第3話 最初の難関はスライム!?
俺たちは、無事に冒険者になった記念にギルドで食事をした。
本日は依頼はないということで泊るところをどうしようかと思った時に金がないことを思い出した。登録料で使った金は千G、食事も豪勢なものを食べて千八百G、残りは二百Gしかない。これで泊れる宿はあるのだろうか。俺たちは街中駆けずり回ったがどこも平均五百Gだった。これは今夜は野宿に決まりだな。
それから、
「今日はここまでにしよう。お前ら、上がっていいぞ! ほら、今日の分だ」
「どうも、お疲れ様でしたー!」
「お先に失礼します!」
「おーう、また明日な!」
俺とガブリエルは先輩たちに挨拶すると現場を後にした。
ああ、今日も働いた。
こんなことならバイトも生きてる間に経験したかったなー。
これが人生初の働いた仕事なんて信じられない話だ。
俺とガブリエルは一日の疲れを癒すため大浴場に向かった。
何で俺たちがこんなことをしてるのか理由がある。
数日前、ダメもとでギルドのお姉さんに相談したところ、土木作業員の仕事を紹介してもらった。しかも力仕事は俺が、街道の修復作業をガブリエルの魔法でまかなえてしかも、給料がよく、下宿先も用意されている。しかもみんないい人たちだ。
ガブリエルからアイテムを売る話があったがこの先何があるかわからないから断った。もうちょっと金がたまったら冒険に出ようと思う。
俺たちが大浴場に入ると男湯と女湯に分かれている。日本人が作ったのではと思うほど日本と大差なかった。
料金は三百Gとちょっと割高だが仕事終わりの風呂はやめられそうにない。
「あー・・・・・・。生き返るわー・・・・・・」
熱い湯船につかると仕事の疲れが癒されるようだ。
中世風な街だから風呂は期待してなかったんだが、俺の思い込みのようだ。
風呂から上がるとガブリエルが休憩室でマッサージチェアに座って「ああああ~!!」と気持ちよさそうにしてる。俺はカウンターで牛乳を買うと腰に手を当て一気に飲み干した。
この至り着くせりの感じ、本当に日本人が作ったんじゃないだろうか・・・・・・今度調べてみよう。
ガブリエルが気づいて俺のところに来ると、
「今日は何食べる? 私、ミノタウロスのステーキが食べたいわ」
「肉か・・・・・・たまにはいいな。じゃあギルドに食べに行くか」
「やったー」
こいつの態度を見てると天使だってこと忘れるなあ。
ガブリエルとミノタウロスのステーキを堪能するとギルドを後にし、下宿先の部屋に戻り、ベッドを敷くと早々と横になった。
俺の隣ではガブリエルが寝転がっている。空いてる部屋が一つしかなかったので仕方がないが、今ではなれたものだが最初は美女が横で寝てるってだけで緊張して寝付けなかった。
それから、二週間、軍資金がたまって装備一式を買うと(主にガブリエルの装備)冒険者として初めての依頼を受けた。
雲一つない、晴れやかな青空の下。
「そっち行ったぞ! ガブリエル」
「任せて!!」
『ファイヤーボール』
スライムは動いてないのに当たらない。
「なんでえぇぇぇぇぇぇぇぇっ! 当たらないんですか!」
もう一度言おう。ガブリエルの魔法が一発も当たってないのだ。ゲームだとコマンドで操作すればよかったのだが現実になるとそうもいかない。ガブリエルの魔法が変な方向に飛ぶのだ。いわゆるノーコンってやつだ。結局どんなにステータスがよかろうが運動神経が左右するようだ。ガブリエルには後で特訓だな。
スライムが魔法が当たらないのが分かったのかガブリエルにめがげて突進していく。
「スライムが一斉にこっちに!? いやー、犯される!!! 琢磨さん、助けてくださーい!!」
ガブリエルが一斉に向かってくるスライムに対して魔法を乱発しながら助けを求めてくる。
俺は、ガブリエルの泣き顔が可愛いくてもうちょっと見てたいが、スライムに蹂躙されてなるものかとガブリエルにとびかかろうとしているスライムを一刀両断した。スライムを全部倒しら全身からみなぎるエネルギーのようなのを感じた。これがレベルが上がる感覚のようだ。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「どうした?」
俺はガブリエルの悲鳴に刀を鞘に戻し、ガブリエルのところに行くと、スライムの攻撃が当たってたのか、ガブリエルの身につけてる装備がみるみる溶けていた。
そういえば依頼書に書いてあったな。身につけてる物だけを溶かす攻撃をするスライムがいるとか、倒すことに夢中ですっかり忘れてたな。
「ぐすっ・・・・・・、うっ、うええええええええっ・・・・・・、あぐうっ・・・・・・! もう、嫁にいけないっ!」
俺の前には、地面に膝を抱えてうずくまり、スライムの粘液で服を溶かされかろうじで残った下着で泣くガブリエルの姿。
その隣には、スライムを討伐してドロップしたであろうアイテムが転がっていた。
俺は天界でもらったアイテムの一つ『英雄のマント』をガブリエルに掛けてやった。このマントは身につけるだけで体力と魔力を時間に比例して回復するらしい。(溶けた装備は戻らないが――)
「ううっ・・・・・・ぐすっ・・・・・・あ、ありがど・・・・・・琢磨さん、ありがどうござい・・・・・・ううっ! うわあああああああああんっ・・・・・・・・・・・・!」
今更ながらこの状況、第三者から見たら俺が襲ってるように見えるんじゃ・・・・・・やばいような気がする。俺はガブリエルを励ますのに全神経を使った。
「だ、大丈夫だガブリエル。その、今日は運が悪かったんだ。スライムにこんな個体もいるならギルドのお姉さんもちゃんと注意しといてほしいよな。・・・・・・それに、装備は新しいのを買ってあげるから。今度からは気をつけて依頼をこなせばいいさ」
正直言って、スライムがあんなに動きが速いとは思わなかった。ゲームでは大体最初に倒せるモンスターなので簡単な以来だと思ってたが、見るとやるでは違うってことか、――やっぱ異世界は楽しいな。・・・・・・それに、ここにはあいつもいないしな。
「ほら、もう帰るぞ。いい加減なきやめって、美人が台無しだぞ」
俺の言葉を聞いたからか、耳がぴくっと動くと下着姿をマントで隠しながらガブリエルが立ち上がる
「それもそうよね。仮にも天界の天使がたかがスライムごときにこんな辱めを受けて、黙って引き下がれるもんですか・・・・・・っ! ここで、スライムに後れ《おく》をとったなんて知られたら美しいこのガブリエルがいい笑い者だわ!」
どうやら元気が出てきたな。正直ガブリエルが落ち込む姿を見るとどうすればいいか分からなくなる。ここで、人見知りの弊害が・・・・・・
新たな標的を見つけたガブリエルは、俺が止める間もなく、離れた場所にいるスライムに向かって突撃した。
「あっ! 待てガブリエル! 見えてるぞ!!」
俺の制止も聞かず、ガブリエルはスライムにいつも以上に魔力を込めて魔法を放とうとしていた。その時、風で羽織っていたマントがめくれ上がり、
「えっ!? きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
ガブリエルは自分の格好を思い出し、羞恥心で顔を真っ赤にしてしゃがみ込んでしまう。魔法も霧散してしまったようだ。その隙にスライムが攻撃している。俺は駆けつけざまにスライムを倒した。近くにはモンスターはいないようだ。
ガブリエルを見ると目の焦点が合ってない感じで、
「また汚されてしまった。・・・・・・一度ならず二度も・・・・・・」
ガブリエルは俺が貸した英雄のマントのおかげでダメージは受けてないが、粘液まみれで見た目がやばかった。
俺は泣きじゃくる天使を連れ、今日の討伐を終えた。
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