第64話 ダークエルフが黒幕か!?

 琢磨は非難させておいた馬車を持ってくると、結界装置を作動させた。起動音とともに里の上空にドーム状の薄い膜が覆うのを確認したところでクルゴンが話しかけてきた。


「よろしかったのですか? 元凶をおびき寄せるまでは結界はこのままにしておくはずでは。作動させたら警戒心が増してくるのでは?」

「ああ、そのつもりだったけどまた、さっきのような輩が来たら面倒だからな。それならいっそうのこと作動させた方がこの里のエルフのためにいいだろう。それに、これぐらいで怖気おじげづくぐらいの小物なら大したことない」

「いいこと言うようになったわね。ゲーム三昧で家に引きもりだったとは思えないほどね」


 アリサの言葉に対してシエラが「・・・・・・引きこもりって何?」と聞いてきたが誤魔化すようにして気になったことをクルゴンに尋ねる。


「・・・・・・そういえば、さっきの兵士妙なこと言ってたな。ここの結界が壊れることを黒ずくめの怪しい奴から聞いたってな。しかもそいつは男か女か分からなかったがエルフの特徴である長い耳があったと――」


 俺の問いにクルゴンが慌てたように食い下がる。


「め、滅相もございません! 我々の中に仲間を裏切るようなことを、それにそんな考えを持ったものは誰であれ結界に弾かれて里に入れなくなります。こんな大それたことをするような人は――まさか」


 クルゴンが何かに気付いたように考え込む。


「何だ、心当たりでもあるのか?」


「い、いえ、我々エルフ族の他にダークエルフ族がいるのです。昔から仲が悪く事あることに衝突してました。このエルフの里が観光都市と発展して外から商人や冒険者など受け入れることを快く思ってなかったようなのです。もしかすると――」

「ダークエルフがなにがしらの工作でエルフの里を壊滅させようとしたってことか?」

「はい」


 シエラが否定するように呟いた。


「・・・・・・そんなことない。あのダークエルフがこんなエルフを根絶やしにするようなこと考えるわけがない。それにわざわざそんな工作を講じなくてもこんな里ぐらいすぐに壊滅させるぐらいの力はあった」


 まさかシエラが反論の声を上げたことに驚いたクルゴンだが、直ぐに冷静さを取り戻すと、


「ダークエルフに知り合いの方が?」


 琢磨が代わりに答える。


「シエラは昔、魔王と行動を共にしててな。その時仲間にダークエルフがいたんだとよ」


 クルゴンは右手に顎を乗せ考えるしぐさをしたと思うと、


「・・・・・・それは、妙ですね。我々の長、ティードリッド様も昔颯斗様と行動を共にしてたのですが、ドワーフや妖精族、巨人族にシエラさんのことも聞いていたのですがダークエルフがいたのは初耳です。それは本当に――」


 クルゴンが何か言いかけたところで琢磨から膨れ上がった負のオーラを感じ取り冷や汗をかいて固まっている。


「・・・・・・つまりなんだ? シエラが嘘言ってるって言いたいのか?」

「・・・・・・私、嘘つかない・・・・・・」


 クルゴンはやばいと思って弁明する。


「わ、私はティードリッド様に聞かされたことを言っただけで決してシエラさんが嘘をついたなどは・・・・・・おそらく私の記憶違いに違いありません。お戻り次第確認しますのでどうかお怒りを鎮めください」

「チッ」


 琢磨から圧迫されるような重圧が無くなりクルゴンはほっと胸を撫で下ろす。その場にいた他の者たちもその重圧に耐えられなくて倒れてるのもしばしば。何ともないのはシエラとアリサぐらいである。シルフィーは過呼吸気味で思い出したように酸素を取り込んでむせていた。


「・・・・・・まぁいい。そのティードリッドとやらが戻ってきたら直接聞いてやる。それではっきりするだろ」


 それで話は終わりだと言わんばかりに琢磨は馬車に乗り込んで荷物整理を始めた。

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