エピローグ ライトアップ!

「あれ。お湯が出た……」


「なんだって?」


光は彼に救急車を呼んでくれと言った。



「これ。たぶん、破水したんだと思う。先生は救急車で来いって言ってたし」


「ぼ、僕が呼ぶの?ええと」


家族が出払っていたカミナリ電気の妊婦の嫁、光は、響に付き添ってもらい産婦人科に来ていた。



「ご家族の方ですか?お産が始まるのでこちらにどうぞ」


「僕が?えええ?」


しかし他に誰も来ないので響はなんとかこれを務めた。さすがに生まれるところは見なかったが、生まれたての赤ん坊を彼は抱き上げた。




「響君……どう?」


「ううう。泣いている。けど、可愛い……可愛いよ。光さん」


そんな感動で涙の彼の元に、本物の父親がやってきた。



「どけ!響、それか?どれ、俺に貸せ!うわ……これが女の子か」


うっとりしている父と子は、女の子を出産しげっそり疲れた顔の光に感謝をした。



「ねえ。ところで、雷人、名前は決めた?」


「決めた!『キララ』だ。いい名前だろう」


こんな父に息子はダメだと首を横に振った。


「ちょっと。僕の妹だよ?『ほのか』にしよう。『ほのかな優しい光』って温もりがあるもの」


「はあ?俺が父親だぞ」


「僕は兄貴だし?ねえ。ほのかちゃん?」


「……ねえ、二人とも。私にも顔、見せて」


「おっと?ママさんですよ?ほのかちゃん?」



小春日和の病室には、赤ん坊の鳴き声が雷のごとく響いていた。


窓外の樹々は日に輝り葉を色をほのかに染め街を彩っていた。天高く冴え渡る青空の元は今日も光と笑顔が溢れていた。



fin

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恋の雷が みちふむ @nitifumu

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