第71話 エルフの長、ティードリッド
琢磨たちが大通りに戻ると、「どこに行ってたんですか?」とシルフィーが手を振りながらアリサと駆けてくるところだった。
「もう、いきなり駆けて行くから探しましたよ。・・・・・・あれ、シエラさん、耳飾りどうなさったんですか?」
「・・・・・・壊したり失くしたら困るから大事に取ってある」
シルフィーはその言葉に「可愛かったのに・・・・・・」と残念がっている。
アリサが琢磨の脇を肘でついて「触れなくて残念ね」というのに対し、「う、うるせ~」としょげてるように返すのが精いっぱいだった。
「ここにいましたか、探しましたよ」
声のした方を見ると、クルゴンが息を切らしながら駆けてくるところだった。何かあったのだろうか?
クルゴンの息が整うのを待って、聞いてみた。
「何かあったのか?」
「いえ、そこまで大事ではないのですが、ティードリッド様が御帰りになりまして、今すぐに会いたいそうです」
「そうか、どこに行けば会えるんだ?」
「あそこに見える大樹です」
エルフの里の奥に天にも昇るんじゃと思わせるぐらいの大樹が
しかし、普段は認識疎外の魔法がかかっており、ティードリッドが認めたものじゃないと決して近づけないようだ。
「それでは向かうとしましょう。ですが、これだけは言っときます。決して、私を見失わない様についてきてください。見失うと、けっして、大樹には近づけません。ティードリッド様に許可を得ようがエルフ族ではないものは決してたどり着きません。魔法も無意味なのであしからず・・・・・・ま、大丈夫です。先頭は私で最後尾はシルフィーで挟むように進めば問題なくたどり着くでしょう」
クルゴンを見失わない様にしばらく歩くと、大樹の前にたどり着いた。上を見上げると天辺が見えない。この周りだけ空気がうまくて心地よい気持ちになる。
「では、ティードリッド様のところに向かいます」
「・・・・・・ねぇ、いつのまにかシルフィーがいないんだけど」
「「えっ!?」」
アリサの指摘に思わず琢磨とシエラが振り返ると確かにいるはずのシルフィー姿形がなかった。
クルゴンは「またですか」と手をおでこにやり、
「シルフィーはほっといて先に行きましょう。いつものことです」
大樹の中に入ると、樹の中とは思えない空間が広がっていた。
歩いて行くと階段が見えてきたところでクルゴンが言った。
「この最上階にティードリッド様がいます。ただこの先はダンジョンのように魔物が現れる可能性がありますが、こちらから手を出さない限り襲ってくることはありません」
「なるほど、この中なら何者かが侵入してきても魔物が退治してくれるってことか」
「そういうことです。では行きますよ」
それからしばらく歩くことまだティードリッドがいるフロアにたどり着いていなかった。本来ならとっくについていてもいい時間だがつかない理由は琢磨にある。どういう訳か魔物が行く先先に現れ琢磨を襲うのだ。今の琢磨なら手こずるような相手じゃないが数が多いせいで時間を
「・・・・・・おい、魔物には襲われないんじゃないのか?」
「おかしいですね。こんなことは初めてです」
「あの魔物たち、どちらかって言うと自分たちを守るために琢磨を襲ってるように見えたけど、琢磨から漂う重圧みたいのを感じてるんじゃないの」
アリサが指摘してくる。確かに襲われてるのは琢磨だけでシエラたちは襲われていない。
「なるほど、確かに我々では感じない何かを魔物が感じてる可能性があるかもしれません。試してみましょう。タクマさん、出来る限り気配を消すことはできますか?」
「仕方ないな」
琢磨は精神を集中させると、隠密行動に最適なスキル【気配遮断】を使う。どんどん気配が消えていき、そこにいるのにちょっとでも視線を逸らしたら見失ってしまいそうだった。
「・・・・・・これでいいか?」
「十分すぎるぐらいです。私でも目を放したら見失ってしまいそうです」
「・・・・・・タクマ、さすが」
「・・・・・・私でもここまでのスキル使えないわ」
琢磨の気配遮断にシエラたちも驚いている。
それから、琢磨の【気配遮断】が有効だったのか魔物に襲われることなく最上階のフロアにたどり着いた。
そこは真っ白い空間で何も見当たらない。すると突然琢磨たちが来ることを見越してたように大きな緑色の扉が現れ、ギィィ~と音を立てながら扉が開いた。
「私の案内はここまでです。この中でティードリッドが御待ちです。中にお進みください」
ゆわれるがまま琢磨たちが入ると、扉が閉まり暗闇に包まれる。そして、遠くから光がついていき辺りを照らされると、この場所が通路だと分かる。琢磨たちがありき続けると、光が漏れ出してる場所から話し声が聞こえてくる。その場所に出るとこちらに気付いたのか話し声が止んだ。
「ようこそいらっしゃいました」
その人物は、長い青い髪にエルフの特徴である長い耳に碧の目。見た目は二十代前半の女性で出るところは出て腰辺りは引っ込んでくびれがある。そして背中には白いロープを羽織っている。よく見ると耳にイヤリングがついている。こいつがティードリッドか・・・・・・
「タクマさんたち、遅かったですね」
「んっ?」
よく見るとはぐれたはずのシルフィーがこっちを見てしてやったりとしたような顔を浮かべているのが見えた。
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