第67話 シエラ、落ち込む
広場はあっちことっちに露店が多く出店しており
「あれは、水の精霊の仕業なんですよ」
琢磨が見ていることに気付いたのか、シルフィーが教えてくれた。
「精霊って他にもいるのか?」
「はい、いますよ。今は昼間ですけど暗くなってきますとそこら中にある街灯が雷の精霊が電気をつけてくれます。他には火を起こしてくれる精霊や風を起こしてくれる精霊もいて、この里は一年を通して快適な気候で保たれています」
琢磨は気になったことを聞く。
「こんなに精霊がいるならこの前の騎士団ぐらい簡単に返り討ちに出来たのじゃないのか?」
シルフィーは答えずらそうに言った。
「それはそうなのですが・・・・・・何といいますか精霊は争いごとを嫌う傾向がありましてもめごとが起きると姿を見せなくなくなってしまって・・・・・・精霊と契約してる方ならいるんですけどまだうまくコントロールできないのが大半で、まともにやれるのはティードリッド様ぐらいです」
「・・・・・・何だ、使えねぇな」
「うぐっ」
琢磨の言葉にグサッと刺されたようにシルフィーが胸を押さえている。
「どうした?」
「いえ、自分の不甲斐無さに呆れてまして・・・・・・」
「大変だな」
琢磨は他人事のように返した。
琢磨は噴水で遊んでる子供たちから視線を移すと気になる者を視界の端に捉えた。
「・・・・・・んっ、あれは!?」
琢磨が見てる先で青い髪を垂らした若い女性が歩いてるのだが気になったのはその女性ではない。その頭の上に生えてるであろう長いうさぎみたいな耳があるのだ。
「・・・・・・あれは、獣耳族。体の一部に猫や犬など動物の特徴がある。しかもウサギの特徴がある獣耳族は身体能力が非常に高い。あの見た目で勘違いしたものがちょっかいをかけると返り討ちにあった物が後を絶たないという。・・・・・・関わらない方がいい」
シエラが教えてくれたが、琢磨は軽くショックだった。
「琢磨、昔からああいうの好きだったものね。触りたかった?」
アリサに
「ああ、久々にこの世界に来て良かったと思ってしまった。頼んだら触らせてくれないかな・・・・・・」
琢磨は無意識に手をモミモミしてると甲高いような甘ったるい声が響いた。
「ひゃ~、うふっ・・・・・・な、何するんですか~。や、や、めてくださ~い」
シルフィーが悶えている。琢磨は手元を見ると両手でシルフィーのエルフの耳をもんでいた。
琢磨が手を放すとシルフィーが崩れ落ちて荒い息を整えながら「もう、お嫁にいけない・・・・・・こうなったら責任を取ってもらうしか・・・・・・」とブツブツ言っていたので無視するように横を素通りすると、シエラが悲しそうな目で見てきた。
「・・・・・・タクマ、ああいうのに興味があるの。私にはああいうの無い。私にあるのは血を吸う牙だけ・・・・・・タクマ喜ばせることできない」
そう言うと、シエラはそそくさと歩き出してしまった。琢磨は咄嗟に呼び止めようと手を伸ばすが言葉が見つからなかった。その時のシエラの歩く後ろ姿はどこか
「あ~あ、琢磨、未だに女の子の扱いは苦手みたいね。姿は変わっても昔と同じところがあって安心したわ。私がどうにかしてあげるから後で埋め合わせしてね」
アリサはウインクするとシエラを追いかけていった。取り残された琢磨はいつの間にか復活したシルフィーと商店に向かった。
暖簾をくぐると荷下ろしをしている店主の後ろ姿が見えたので声をかける。
「ちょっといいか?」
「いらっしゃい。何でしょうか?」
「ここって物の買取できるか?」
「できますよ」
その言葉を聞いて琢磨は魔石や魔物の骨などテーブルに並べた。
「これは!? ちょっと時間を貰っていいですか?」
店主はルーペを取り出すと一個一個鑑定していく。
「なぁ、待ってる間、商品見せてもらっていいか?」
「構いませんよ。ご自由に見てください」
琢磨は横目でシエラを見るがまだ落ち込んでいるようだ。そのシエラをアリサが店の奥に連れてってしまったので、琢磨は違う棚を見ることにした。シルフィーはどっちに行こうか迷ったが結局琢磨の後についって行った。
アリサはシエラと商品を眺めながら話す。
「元気出しなさいよ。琢磨はシエラのこと一番に思ってるから。それに琢磨のあれは動物を触りたいって言ってるようなもので深い意味はないのよ。それによくシエラの頭を撫でてるじゃない。結局のところシエラがいいから安心しなさい」
シエラは自分の頭を触ると呟く。
「・・・・・・確かに頭を良くなでてくれる。・・・・・・だけどさっきのシルフィーの耳を触ってた琢磨の表情が一番いい笑顔だった」
思い出したのかさらにしょんぼりするシエラ。
(何してくれてるのよ、あいつ)
アリサは握りこぶしを作って心の中で琢磨に罵詈雑言浴びせた。
アリサはシエラが元気を取り戻してくれるのはないかと商品棚を見てると一つのアイテムが目に入り、手に取るとシエラに見せた。
「シエラ、これ」
アリサが手に持ってる物を見るとシエラの目が死んだような魚の目から段々と輝きを取り戻していき目を見開いた。
「これは!?」
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