第5話 コロと、ナナちゃん

 コロがキャットタワーの頂上に登った日から1ヶ月後の事だった。


 仕事から帰って来たご主人を玄関まで出迎えに行ったコロは、あるものに目がとまった。


 ご主人の片手に握られたペット用のキャリーバッグ。

 

 ご主人がそっと、玄関の廊下に置く。

 

 なんだか懐かしい匂いがする。

 

 コロがそわそわするなか、結衣がペット用のキャリーバッグを開けた。


 えっ⁉


  コロはびっくりした。

 

 中から出てきたのは、ロシアンブルーの子猫だった。

 小さい。小さいけれど、ナナにとても似ていた。それから、赤い首輪が少し大きくて不格好だ。


「コロ。えっとこの子……、うん、ナナちゃん。ナナちゃんに、これから色々と教えてあげてね!」


 結衣が優しい笑顔で、コロに楽し気な声音で話しかける。


 コロの瞳が大きく見開く。


 息を大きく吸い込み、丸い瞳を嬉しそうに輝かせ、大きく口を開いた。


「ワンッ‼」


 そんなコロの大きな声にビックリした、ナナちゃん。


 小さな両肩が勢いよく跳ねると同時に――、


「チリン」


 と、赤い首輪の鈴が小さく、嬉しそうな音を奏でた。

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コロとナナ @myosisann

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