17.レシアさんも含めて作戦会議です

「しかし、興味深いわね。この件、私も参加させてもらっても構わないかしら?」

 まさかです! まさかの展開になりましたよ。レシアさんが一緒に調査してくれるなんて思ってもいませんでした。

 私とハル君が、気になって始めた趣味のような調査に、レシアさんが付き合ってくれるなんて嬉しい限りですね。

「もちろんですよ! レシアさんなら大歓迎です! いいですよね? ハル君」

 私は笑顔を膨らませ、一度レシアさんを見てから、今度はテーブルの向こうのハル君の顔を窺いました。

「まあ、そうだねぇ、特に断る理由は見当たらないねぇ」

「やった! じゃあ、レシアさんも、これで仲間ですね!」

 私は、文字通り両手を上げて喜びました。

「仲間? ふふっ、子供っぽいわね」

 と言いつつも、レシアさんも嬉しそうですよ。

「そうなんですよ、まあ、実際にまだ子供なんで、許してあげてください」

 って、えー、レシアさんも、ハル君も私のことを、そんな風に見ていたんですか?

 確かに、お二人より二つ年下ですが……、そこまで子供って訳ではないですよね。

「まあまあ、ルリちゃん、そんな、むくれっ面しないでさぁ」

「そうよ、せっかく仲間になってあげたのだから」

「レシアさんも、そんなクールな顔であおらないでくださいよ。ルリちゃん、想像以上にまともに受けちゃいますんで」

「煽ってなんかないわよ。むしろ、仲間になれて嬉しいくらいよ」

 冷静なレシアさんが、真顔でサラッと言うので、それが冗談なのか本気なのか、いまいち分かりませんね。

「そうかい、じゃあ、仲間も増えたことだし、まずは作戦会議と行きますか?」

 おっ! ハル君、ナイスな提案ですね。

「作戦会議! いいですね! やりましょうよ」

「そっ、そうかい……、半分冗談だったんだけど、乗ってきたねルリちゃん! うーん、まあ、でも、確かに必要かな?」

 えーっ! こっちは冗談でしたか……、ナイスアイデア! と心の中ではしゃいだ自分がちょっと恥ずかしいです。


「そうね、まずは、私が見た精霊モドキと、あなたたちのツマトリソウ、これらに関連性があるのか調べるってのは、どうかしら?」

 あっ! 私よりもレシアさんが乗ってきましたね! しかも、とても論理的ですよ!

 でも、確かに、私もちょっとそこが疑問だったのですよ。いくら、レシアさんの精霊がツマトリソウのお花に似ているからといって、摘み取られたものと同じものだとは思えませんからね。あっ、場所! うーん、どちらも植物園ですか……、そうなると、逆に関連性がないって方が不自然になりますか?

 そんな風に私が思案していると、ハル君の声が聞こえました。

「うん、それは良いアイデアだね。と言うからにはレシアさん。何か心当たりがありそうですねぇ」

 うん? なんの話しでしたっけ? あっ、精霊モドキとツマトリソウでしたね!

「ふふっ、さすがレープリさん! 実は少しばかり心当たりがあるのよ」

 レシアさんが、ニヤリと不適な笑みを浮かべています。

「やはり! それは、頼もしいですね。では、この関連性についての調査は、レシアさんにお願いしても?」

「いいわよ、任せてちょうだい。午後の授業が終わったら、少し図書館で調べてみるわ」

 本当に頼もしいですね。

「じゃあ、僕たちは引き続き、植物園の方を当たってみよう」

 そこで、ハル君と目が合ったので、私はブンブンと二回頷きました。

「そうだ! ツマトリソウ以外にも……、あれ? ルリちゃん、なんだっけ? 一番奥の花は?」

「一番奥ですか? えっと、クサフジですね」

「そうそう、クサフジ。実はコイツも少しずつ摘み取られている可能性がありまして……」

 あっ! そう言えば、昨日、ハル君はそんなことを言っていましたね。

「であれば、このクサフジを見張っていれば、ツマトリソウを摘んでいた犯人がやってくるかもしれません」

 なるほどですね! 花を摘み取る犯人が同一人物であるならば、可能性は高いですね。

「面白いわね。だったら、ついでにクサフジのことも調べておくわ」

 レシアさんは、本当に楽しそうですね。もしかしたら、私やハル君以上に、こういうことが好きなのかもしれませんね。あっ! そう言えば、お兄さんは新聞記者だと言っていた気がします。もしかしたら、そういう影響があるのかもしれませんね。

「お願いします。じゃあ、ルリちゃん。僕は六時くらいなら植物園に行けそうなんで、ハーバリウムの前で、待ち合わせでいいかい?」

 ハル君が、一度レシアさんに頭を下げると、私の方に向き直りました。

「そうですね。私も夕方まで授業なので、それが終わったら行きますよ。それでもハル君よりは先に行けそうなので、お花たちでも見て時間を潰していますね」

「よしっ! じゃあ、決まりだねぇ、今日の作戦は、これで行こう!」

 ハル君が声を上げると、私たちの作戦会議は終了しました。と同時に楽しいお昼休みも終わりを告げました。


 午後からは幻導数理論の授業です。はぁ、実はこの科目苦手なんですよね。なので、とても眠くなりそうです。ええ、何を隠そう前回の授業は、目を開けたまま寝ていたみたいなので嘘ではありません。隣の男子が私を見てビックリしていたので確かだと思います。

 あー、しかし、不意にまた恥ずかしい事を思い出してしまいましたね。なんででしょう?

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