7話:四天王、指輪を渡す
ユーエン鋼国、鉱山都市ベール。
「ううう……転移ってやっぱり慣れない……」
「ミウは平気だけど?」
俺は【
この【
とはいえ俺も文献で読んだだけで、実物を見たのも使ったのも初めてだった。なんでも、便利すぎる能力の割に、個体数が少ない為テイマー達に乱獲され、とうの昔に絶滅してしまったそうだ。この【
ちなみに、俺がゼテアを使役しているので、必然的にゼテアの部下も全て俺の指揮下に入っているそうだ。ものすごくズルをしている気がするけど、便利だから俺はもう目を瞑ることにした。
ちなみに、転移は魔力を結構使う為か、一度転移すると、次の転移の為の魔力を溜めるのに半日は掛かるそうだ。こればっかりは俺の魔力――ほとんどないに等しいのだけど――や他者の魔力を注いでも意味ないそうだ。
「とりあえず、ミウ、しばらくはこの街で過ごすよ」
「うん! 人が多いね~ あとキラキラした石!」
そう。城の名前が決まってから、実は数日が経っていた。
どうやら厨房は俺が使う場所だからと、四天王達の誰がどのように作るかについて、また例の会議を開催してしまったのだ。
最初は俺が持っていた携帯食料と、緊急的にどこからか取ってきた食材――出所は怖くて聞いていない――で、しばらく過ごしたのだけど……。
ミスを挽回するべく四天王達は気合いが入りまくっており、厨房がどうなるかいつまで経っても決まらなさそうだった。なので、とりあえず完成するまではどこかの街に一時的に避難することを提案したのだ。
そうして、俺とミウは丁度【
そこは鉱山の巨大な谷間に出来た街で、崖をくり抜いた作った街が谷の両側にあり、無数の回廊がそれらを繋いでいた。崖からは色とりどりの結晶や鉱石が剥き出しになっており、夕日を反射してキラキラと輝くそれらを作業員達が掘り出している。
「さて、まずは宿屋を見付けて、そこで夕飯しようか」
住人の半数がドワーフであるこの街の通りを、俺とミウが並んで歩く。通りを見れば、住人であるドワーフだけでなく冒険者や、兵士、騎士といった姿も多い。
ミウは流石にあの肌着で歩くのは無防備過ぎるので、俺がレーヴェに頼んで魔力で編んでもらった、不思議なドレスを着ていた。筒っぽい構造で袖はなく、身体のラインが出ているなんとも魅惑的なデザインだ。特にスカートに長いスリットが入っているせいで、歩くたびに、ミウの太ももがチラチラと目に映って良くない。
動きやすいらしく、ミウは気に入っている様子なので良いけど……ちょっと刺激が強すぎるなあ……。
ちなみに四天王達は、全員がついてきたそうな顔をしていたが、俺は首を横に振った。全員連れていったら目立って仕方ないし、そもそも会議が中断されてしまう。その会議が終わらないから、街に行く事になっているので本末転倒だろう、と諭すとようやく納得してくれた。
あいつらって多分俺よりも凄く長い時間を生きてきて、賢いはずなんだけどな……。
ならせめて誰か部下を護衛に……と言われたけど、俺は大袈裟だと言って断った。ただ、街で飯食べて宿泊するだけだからね。
すると全員が、一個ずつ指輪を差し出してきた。
ゼテアは、赤い鱗が連なる太い指輪を。
レーヴェは、細い九つの輪で一組となった金の指輪を。
クロムウェルは、まるで骨のような……というかどう見ても骨で作った指輪を。
ルクスは、物体ですらない指に巻き付く光の輪を。
彼ら曰く、危なかったら使うようにという事らしい。そして決して外すなと四回言われた。一回で分かるよ!
「……マジックアイテムなのか?」
俺は右手と左手にそれぞれ二つずつ指輪を付けた両手を空へとかざした。今のところ、特に何も感じないし、ただの指輪のように思えるが……。
「なんか凄い力を感じるからきっとそうだよ!」
どうやらミウは、何やら感じているようだ。ここ数日ミウと過ごして分かったことは、彼女は天真爛漫でとても素敵な女の子だということだけで、それ以外は、何も分からなかった。
彼女の過去も、記憶も、全て失われていた。レーヴェとルクスは何やら、正体について分かってそうな雰囲気があったが、話してくれなかった。まだ確証もないので、下手に俺がそれを知ってしまうとマズイのだとか。
……どういうことなのだろうか。ま、とはいえ、俺との行動をあいつらが許している時点で危険はないのだろうけど。
俺は気を取り直して、ミウへと笑顔を向けた。
「ま、この都市は、血の気の多い連中が多いけど、さほど危ない事は何もないさ」
「そうなんだ! ルインはなんでも知っているね」
「あはは、昔ここに来た事あるからね」
良質な鉱石が採れるこの街は、腕の良い鍛冶職人が多い。そのため、ここにわざわざ武器を作りに来る冒険者もいるほどだ。俺も、ベイグの剣を作る為にこの街に来た事があるのだ。
嫌な思い出しかないけどね……。
なんて思い出しつつ、俺は前も使った宿屋へと向かった。あそこの料理は美味しくて、大体どこの街に行っても料理には文句を付けるベイグが珍しく絶賛していたぐらいだ。
だから……。
それは全くの想定外だった。だけど……必然だったのかもしれない。
「なんで……なんで……てめえがここにいるんだ!! ルイン!!」
その宿屋の前で、俺は――
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