ですか?」と何を聞いてくれるのかとウキウキしながら答える。


「俺たちより先にいるってことは別のルートがあるってことだよな?」

「・・・・・・そうですが、それが何か?」


 シルフィーが何を当たり前なことをと怪訝そうな顔をしているが、次の琢磨の質問で顔色を変えることになる。


「そのルートは魔物が出てきたか?」

「そんなわけないじゃないですか。魔物が出るならはなから行きませんよ――――はっ」


 シルフィーは閉まったというように口を押さえる。無言で俯いてる琢磨たちが怖い。


「そうかそうか。お前は本来のルートは魔物が出てくることを知ってたのに、自分が仕掛けるドッキリのために俺たちに黙って自分だけ安全なルートを通て来たと・・・・・・」


 琢磨から感じるあまりの重圧プレッシャーにシルフィーは冷や汗をタラタラ搔き始める。


「あ、あの、タクマさん? ・・・・・・」


 琢磨は手をかざしながらシルフィーに近づく。


「そ、その手は何ですか?」

「何、どう料理しようかと考えていたんだ」

「今日の夕食ですか? それなら豚の丸焼きがいいなぁ~なんて・・・・・・」


 シルフィーは身の危険を感じて琢磨から距離をとる。琢磨はその場で止まると言った。


「そうか、火あぶりが所望か」

「ひぃ! じょ、冗談ですよね?」

「そう思うか?」


 シルフィーはその場で尻もちつく。


「そういえばクルゴンも知ってたんじゃない」

「・・・・・・たしかに、あの時シルフィーがいなくなるのはいつものことって言ってた。あの時私たちは迷子になっていなくなったと思ったけど、今思えば、自分の生まれ故郷で迷子になるなんてありえない」


 アリサとシエラの指摘に思いを馳せると琢磨は、


「・・・・・・あとで、クルゴンも火あぶりにしよう」



 一方その頃、エルフの里のとある場所にて――――


「ぶえっくしゅん!!!」

「何だ、風邪か?」


 若いエルフの男の問いにクルゴンは鼻をズズズとやりながら、


「急に悪寒と寒気が・・・・・・」

「全く気をつけてくれよ」

「ああ・・・・・・」


 この時クルゴンは理不尽な怒りによって自分の命が危ないことを知る由もなかった。




 琢磨がファイヤーボールを作り出したことで瞬時にやられることを理解したシルフィーはあわあわと駆けずりながらティードリッドの足にしがみついた。


「た、助けてください!! ティードリッド様~」

「はぁ~、しょうがないですね・・・・・・」


 ティードリッドはシルフィーを守るように前に出た。


「どうか、許してくれませんか。シルフィーも悪気があったわけではないのです。そもそも、ここに来る最短ルートの在処はこの里の者でも知りません。唯一ゆういつ知っているのは颯斗とシルフィーだけなのです」

「颯斗はまあ~わかる。あんたの仲間だったらしいからな。だけどそいつは何で知ってるんだ?」

「それは、私の弟子だからです」


 ティードリッドの表情を観察していた琢磨だがニコニコしてるだけで何を考えてるのか分からなかった。

 琢磨はファイヤーボールの発動を解除すると、頭をポリポリ掻きながら、


「まぁ~、冗談だ」


「・・・・・・タクマ本気でシルフィーのこと焼くつもりだった」

「あれは本気マジだったわね」


 シエラとアリサが何やら言っているが無視した。


「さてと、あんたがティードリッドか?」

「そうです。初めまして。そして・・・・・・」


 ティードリッドはシエラを見ると生き別れた兄弟に再開したような今にも泣きそうな表情をしている。


「・・・・・・なに?」


 シエラはきょとんとしている。


「久しぶりですね、シエラ。こんなこと言えそうな義理ではありませんが、元気そうでよかった」

「シエラ、知ってるのか?」


 琢磨の問いにシエラは「・・・・・・知らない」と首を振る。


「あぁ~、この姿は初めてでしたね。これならわかりますか」


 ティードリッドが耳についているイヤリングに手を触れると、淡い光に包まれ白かった肌が黒く染まっていく。その姿はまさしくダークエルフだ。


「・・・・・・ディオナ!?」


 シエラが驚いた表情をしている。


「そうです。私ですよ。元気そうで何よりです」


 シエラは駆けだすとティードリッドに抱き着いた。


「・・・・・・ディオナ、死んだと思ってた。あの時、魔王様もいなくなって・・・・・・私、ひとりぼっちで・・・・・・ぐすっ・・・・・・」

「心配かけてごめんなさい。この通り私はちゃんと生きてますから・・・・・・」


 ティードリッドは抱き着いてるシエラをいつくしむ様に頭をなでる。


「・・・・・・ダークエルフだったのか?」

「違いますよ」


 琢磨の問いかけが合図だったようにティードリッドが再びイヤリングに触れえると元のエルフの姿に戻った。


「では、少し昔話をしましょうか」

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