第33話 吸血鬼の真祖
ムカデ蜘蛛を倒した琢磨たちは拠点に戻った。魔力を使い切って動けなそうなシエラだったが再び琢磨の血を飲むと瞬く間に回復した。これは吸血鬼の力なのか死なない体が関係してるのか分からない。琢磨は荷物の整理や消耗した神聖水を補充しながら気になっていたことをシエラに尋ねた。
「そういえばあの場所にどれぐらいいたんだ?」
「分からない。でも相当な年月だと思う」
「今の姿が本来の姿か?」
「見た目はそうだけど本調子ではない。本当の私の力はこんなものじゃない」
見た感じ高校生ぐらいにしか見えないし、力もこんなものじゃないらしい。それでムカデ蜘蛛に放った魔法はとんでもない威力だった。常々シエラが味方でよかったと思う。魔王はどうしてシエラを封印したんだ。十分役に立ちそうなのに。だけどシエラを封印した魔王はとんでもない強さのはず。
琢磨が考えを巡らせていると、シエラが思い出したように言った。
「・・・・・・そういえばタクマは魔王様と少し雰囲気が似ている」
「俺が!?」
「見た目じゃなく醸し出す雰囲気が何となく」
魔王は俺みたいな感じなのか。・・・・・・そういえば前にシエラから気になる単語を聞いたな。
「そういえば魔王に漫画を見せてもらったようなことを言ってたな?」
「!? あの時の私はテンションがおかしかった。忘れてほしい」
シエラはあの時の中二病みたいなセリフを思い出したのか恥ずかしそうに両手を顔に当てくねくねしている。よく見ると頬が真っ赤だ。よっぽど恥ずかしかったんだな。俺もよくわかる。それにしても彩はよく平然とやってたな。はずかしくなかったのかな。ま、今の俺にとってどうでもいいことか。
「それはいいからこの世界に漫画はあるのか?」
「この世界? よくわかんないけど魔王様に見せてもらったのが初めて。あの書物は素晴らしかった」
おそらく魔王は俺と同じ異世界から来たに違いない。となると何かしらのチート能力を持っているのかもしれない。それも全盛期のシエラを退けられるほどの。
「吸血鬼ってみんな見た目が若く見えるのか?」
「人間に比べれば老いのスピードは遅いけど100歳辺りから顔に
「・・・・・・シエラって実年齢どれぐらいなんだ」
「・・・・・・分からない。私は吸血鬼の真祖。成人したときに年も取らなくなる。これは少しでも真祖の濃い血を子孫にだいだい受け継がせるため」
「シエラのほかに吸血鬼の真祖はいるのか?」
「多分いない。私以外の吸血鬼はずっと昔の戦争で滅んでいる。天使によって」
「・・・・・・何だと!?」
聞けば吸血鬼の真祖は人間が吸血鬼に噛まれて変貌したのではなく、 魔術等によって吸血鬼へ変化した者のことを言うらしい。そして、自然界がバランス調整のために生み出した生命体が真祖である。ちなみに人間が吸血鬼となった場合は、魔術等によって吸血鬼へ変化した者を含み死徒と呼ばれる。琢磨はシエラに血を吸われてるが吸血鬼に変貌するのは死徒に噛まれた時だけらしい。シエラは十六歳の時に吸血鬼の真祖に生まれ変わったらしい。
それから三か月後、どこかで吸血鬼の真祖が現れたことを聞きつけたように突然、空から背中に羽が生えた一団が現れ、あっという間に吸血鬼の住処を滅ばされたらしい。この時天使の集団を率いてた者はラファエルと呼ばれていたらしい。
(ラファエルって、この世界に転生するときに俺を飛ばした天使か。・・・・・・やはりあいつらなんか裏がありそうだな)
その後どうなったかシエラは話をつづけた。真祖になったばかりでまだ力をうまく使えなかったシエラは瀕死の重傷で仲間を助けることができず自分の
シエラが琢磨の思ってることを察したように薄く微笑むと、
「魔王様には一つ感謝している。封印されたおかげでタクマに逢えたから」
「・・・・・・それは何よりだ」
ちなみにシエラは無詠唱で魔法を発動できるようだが、魔法名を呟くようにしてるらしい。そのほうが明確なイメージがしやすいようだ。これをするのとしないのでは威力が全然違うらしい。それに魔法名を呟いた方がかっこいいからと変なこだわりも持っていた。この点だけは今後も変える気がないようだ。・・・・・・これも漫画を読んだ影響だろうか。だとすると漫画の影響は異世界でも変わらないぐらい人気があるかもしれない。この世界には地球から転生してきた者も多くいるようだから機会があったら漫画みたいな娯楽が持ち込まれてるかもしれないから探してみるのもいいかもしれないな。そのためにはまずすることをするか。
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